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万年赤字のアストンマーティンを復活させた男、アンディ・パーマーCEO。日産副社長からの転身に「トップでいることに意味がある」

2018/02/10

| 「トップでいたかった」 |

さて、今回はアストンマーティンのCEO、アンディ・パーマー氏について触れたいと思います。
同氏は日産自動車の副社長を務め、当時「カルロス・ゴーンCEOの右腕」「次期日産CEO最右翼」と呼ばれた人物ですが、2014年にアストンマーティンCEOへと就任。
日産自動車在籍時には(13年間)日本に住んでいたというので、かなりの日本通であるとも考えられます。

自動車業界に入ったのは16歳

アンディ・パーマーCEOが自動車業界に入ったのは16歳で、51歳の時には日産副社長そして高級車部門の統括責任者まで登りつめますが、昔からの夢は「いつかは自動車会社のCEOに」。
そして2014年にアストンマーティンからCEO就任のオファーを受けることになり、「二度とないチャンスにかけ」て移籍を決意した、と言われます。

将来約束された日産での地位を擲ってまで移籍したのは「トップでいたかった」からだといいますが、アストンマーティンというブランドに惹かれたのも事実だと語っており、もともと「自動車会社のCEOを目指していた」だけあって生粋のカーガイだったのでしょうね。

現在自動車業界には多くの名CEOがいるものの、ぼくとしては現在アンディ・パーマー氏が「もっとも優れたCEO」だと考えています。
その理由の一つは赤字続きのアストンマーティンを「コストカット」ではなく「優れた車を作る」ことによって立て直したこと。
たとえばカルロス・ゴーンCEOはコストカット、具体的には車種を減らしたり人を減らすことで利益を伸ばしましたが(首切りゴーンとまで言われた)、アンディ・パーマー氏は日産で学んだ技術を駆使し、「いいクルマを作ること」を実施(カルロス・ゴーン氏の方法を真似しなかったことは注目に値する。カルロス・ゴーン氏はビジネスマン、しかしアンディ・パーマー氏はクルマ人と言えるかも)。

アストンマーティンの弱かった電気系統を強化するために「世界一優秀」と言われた日産の電気系統エンジニアを、品質向上のためにトヨタの品質管理担当者を、そして何より優れたスポーツカーを作るためにフェラーリからナンバー2を獲得し、さらにそれまでは「どれも同じような乗り味だった」アストンマーティンの各モデルに個性を与えるためにロータスからチーフシャシーエンジニアを獲得。
その後2015年には「ヴァンテ―ジGT12」「ヴァルカン」を発売し、とくに「ヴァルカン」はスポーツカー界に強烈なインパクトを与えることに成功したのは記憶に新しいところ。

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どんなに苦しくとも前へ

こうやって「12年に一台しか新型車が出なかった」会社を「1年にいくつも新型車を出すメーカー」へと作り変えていったわけですが、とにかく新型車を出すことで利益を増加させる、というのは最近のロータスにも見られる手法であり、かなり有効な手段だと言えますね。



ただし赤字の会社からそうポンポンと新型車を出すのは並大抵のことではなく、そのために煮え湯を飲まされた(中国製パーツの使用でリコールを出し、痛い目を見た)中国にも頭を下げて使節団を英国まで招待し、日本に対しても購買契約と引き換えに投資をとりつけたり、と資金を獲得するためには「いかなる手段をも厭わない」姿勢が印象的。
メルセデスAMGとのパートナーシップも新しい動きの一つですね。

一時は「そこまでやらないといけないのか」と感じていたものの、その後「ヴァンテージGT8」「ヴァンキッシュザガート」「DB11」「ヴァンテージ」「ヴァルキリー」と立て続けに新型車を発表し、その全てが完売もしくは大ヒット。

さらにはレッドブルとのパートナーシップも大きな進歩をもたらしたとされ、ヴァルキリーの開発を通じて得たノウハウは「他では得がたいもの」であったことも容易に想像でき、おそらくは今後発売される市販車にもフィードバックされることになりそう。

アンディ・パーマーCEOいわく、重要なのは「美しいクルマをつくること(アストンマーティンの企業哲学は”Love of Beauty”)」だとしており、さらに「楽しいクルマをつくること」も重要視。
そのため「エンジンのダウンサイジングは考えていない」としており、あくまでも大排気量エンジンにこだわることも表明。
さらにハイブリッド技術は過渡的に使用するものの「最終目標はEV」とも述べ、EVのコア技術を自社で開発することも公言していますね。

日産では「高級車部門」の責任者であっただけに「高級ビジネス」についてはノウハウがあるようで、タワーマンション建設、なんと個人向け潜水艦事業への進出も報じられており、今後もアストンマーティンの快進撃が期待できるところ。

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なおアンディ・パーマー氏は見た目が他自動車メーカーのCEOのようにスマートではないものの、そのぶん愛嬌のあるルックスを持っており、見るからに親しみやすそうな人物のようにも見えます。
同氏は「イノベーティブな経営者」としても有名で、各方面にてインタビュー記事が掲載中。

「いい製品を作ればそれを理解してくれる人が必ずいる」「利益を出すにはコストカットよりも重要なことがある」といった大切なことを実践して結果を出した稀有なCEOでもあり、「なにか動きを変えないと何も変わらない」「どんなに苦しくとも必ず前へ」という、生きてゆく上で大切なことを教えてくれた人物である、とも考えています。

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