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【試乗:プジョー3008】初回限定モデルは3日で完売も納得。クールすぎる新世代SUV

2017/04/02

プジョー3008に試乗(3008GTライン・デビューエディション、ガソリン1.6リッターターボ)。
日本では2017年2月に発表されたもので、ラインアップは1.6リッターガソリンターボと2リッターディーゼルターボのラインアップ(現時点ではガソリンのみの発売で、ディーゼルは6-7月くらいに登場、とのこと)。

まず外観のチェックからですが、エクステリアは「斬新」の一言で、とくにテールランプのデザインは秀逸。
プジョーは昔からテールランプにはこだわるメーカーで、LEDもかなり早い時期から取り入れていましたね。
先代の3008から比べると「一気に若返って筋肉質に」なった印象があり、年齢で言うと40代なかばから20代なかばにまで若くなった、という印象があります。

最低地上高が高いことは3008の美点であり、これによって「4つのタイヤで踏ん張っている」印象があるのが良いですね。
SUVなのに最低地上高が低いと見た目のバランスが悪く、「ボッテリした」印象になるのですが、3008のスタイリッシュさについてはプジョー自身が「道路での佇まいで他を抜きんでる必要があり、大口径のホイールや地上高、ワイドなボディ、それは日常を抜け出すための招待状なのです」と語るだけはある、と思います。

なお見た目やプジョーでの分類上は「SUV」ですが、駆動方式は「FFのみ」。
ちょっとがっかりしましたが、プジョーのサイトを見てみると、FFでも高い走破性を実現できるよう「アドバンスト・グリップ・コントロール」を搭載している、とのこと。※GTラインのみ
これは「ノーマル/スノー/マッド/サンド/OFF」のモードを備え、「4WDでなくとも高い走破性を実現させる」ように設計されたシステムで、言うなれば「仮想4WD」のようなものと言えるかもしれません(物理的トラクションはかかりませんが)。
なおオフローダーでおなじみの「ヒル・ディセント・コントロール」も装備しており、下りでの走行が圧倒的に楽になっています。

おそらくは重量増加、コスト増加、そして車両本体価格が高くなることを嫌い、そしてプジョーユーザーの性質を考えて「日常生活の範囲での悪路や積雪/凍結路で安全に走れればそれでOK」と考えての判断だと思われますが、ある意味「割り切った」面白い判断ですね。
かつ悪路走破性については「4WDでないと」という先入観があるものの、最近のトラクションコントロールは「昔の4WD」以上に優れた働きをするのかも、と考えたりします。

そういったこともあってか価格は比較的抑えられ、3008 Allureで 3,540,000円、3008 Allure LED Packageで3,690,000円。
プジョーで369万円というと「なんか高い」イメージがありますが、装備を見ると逆に「激安」とも言える内容です。

たとえばエクステリアはヘッドライト、テールランプなどもLED。
ボディサイズは4450×1840×1630mmとけっこう大きく、先代比で+85mm/+6mm/-5mmと長く広く、しかし低くスポーティーに。

加えて3008最大の特徴である「インテリア」では、ランボルギーニ・ウラカンでおなじみのフルデジタル(バーチャルコクピット)メーター、「i-Cockpit」を装備。
ダッシュボードには8インチタッチスクリーンを備え、全体的なデザインは金属調の加飾、直線的なデザインを採用したこともあり「クール&スタイリッシュ」。
内装についてもプジョーは「現存するSUVについて、インテリアデザインに至っては、エクステリアデザインに見合うものが用意されていることはまずない」としており、3008ではそれを覆すためにかなり力を入れたことがわかります。

安全装備が充実していることも3008の特徴で、ざっと並べてみても「フロント&バックソーナー」「ワイドバックアイカメラ」「アクティブセーフティブレーキ」「レーンキープアシスト」「アクティブブラインドスポットモニターシステム」「スピードリミットインフォメーション」「ドライバーアテンションアラート」「インテリジェントハイビーム」「アクティブクルーズコントロール(ブレーキサポート付)」など、およそ考えうる限りの先端装備が与えられている、と考えて良いでしょう。
カメラについてもバックカメラはもちろん、360度アラウンドビューモニタ、左サイドのみをルームミラー上に映し出す機能などが内蔵され、実用性の高い装備が充実しています。

エンジンは1.6リッターターボ(165馬力)、トランスミッションは6AT。
車体重量は1470キロ、と先代から100キロほど軽量化されており、ここも大きく進歩したところですね。
走行性能についてプジョーは「満足のいくドライビングエクスペリエンスが得られるSUVというのはほとんどない。その多くはロードハンドリング性能に欠けているものがある。背が高く、大きなホイールを携えたクルマはどうしても使いにくい」としており、しかし3008では「新しい体験をもたらすことができる」と述べていて、これは非常に期待のかかるところ。

プジョーの指摘する通り、現在のSUVブームに便乗するために多くのメーカーが「車高を上げただけ」のSUVを連発していて、これによって操縦安定性に不満を抱えるSUVは多く、これがぼく自身「なかなかSUV購入に踏み切れない」理由の一つでもあります。

そういった期待と不安を持ちながら車に乗り込みますが、シートのサイドサポートが結構張り出しており、これは「スポーツカー並み」なのにはちょっとびっくり。
ステアリングも非常に小さく(上下がフラット)、レーシングカーのようなイメージがありますね。
ステアリングに関しては「見た目のスポーティーさ」の演出だけではなく、上部を水平にカットするところでメーターを見やすくする(ステアリングホイール上部とメーターが視界の中で被らない)ことを考えており、他のパーツ含めて独特のデザインは「見た目の奇抜さを狙ったのではなく、機能を追求した結果」であることもわかります。

金属調の加飾やスイッチ類のデザインなども外観同様に斬新で、雰囲気としては「最先端」の部類じゃないかと思われます。パドルやシフトレバーの形状一つとっても従来の車や一般的な車、生活臭を連想させるものはなく、高級感がありながらもスポーティー、そして独自性の高いデザイン。

エンジンのスタートはセンターコンソール上にあるスイッチを押して行いますが、非常に静粛性が高く、室内からだとエンジンの始動がほとんど気づかないほど。
シフトレバーの形状は非常に独特で、右にあるボタンを押しながら手前に引いてDレンジへ。
パーキングブレーキは電気式となり、手動での解除、アクセルペダルを踏んでの解除どちらでもオーケー。

さて車をスタートさせますが、このプジョーディーラーは「ディーラーをでてからすぐ上り坂」になっており、そのためにいつも出だしの印象があまり良くないのですね。
平地に比べてアクセルを強く踏み込む必要がありますし、そうなると「それでも進まない」「エンジン音がうるさい」という印象を受けることに。
通常乗っている車であればその分を差し引いて考えることもできますが、初めて乗る車だとそうもゆかず、従って車に対して不当にマイナスイメージを持つことがある、ということです。

なお、この近くのシトロエンディーラーは逆に「ディーラーを出てすぐ下り坂」なので下り坂の勢いを借りて「シトロエン車はよく走る」という印象を持つことになり、ここは意外とディーラーのロケーションも重要だと感じる部分です。

ただし実際に車をスタートさせると、3008はそういった不利な条件でもしっかり加速し、かなりトルクの太いフレキシブルなエンジンであることがわかり一安心。

ステアリングは非常に軽く、サイズが小さいので回しやすく街中での取り回しは非常に楽。
あまりに斬新に思えたインターフェースも走り出すとすぐに慣れ、ずっと乗っている自分の車のように扱えるのも美点だと思います。
視界に関してもかなり優れる車だと言え、運転に際し的になる部分は全く無し。

逆にウインカーの音(木魚を電子的に再現したような)や12.3インチサイズのバーチャルメーターの表示は非常に楽しく(4種類ある)、アクセル、ステアリング、ブレーキ各操作に合わせて機敏に反応するセッティングと相まって「運転していて楽しい」車と断言して良いでしょう。

ちょっと意外だったのは「足回りの硬さ」で、プジョーの「猫足」から想像していたよりも初期のアタリ、ダンピングともに硬め。
ただし不快なレベルではなく、むしろ頼もしさを感じさせる部分でもあり、これはマイナスにはならない、と思います(プジョーもこういった車高の高い車を作るのにかなり苦労した模様)。

試乗してみた総合的な印象としては、SUVと言うよりも「背の高いスポーツカー」。
足回りしかり、インテリアの雰囲気(特にシートはスポーツカーと遜色ない)しかり、スタイリッシュなデザインしかり。
これはジャガーF-PCEについて「オフローダーではなく背の高いF-TYPEだ」と感じたのと同じような印象です。

ちょっと残念なのは、「GTライン」が限定モデルでしか選べないこと(しかもその限定モデルは完売している)。
このGTラインにはドライブモードのセレクト、内装イルミネーション、アルミペダルなどが装備されているのですが、それらはオプションであっても通常グレードでは選択不可(ペダルくらいであればパーツとして取り寄せはできそうですが)。
こういったところもこの車の魅力の一つと言えるだけに、今後のオプション設定や(日本での)グレード展開についても再考があると嬉しいところ。

なおオプションというと、やはり本国ではこの車を「実用車」として捉えているためか、マッドガードやトランクネット、クーラーボックス、プロテクター類といった「実用的なオプションしか」揃っていないのも面白いところ(基本的になんでもついている車で、それほどオプションが必要のない状態ではあるのですが)。
つまり「見た目」を向上させるためのオプションがない、ということですね。

フランス人にとって3008は「実用車」かもしれませんが、日本だとやはり「おフランスの車」であり、趣味性の高い車、かつそういった部分を求める人が購入する車だと思われ、ここも今後の拡充を期待したいと思います(実用性を求めるのであれば割安な日本車を選ぶと思われ、わざわざ3008は選ばない)。

昔の話ですが、ルノーと日産が合併し、ルノーを日産ディーラーでも販売することになった際、ルノー側は本国のカタログを写真やコンテンツそのままに日本語に訳して制作しようとし、日産側がその内容を確認すると「タンスが入る」「コンテナが積める」と言った実用性ばかりをアピールしており、それを見た日産側は「いやいや日本人がフランス車に求めるのはモノが詰めるかどうかではなく、豊かなイメージを持つ生活を送れるかどうかであって、イメージ訴求の写真を使わなくてはならない」と言う話に。
そこで「助手席にフランスパン」「カフェの前で撮影」という感じのおしゃれな写真に切り替わった、というのはモノの本で読んだことがあります。

ただしプジョーの日本における販売台数は「日本撤退」を決めた時のフォードと五十歩百歩なので、オプション類の拡充はちょっと期待薄かもしれませんね。
それでも「アフターマーケット」でのカスタムが盛り上がるかどうかはブランドとしては重要で、この辺りアクセサリーを豊富に揃えることで「自分仕様に出来る」ミニが長く愛される理由の一つかもしれないとは考えています(カスタマイズできるかどうかは重要)。

ちなみに3008は本国発表後、比較的早い段階に日本へ導入されていますが、すでに初回限定モデル「デビューエディション」は完売してしまい、次に3008が日本へ入ってくるのは6月くらい、とのこと。
本国含む欧州でも人気が高く、納車待ちが発生しているようですね。

考えうるライバルは下記の通り。
個性派SUVというところだとミニ・クロスオーバー、スタイリッシュで先進的なSUVとなるとVWティグアンあたりが直接の競合となりそうです。

ミニ・クロスオーバー(クーパーD):386万円
レクサスNX 200t :428万円
トヨタ・ハリアー2.0 プレミアム:313万円
マツダCX-5 2.2 XD プロアクティブ ディーゼルターボ:300万円
メルセデス・ベンツGLA180:358万円
BMW X1 sドライブ 18i:405万円
アウディQ3 1.4 TFSI:369万円
VWティグアン TSI コンフォートライン:360万円

 

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