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スバリスタの気持ちがよくわかる。賞賛も納得のスバルWRX STIに試乗する

2016/04/07

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非常に興味はあったものの、なかなか試乗する機会のなかったスバルWRX STIに試乗。
試乗車は「WRX STI TypeS」、18インチBBSホイール、ビルシュタイン製ダンパー、大型リアウイングが装着されたグレードです。

通常のWRX STIは392万円、WRX STI TypeSは425万円となっていますが、装備を考えると、またリセールを考えても(高価であったとしても)TypeSを選んだほうが良さそうですね。

エンジンは2リッターツインスクロールターボで308馬力。
スバル得意のシンメトリカルAWD(要は左右対称)を採用しており、トランスミッションは6MTのみ。
迫力のあるブリスターフェンダーのおかげで幅1795ミリとワイドで、しかし全長は4595ミリと比較的短くコンパクトな印象がありますね(全高は1475ミリ)。
重量は1480キロとまず標準的と言えるでしょう。

スバルは非常に真面目な車作りをする会社で基本に忠実でもあり、WRX STIはとくに等長等爆エキマニを装着するなどかなり本気。
標準でフロントにはヘリカル式LSD、リアにはトルセン式LSDを備え、まさに「走り一徹」と言える車です。
なおアクティブトルクベクタリング(内輪にブレーキをかける方式でハルデックスと同じ)も持っており、走りに必要なものは全て揃っていると言えるでしょう(欲をいえば電制デフが欲しいところですが、これはこの価格帯で装着している車はないので高望みかも)。

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外装も今時珍しい大型リアスポイラーを備えており、「いかにも」という雰囲気。
ヘッドライトはLEDですね。
全体的に現代のスバルらしい角ばった、そして大きなパーツ群が特徴的で、ワイルドな印象すら受けます。

ドアを開けて室内に乗り込みますが、意外とサイドシルが低く乗りやすいのには驚き(ベースはセダンなので当然とも言えますが)。
シートはアルカンタラと本革でレッドのアクセントが入ります。
室内はブラックがベースとなり全般的にシックな印象で華やかな演出はなく、そこがまた「本気」を感じるところですね。

一方メーターはレッド文字で280キロまで刻まれるなど他のスバル車とは異なる演出も。
スピードメーターとタコメーターの間には3.5インチの液晶ディスプレイ、ダッシュボード上には4.3インチのマルチインフォーメションディスプレイがあり、ブースト圧や燃費など多彩な表示が可能。
これらディスプレイはフルカラーとなっており、かなり近代的な印象です(ぼくはスバルに対して保守的な内装を持つ、という印象を持っているだけにちょっと驚いた部分)。

ミラー類やシートを合わせますが、ルームミラーから大きなリアウイングが見えるのは他の車ではあまり無い(特に欧州車)特徴と言え、これはけっこう気分が盛り上がるところ。
シートはかなり秀逸で調整範囲が広く、スバルが「ドライビングポジション」をかなり重視していることがわかります。
硬くも柔らかくもなく、体への負担もほぼ感じられない(つまり何も違和感を感じない)、運転に集中できるシートですね。

プッシュ式スターターボタンを押してエンジンをスタートさせますが、意外と音が静かで振動が少なめなのもちょっと驚き(巷の改造スバル車のイメージが強いのか、STI=音が大きいというイメージがあった)。

ゆっくりとクラッチを繋ぎますが、アイドリング程度の回転数でも余裕でつながり、かなり運転しやすいと感じます。
クラッチのストロークは深くはありませんがけっこう重く、慣れるまではどこでミートするのかちょっとわかりにくいので注意深く試乗開始。

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なおMT車の試乗はけっこう緊張するものであり、初めて乗る車だとどのくらいの回転数で、どのあたりで繋がるのかわからず、まず戸惑いが先にくるのですね。
これが一人で乗るのであれば問題は無いのですが、ディーラーの営業さんという、その車を知り尽くした人が隣に乗っているという現状において初めて乗る車のクラッチを繋ぐというのが緊張する理由であります(そう考えると車に対してではなく人に対して緊張していると言える)。

しばらくゆっくりと流しますがけっこう足回りが柔らかいのにもちょっと驚き。
しかしながらロールもなくダンピングもきついわけではなく、欧州車的とも言えない、しかしなんとも素晴らしい感覚ですね。
他の日本車だったら柔らかいだけでロールやピッチングが大きく、逆に硬くて不快なだけの足回りが多いのですが、このWRX STIの足回りは欧州スポーツカーに対しても優位性があるのでは、と思えるほど。

これはおそらくビルシュタインが貢献している部分が多いと思われ、そしてもちろんビルシュタインそのものだけではなく、長い間ビルシュタインを使用し続けてきたスバルのノウハウが生きている部分と言えるでしょう。
この足回りだけでタイプS、いやそもそもWRX STIを選ぶ価値はあるだろう、という感じですね。

シフトフィールについてはけっこう重く、今までBMWやミニ、ポルシェのMT車を乗り継いだ経験からしても「重め」の部類と感じます。
新車だったということもありちょっと入りが悪い(しかもミッションオイルがあまり暖まっていなかったかも)と感じましたが、とくに問題のあるレベルではなく、慣らしが進むとフィーリングも改善されると思われます。

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慣れたところでぐっと踏み込んでみますが、エンジンはNAのようなフィーリングで滑らかに回転数を上げ、車を加速させます。
ターボラグは(少なくともぼくには)感じられず、2リットルから308馬力を絞り出すというところから連想されるような「ドッカン」という感覚もありません(ミニJCWは同様に2リッターツインスクロールターボですが、けっこうドッカン感がある)。
加速時の姿勢変化も最小限で、姿勢的にもエンジンの特性的にもかなり扱いやすいと言えるでしょう。

このあたりモータースポーツ直系の車ということもあり、ヘタな脚色は不要というスバルの自信が感じられ、ここはポルシェにも通じるところ。
あまり自信の無いメーカーほど、足回りを固めてスポーツ性を強調したり、やたら排気音を大きくしたり、異様にステアリングをクイックにするものですが、WRX STIはそういった演出がなく、ひたすら実直に「走る、曲がる、止まる」を追求しているところは非常に好感が持てます。

この車の性能を引き出すにはかなりの腕が必要と思われ、それ以前にポテンシャルを理解するだけでもそれなりの経験が必要かもしれません(ぼくがポテンシャルを引き出せるというわけではない)。
でないと、WRX STIはちょっと乗っただけでは「普通の車」と思われがちで、巷の「スポーティーカー」のほうがよほどスポーツしているように感じられるかもしれない、と思うのですね。
逆に言えばWRX STIに乗ってそのポテンシャルを理解できなければその魅力にも気づかないわけで、その域に達した人たちが乗るのがWRX STIとも言えます。

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なおスバルはコアなファンが多く、彼らは「スバリスタ」とも呼ばれ、スバルもそれを認識しているためか「I am a SUBARISTA」と文字の入ったタオルなどを発売していますが、スバルのファンにとっては「にわかにはわかるまい」という自尊心があるのかもしれません(それがスバルへのロイヤルティにつながると思われる)。
スバル自身が「シェア1%で良い」と考えて割り切った車を作っており、一般受けは狙っていないという特殊なポジションにあることもこういった車を作ることができる理由なのかもですね。

ハンドリングやブレーキも非常に優れており、曲がりすぎたり効きすぎたりすることはなく、逆に曲がらないことも効かないこともありません。
まさに「ニュートラル」ですが4WDの癖を感じさせることなく、矢のようにまっすぐ走ったり、引っ張られるように旋回したりと4WDの良いところだけを引き出しているようにも思います。
ただし何度も繰り返すようにそこに派手さはなく、そしてそこがWRX STIの素晴らしいところなのでしょうね。

全般的に見て非常に性能が高い車であり、この価格でこの性能というのはちょっと驚き。
スバルは昔からコストパフォーマンスの高い車を作っており、0-100キロ加速ランキングにおいては日本車勢の中で圧倒的とも言えるほど上位にランクされておいて、「あなどれない」と改めて感じた次第。

スバルはなかなか「やる」メーカーだとは思っていましたが、今回のWRX STIの試乗を通じ、その真髄に触れることができたような気がします。

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なおオプションもけっこう多く、そのオプション群がけっこう「本気」なのもスバリスタの自尊心をくすぐるところかもしれません。
エキゾーストフィニッシャー、フロントリップ、サイドスポイラー、リアサイドスポイラー、リアアンダースポイラー(これはかなり格好良い)、タワーバーなどがラインアップされ、それぞれが地味ながらもかなりな迫力を持っています。

良いところとは逆に、ぼく的に「こうだったらいいな」と思ったのはパーキングブレーキ。
電動式ではないということですね。
そしてシートに関しては要交換と考えています。
ぼくの体重では軽すぎてクラッチとシフトの操作をする際に体が動いてしまうためですが、体を固定するためにもフルバケットシートが欲しいところ(補足すると、純正シートは非常に良くできており調整範囲も広く、もしマニュアルによるシフトチェンジを要しないATトランスミッションであれば交換は全く不要)。

排気音が静かなのは美点でもありますが、ここまでアグレッシブな外観を持っており大型リアウイングを装着しているとなると、やはりマフラーももっと大きな音が出るものが欲しくなるのが人情。
とくに最近はBMWやAMGが異常なレベルのエキゾーストノートを発しているため、ちょっとWRX STIの排気音が控えめには聞こえます(上述の通りスバルは”実力があれば演出不要”と考えているフシがあり、この排気音の静かさはスバルの自身の裏付けとは思うのですが)。

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これは「購入検討対象に入る」と考えたために見積もりを取得していますが、グレードはWRX STI TypeS。
ダイヤトーンのナビ、アドバンスドセイフティパッケージ、フロアマットなど最低限と思える装備を含め、エアロパーツなどのオプションは含めずに総額で4,925,973円。
なお現在のWRS STIは「タイプB」ですが、6月生産あたりから「タイプC」に切り替わる模様。
室内における天井の貼り材、リアワイパーの仕様が変更されるようですね。

4WDや車体サイズからするとゴルフR(539万、280馬力)、アウディTT(636万、230馬力)、ミニJCW(415万、231馬力)、ルノー・メガーヌRS(396万、265馬力)あたりがライバルになるかもしれませんが、コストパフォーマンスからするとやはりスバルWRX STIが抜きん出ていると考えて良さそうです(ぼく的にはルノー・メガーヌRSがもっとも有力かと考える)。

試乗記について
ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、テスラ、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。

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