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SUV市場はもはや競争過多で自動車メーカーにとって魅力的ではない?米調査機関「3年前と同じと思わないほうがいい」

2018/04/13

| SUV偏重の市場動向に異変? |

今年開催されたニューヨーク・オートショーは「SUVのオンパレード」で、SUVのために開催されたようなものだった、というのはよく報じられているところ。
今回Newsweekでは「新型モデル投入ラッシュのSUV 供給過剰でマーケットに異変も」という記事を掲載しており、これによると「SUVマーケットで利益が取れなくなる日も近い」としています。

自動車業界の成長速度を超える速度でSUVが投入されている

今回のニューヨーク・モーターショー(オートショー)においてはレクサスUX、マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ、トヨタRAV4、スバル・フォレスター、キャデラックTX4などニューモデル、モデルチェンジを迎えた人気モデルが目白押し。

アメリカの自動車コンサルティング会社「LMC」によると2017年には米国のSUV市場における「普及車」と「プレミアムクラス」の車種について「65種と53種」であったものが、2023年までにはそれぞれ「90車種と90車種」に拡大する予定。

こうなると市場は「過当競争」になるのは当然で、加えてアメリカは昨年はじめて「リーマンショック以降、自動車販売が初の減少」に転じており、自動車市場そのものが縮小する可能性もあって、そうなると考えられるのが「SUV以外の車種の販売がさらに縮小する」ということ、各メーカーともSUVを大量投入してくるので「SUVであれば売れるという時代が終わる」ということ。

すでにセダン市場は目も当てられない状態ではありますが、SUV(クロスオーバー)市場についてはCT4を発表したばかりのキャデラック責任者も「これからSUV市場では勝者と敗者とが明確になる。もちろん我々が目指すのは勝者だ」と述べています。



実際のところ、前出のLMCの調査結果では、2010年以降SUVの販売台数は倍増したものの、自動車市場全体の増加率はわずか2%。
加えて最近の動向を鑑みるに自動車市場そのものが2025年まで毎年減少すると見ており、加えて「リース」が終了したSUVが中古市場に大量に出てくるために新車販売を圧迫する、と予想しています(アメリカではリース、そしてフリート販売の比率が日本に比べて非常に高く、市場動向を左右したり、自動車メーカーの収益を圧迫する要素となりうる)。

なお日産は販売を伸ばすために値引き販売を行ったりリースに有利な条件を出しているとされ、それが将来的に日産の経営を圧迫するのでは、とも言われていますね。

こういった「市場の成長率を超える速度での新型SUV投入」「販売したSUVが中古市場にあふれかえる」ことがSUVにおける新車販売を大きく苦しめるだろうと推測されており、となると自動車メーカー各社はアメリカ市場特有の「インセンティブ」を強化してでも販売を行うことになり、これがまたメーカーの収益を大きく落とすことに。

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なお、これについてアメリカの調査会社でもいくつかの見方があり、ケリー・ブルー・ブック(KBB)は上述のように新車販売が圧迫され「車種が増えれば各社の販売台数が減るのは簡単な引き算だ。すべての車種で販売を伸ばすのは不可能で、どれかが犠牲になる。3年前と同じだと考えないほうがいい」。※現時点でも3年前に比べて1台あたりの利益は0.5%低下

一方でオートフォーキャスト・ソリューションズは「SUV市場は今後細分化され、サイズ別や走行性能で差別化が可能で、まだまだ消費者の要望を満たしていないスペースがあり、まだまだ5-10年は成長の余地がある」とのこと。※”トラック”はまだ可能性があり、ここに注力するメーカーが出てくるかも

自動車メーカーだとリンカーンは「まだまだ差別化できる」、メルセデス・ベンツは「おおよその需要は満たしてしまった」と述べていて、供給側であってもメーカー間で考え方に差があるようですね。

こうなるとメーカーとしても非常に難しい判断が求められるわけですが、「過当競争」になったとしても、唯一カテゴリとして成長を続けるのは「SUV」。
SUVが競争過多だからといってセダンやコンパクトに注力するのはさらに危険であり、「いかに競争が厳しくともSUVに賭けざるを得ない」という実情も。

唯一の例外的な市場は「EV」ですが、多くの自動車メーカーが「EV」夢見るのはレッドオーシャン化したSUV市場から逃げ出したく、ブルーオーシャンであるEV市場であれば利益を取れる可能性が高いと考えているからかもしれません。
ただ、SUV市場とEV市場とに間には大きな差異があり、SUV市場は「多くの人が欲しいと思う」商品市場であるのに対し、EVは「多くの人が欲しいとは思わない」市場。※”オーシャン”の規模が違う

もちろん「その製品を欲しいと思っていなくとも、新たな価値を示すことで”欲しいと思わせる”ことはもちろん可能で、しかしこれは「容易ではない」のも間違いがないところ。

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