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アストンマーティン・ヴァンテージは「数日で2018年分をほぼ完売」。今後変化するであろうスーパーカー市場の勢力図を考える

2017/11/24

すでに2018年生産の80%が予約済み

アストンマーティンはその新型車「ヴァンテージ」を発表したばかりですが、そのヴァンテージの初年度分が発売後数日ですでに「ほぼ完売」とのこと。
これはアストンマーティンCEO、アンディ・パーマー氏が明かしたもので、「2018年生産分の80%がオーダーで埋まった」と語っています。

アストンマーティンは大きな爆発力を秘めている

ここ最近のアストンマーティンの動きには目をみはるものがあり、One-77の発売に始まり「ラゴンダ」「ヴァルカン」の発売、そして「ラピードE」を中国企業と提携して開発、英国政府から空軍基地を譲り受けて新工場建設、「DBX」の発売準備、レッドブルと組んでヴァルカンの発売、レーシングイメージをコアにした「AMR」ブランドの発足、ミドシップシリーズの開発開始、「DB11」発売、マンション(億ション)建設、潜水艦事業へ進出、ザガートシリーズの発売、ワンオフモデルの受注拡大、日本への設備投資、そしてとどめは「ヴァンテージ」。

アストンマーティンはここ10年ほども「赤字続き」の企業だったものの、最近はようやく「DB11効果で」黒字転換。
どんなに辛い時期であってもけして前に進むことをやめなかった企業姿勢の賜物ではありますが、今後は「ヴァンテージ効果で」さらに力は伸びそう。

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なおアストンマーティンは現在ハイパフォーマンスカー市場だともっとも勢力を拡大しそうなブランド。
現在は「FR」のみを(通常モデルで)ラインアップしますが今後はマクラーレンやフェラーリを狙った「ミッドシップ」の投入があり、しかもこれは「レッドブルも開発に加わる」という強力なインパクトもあって、おそらくは相当なヒットとなる予感。

さらにはフェラーリV12モデルを狙う「ヴァンキッシュ」、クロスオーバーの「DBX」、サルーンの「ラゴンダ」「ラピードE」など、およそすべてのカテゴリに手をのばす計画があり(電気自動車にまで)、ここ5年ほどで恐るべき成長を遂げるのかもしれません。

おそらくはアストンマーティン全般の売却価格や残価も向上しそうだ

ここでついつい気にするのがアストンマーティンの「売却価格」。
アストンマーティンは「一定以上は下がりにくい」ブランドではあるものの、新車で購入するとそこからの値下がりが大きく、「売却に苦労するブランド」でもあります。
ただし現在のDB11人気、そしてヴァンテージの受注状況を見るに、売却価格(残価率)は今後上する可能性も。

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たとえばぼくが最初のランボルギーニである「ガヤルド」を2009年に購入したとき、ランボルギーニはさほど人気がなく、3年後の残価は「50%」。
つまり3年乗ったら半分になる、という認識ですね。

そこからランボルギーニはアヴェンタドールを発売したりウラカンを発売したり、と積極的に活動を続け、そのほか「ヴェネーノ」「セスト・エレメント」「チェンテナリオ」などの限定車や先端技術を盛り込んだ車、「エストーケ」「ウルス」「アステリオン」などの提案性が高いコンセプトカーを発表することでブランドの認知度やイメージ向上を図り、その結果現在ではV10モデル(ウラカン)の残価率は3年で65%、V12(アヴェンタドール)で70%。
それでもフェラーリの「75%」には及びませんが、この流れだとまだ残価率が向上する可能性はありそうです。

同様の流れにおいてアストンマーティンも残価率が向上するのでは、とぼくは考えているのですね(たとえ現在の残価率であろうとも(売値が下がってでも)”欲しい”と思わせるほど新型ヴァンテージは魅力的)。

とにかく「チャレンジ」しないとブランド価値は上がらない

こういった傾向を見るに、他メーカーの躍進著しい中で「なにもしないと」相対的にポジションを失ってゆく一方であり、どんなに苦しくとも革新に取り組まねば未来はない、ということもわかります。
そして「革新」は今の時代はすでに「ハイブリッド」「エレクトリック」ではないとも考えられ、これはマクラーレンがP1後継にて「ハイブリッド不採用」としていることでもわかります(人びとが求めるのはエレクトリック化ではない)。

なお、ロータスも同じように「動き」をこれまでと変えることで(ハイブリッド化したわけではなく、モデルごとの方向性を明確にすることで)大きく利益を伸ばしたと報じられていますね。

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ロータスの利益が大きく伸びる。利益の厚い限定モデル発売が貢献、やはり「限定商法」は有効か

その意味ではちょっと気になるのがフェラーリ。
他メーカーが何年も前から採用している電制ステアリングを最近になり「初採用」したり、「2019年以降に発売するモデルはハイブリッド」と意思表明したり、とややほかのライバルと異なる動きも。

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同じようにレースをバックボーンとするマクラーレンはますますその速さに磨きをかけ、「カーボンモノセル」や「ディヘドラルドア」など強力な武器を持っていて、しかも価格は安め。

アストンマーティンもそのブランドイメージ、仕上げや性能を考慮すると「かなり価格は安い」と考えていて(不当に”安すぎる”と感じるほど)、パフォーマンスはフェラーリに劣るとしてもブランドイメージや価格を考慮すればじゅうぶんに「ライバル」となるとは考えています(現にカリフォルニアTとDB11はけっこう競合する、と聞く)。

現在フェラーリはどんどん車両価格が高価格帯へと移行していますが、ライバルのパフォーマンスを考慮すると「割高」の領域に入りつつあるようで、しかし圧倒的なブランドバリュー、リセールを考えるとまだフェラーリに優位性も。

しかし今後ほかのライバルたちの追い上げ次第ではその優位性が崩れる可能性もあり(そのためかフェラーリの株価は上昇をストップし、ジリジリと下がってきている)、スーパーカー市場、ハイパフォーマンスカー市場もここ数年で大きく勢力図が変わることになりそうです。

今後はどうなる?スーパーカー/ハイパフォーマンスカーの勢力図

なお(2017年の数字はまだ出ていないので)2016年のものですが、ハイパフォーマンスカーブランドの販売台数はこんな感じ。

フェラーリ・・・8200台
ランボルギーニ・・・3400台
マクラーレン・・・3200台
アストンマーティン・・・3700台

ただ、ここからランボルギーニは2年後には「ウルス」を3000台ほど乗せてくると思われます(逆にスーパーカーは希少性を保つために販売を制限すると公表)。
これが失敗すると絶望的なダメージを負うことになりますが、成功すれば次は「エストーケ」など新しいカテゴリへの進出も視野に貼ることになりますね。
そしてランボルギーニの特徴としては「ポルシェやベントレー、アウディと技術を共有できること」で、新モデル投入に対する開発コストが(ほかブランドと平準化出来るので)ライバルに比べてかなり低いであろう(つまり同じ価格で販売しても利益が大きいであろう)こともメリットのひとつ。

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一方でマクラーレンは「純然たるスポーツカーメーカー」を貫く姿勢を見せており、SUVやサルーンの発売は「ない」と思われるので爆発的な成長力はなさそう。
ただしMSOの活用拡大や「超限定モデル」の販売、ワンオフモデルの受注拡大にて、企業としての「利益」は大きく伸びるはずで、その「効率」はおそらく各ブランドの中で飛び抜けて良いと思われます(プラットフォームやドライブトレーンを多数用意しなくていい)。

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アストンマーティンは上述のように「爆発力」があり、伸びそうなのは「DBX」「DB11シリーズ」「新型ヴァンテージ」「新型ヴァンキッシュ」。
AMR、ラピードEは生産が限定されそうなので台数には貢献しなさそうですね。
一方でヴァルキリーのような超限定モデル販売、ザガートシリーズ、ワンオフモデルについては「利益率」が極めて高いと思われ、投資額が大きい反面、収益効率を改善する手段も持ち合わせることに。
中期的には「ミドシップ」シリーズも期待できますね。

反面、「大きく伸びる要素がない」のがフェラーリ。
既存ラインアップのまま販売台数を拡大すると希少性を損なうというジレンマを抱え、限定モデルについても数量を極端に絞ることでその価値を維持しているために「数百台」を超える規模の限定モデル販売は難しいかもしれません。

加えて限定モデル発売の「頻度」を増やすのも同様の理由から難しそうで、フェラーリをこれまで押し上げてきた「ブランドイメージ」が逆になんらかの「キャップ(制限)」になる可能性も。

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そして「エントリーモデル」「SUV」もやはりブランドイメージを損なう可能性があり、おおっぴらには手を出しにくそう(よって発売予定とされるSUV、もといFUVにはどういったエクスキューズをつけるのかは気になる)。
ただしほかブランドと異なるのは「ライセンスビジネスの収入が極めて大きい(グッズやテーマパークなど)」「ワンオフモデル(フォーリ・セリエ)の利益が高い」ということで、この分野において利益を拡大してゆくことになるのかもしれません(販売台数拡大のみが利益拡大の手段ではない)。

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