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車を運転してこれほどの衝撃を受けたのは初めてだ。ロールスロイス・ドーンに試乗する

2016/05/02

【ロールスロイス・ドーンってどんな車?】

価格は驚愕の3740万円、V12ツインターボ(570馬力)。
全長は5285ミリ、全幅1947ミリ、全高1502ミリ、とぼくが試乗した中ではもっとも大きな車です。
それでもロールスロイスの中では小さな部類の車で、ファントムの5840ミリ、ゴーストの5400ミリに比べると「コンパクト」とも言えますね。

ロールスロイスのラインアップ中ではスポーティーなレイスのオープン版とも言えますが、実際のところはドーンの80%が新設計とのことなので、レイスのバリエーションというよりはロールスロイスにおける「独立した一つの車種」と言って良いでしょうね。

【ドーンに乗り込んでみる】

さて早速試乗ですが、車の横に立ってみると大きいのなんの。
ただしソフトトップを開けているとルーフがない分低く見え、レイスやゴーストに比べると体積は小さく見えます。

ドアは通常の車と反対に開く「コーチドア」で、ドアを開くときには注意しないと膝をドアの端で打ちそうになりますが(この方向にドアが開くのに慣れていない)、なんとか乗り込んでシートに身を沈めます。
このシートの出来が素晴らしく、今まで座ったどんな車、いやどんな高級ソファよりも柔らかく快適な座り心地。
柔らかいだけではなくしっかりと沈み込んで体をサポートするので不安定な印象はなく、とにかくこのシートの出来は秀逸だと感じますが、これは以前に乗ったペニンシュラホテル香港の特注ファントムよりも快適な座り心地ですね。
カーペットはロールスロイスらしく毛足の深いもので、思わず靴を脱いで裸足で乗りたくなるほど。

なおドアを閉めるのは手動でも可能ですが、Aピラー付け根あたりにある「DOOR」ボタンを押すことでも閉めることが可能。

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【内装の印象】

内装は陳腐な表現ですが「豪華」の一言。
室内が広いせいもありますが一つ一つのパーツが小振りに感じられ(多分実際に小さいと思う)、イギリスらしい「円と線」を用いたシックなデザイン。
メーターは円、ダッシュボードは直線という感じですが、これはエアコン吹き出し口の風量調節レバー、パワーウインドウのスイッチなどいたるところにこの組み合わせが見られます。

ロールスロイスは今やBMWグループの一員ですが、BMWとの共通パーツは見渡したところ見つからず、せいぜいセンターのBMW iDriveをロールスロイス風にカスタムしたディスプレイ程度。

ウッドパーツも多用されますが、このパーツの面積も他の高級車とは比較にならないほど多く、上質な印象を演出するのに役立っているようですね。

ステアリングホイールは細く、ステアリングコラムから生えたシフトレバー、ウインカーレバーもスッキリと細く、こちらもまさに「線と円」。
最近の車に見られるエルゴノミックデザインではなく、クラシカルでシンプルな造形が新鮮です。

メーターは高級腕時計の文字盤のような作りで針の形状も独特。
ロールスロイスは伝統的に回転計を持ちませんが、代わりに「パワーリザーブ」メーターを装備しており、これは「逆パワーメーター」とも言えるもので、踏んでいない時は「パワーリザーブ」が100%、踏んで行くとこの数字が減る仕組み(あとどれだけ加速に割けるパワーがあるかを示す)。

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【試乗してみた印象】

エンジンを始動させますが、当然のごとくほぼ無音状態でエンジンが始動。
振動も皆無と言ってよく、正直EV波の静かさですね。
パワーウインドウを上下させる際の音、その他パーツの可動する音もほぼ無音で、何もかもがスムーズ。

コラムシフトをDレンジに入れて車をスタートさせますが、重さ(重量2560キロ)を感じさせない滑らかさでスルスルと加速します。
それもそのはずで、ドーンはV12ツインターボエンジンを搭載し0-100キロ加速は何と5秒以下というスポーツカー顔負けのパフォーマンスを持っているわけですね。

しばらく走ってみて感じるのは「やたら静か」ということ。
エンジン音が静かなのは当然ですが、ロードノイズなど外部の音が入ってこないのはかなり衝撃的。
EVもエンジン音がありませんが、EVは外部の音が普通車並みには入ってくるので走行中は実のところさほど静かではなく、しかしドーンは外部から遮断されていると言えるほどの静けさを持っており、そのためドーンは「EVよりもずっと静か」と言えます。

これはオープンにして走っていても同じことで、走っていても「風の音しかしない」ほどの静粛性を持っており、今まで乗っていた車がいかに様々なノイズを発生させ、またノイズを拾っていたかということに気づかされ、また驚かされますね。

街中では意外とよく車が曲がることにも驚かされ、転回においてもその大きさからは想像もできないほどの小さな回転半径で曲がります。
そして高速道路に乗るとその足回りの柔らかさはより一層快適性を増して感じられ、高速でのコーナリングについても適度なロールをしながらも全く不安はなく、これもまた衝撃的。
通常は足回りの柔らかい車だとボヨンボヨンするだけでロールやピッチが大きく、カーブでは逆に不安を助長するものですが、ドーンに関しては柔らかいのに全く不安がないという異次元の走りを実現しているわけです。
カーブに関しても重量を全く感じさせない軽さで曲がって行き、「いったいこの車はどうなっているんだ」と感じざるをえないのが現実ですね。

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【総括】

今まで乗った車の中では一番の衝撃を受けたことはまちがいなく、方向性は違いますがアルファロメオ4C、ジャガーFタイプで受けた衝撃を軽く凌駕すると言っても過言ではありません。

乗る前では外観、乗るときにはドアの開き方、乗ってからはその素材や造形の素晴らしさ、加えてウインドウなどパーツの静かな動き、走り出してからはその軽さ、滑らかさ、静かさ。
これらは「筆舌尽くしがたい」というのが正直なところで、とてもぼくの語彙では表せるものではなく、まさに並み居る高級車とは「ケタ違い」。

何もかもが衝撃的で、こういった車を実際に作れるということも大きな驚きですが、これを作ったのがBMWというのがさらに大きな驚きでもあります(所詮BMW7シリーズの延長と考えていた)。

これまでにもいわゆる高級車、具体的にはマイバッハやベントレー、BMWでは7シリーズに乗りましたが、それらとは次元の異なる車であり、同じ「車」という同じ範疇で語ることすら憚られますね。

おそらくこの車を手に入れて乗ることで間違いなく人生が変わるだろうという予感を感じさせるに十分で、今まではロールスロイスなど「一生縁のない車」と考えていましたが、頑張って手に入れる価値はあるかもしれない、とまで思わせる車です。

試乗記について
ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、テスラ、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。

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