ロータス・エスプリはいままで軽視されすぎた
Bloombergにて、「これから値上がりするのはロータス・エスプリ」とのこと。
実際にその価格は高騰を続けており、1979年式のロータス・エスプリ(シリーズ2)の平均価格は、2018年では17,800ドルへと上昇し、3年前の17,000ドル、5年前の12,700ドルに比べ、継続して値上がりしているようですね。
ただ、17,800ドルといっても「200万円弱」ですし、空冷世代のポルシェ911やクラシックフェラーリ、ジャガーに比較すると「全然」なレベルではあるものの、このあたりの年式のクルマで「値を上げている」ものは珍しく、条件さえ揃えば「一気にブレイク」するのかもしれません。
ロータス・エスプリは「ギリギリまで」簡素化されたクルマ
Bloombergによると、かつてロータス・エスプリは非常に注目度の高い車であり、映画でも「プリティ・ウーマン(あの冒頭のシーンはよく覚えている)」「氷の微笑」、そして「007 私を愛したスパイ」では潜水艦にまで変形するボンドカーとして登場。
ただ、そのエスプリもスクリーンに登場する機会がめっきり減ったといい、しかし専門家によると「中古市場で、次に化ける可能性が高いのはロータス・エスプリだ」。※007に登場したエスプリは、テスラCEO、イーロン・マスク氏が購入している
ただ、エスプリは問題、しかもシリアスな問題が多く、とくに「そもそもの構造」と「配線の引き回し」に欠点があり、メンテナンスにかなりの手間がかかる、ともされています。
RMサザビーズにてクルマのオークション出品に携わってきたジェイク・オーバック氏によると(現ラリー・ロードのマネージャー)、「エンジンを下ろすと、サスペンションが使い物にならなくなる」「ピンを一本でも抜いたら車全体が機能しなくなる」とコメント。
具体的にはどういったことかは不明ではあるものの、ロータスは昔から極端な軽量化を追求しており、「一つのパーツで複数の役割を兼ねる」ことでパーツ点数を減らしている、と言われます。
よって、「その部分だけに関係する」と思ったパーツを外したら、実は他のところの機能にも影響した、ということなのかもしれません。
なお、この「一つのパーツで複数の機能」については、フェラーリが「ポルトフィーノ」の設計時に参考にしたと言われ、実際にこれで「部品点数が40%減った」とも語られています。
そして同氏は「エスプリは、これ以上やったら死んでしまうという直前までシンプルにし、そのうえ軽量化されたクルマ」とも語り、つまりは「ギリギリのバランスの上で成り立っている」ということなのかもしれませんね。
ロータス・エスプリの維持費はさほど高くはない
ブルームバーグではロータス・エスプリオーナーの言として、「”クルマのコストに対する、人々が振り向く度”でいえば、エスプリの右に出るクルマはないだろうね」と言うコメントも紹介。
このオーナーは2003年モデルを新車で購入し、現在までずっと乗っているチェース・ヴァン・ダー・ロール氏ですが、メンテナンスのコストについては「年間1600ドルくらい」で、フェラーリやランボルギーニに比べるとずいぶん安いとも語っていますが、これはロータス・エスプリがもともと「流用パーツが多い」ことに起因しているのかも(たとえば、初期の頃のエスプリは、トヨタ・ハチロクレビンのテールランプを流用している)。
ボクもロータス・エスプリを購入しようと考えたことがある
なお、ぼくは過去に二度ほどロータス・エスプリの購入を考えたことがあり、その際には実際にオーナーさんや、エスプリに強いショップに相談しているものの、その際の反応はこういったもので、今に至るまでエスプリを購入できずにいるのもまた事実(たぶん、この先も購入することはなさそう)。
「ロータス・エスプリを購入しようと考えているんですが、トラブルはどうなんでしょうね」
『トラブルを覚悟できないなら、購入を考えるべきではない』
「ロータス・エスプリを購入しようと考えているんですが」
『修理に時間とお金をつぎ込めるならいいが、そうでなければ維持は無理だ』
「ロータス・エスプリの購入を・・・」
『悪いことは言わない、やめといたほうがいい』
「ロータス・エスプ」
『やめとけ』
ロータス・エスプリはこんなクルマ
ロータス・エスプリは、ロータスがそれまでの軽量ライトウエイト路線から「スーパースポーツ」カテゴリへと進出しようと試みたモデルで、1976年に登場。
デザインはジョルジエット・ジウジアーロ、ボディはFRP製、バックボーンフレームにエンジンをミッドマウントというレイアウト。
なお初期モデルのエンジンは2リッター4気筒、160馬力。
その後1978年には「S2」へと進化し、1981年には「エスプリ・ターボ」登場。
エンジンは4気筒のまま2.2リッター+ターボ化によって210馬力へ。
その後ノンターボの「S3」、1987年になるとHC、HCターボ、HCPIが登場しています。
これにあわせてボディデザインがいわゆる「ニューシェイプ」と呼ばれるものへと変更され、近代的なルックスにアップデートされていますね。
その後もさらに改良を続けて1990年に「ターボSE(265馬力)」、1992年に「スポーツ300(302馬力)」、1993年に「S4」、1996年には待望の「V8」が登場。
エスプリはそのスーパーカー的ルックスに比較してエンジンが「4気筒」ということについて抵抗のある人が(当時)多く、優れたハンドリングを持つにも関わらずフェラーリやランボルギーニ、ポルシェに「一歩譲る」評価となっていたのも事実です。
ただ、この「V8」登場によって名実ともに「スーパースポーツ」の仲間入りを果たした、とも言えますね。
ちなみにボディサイズはこの「エスプリV8」で 全長4369ミリ、全幅1883ミリ、全高1150ミリ。
ランボルギーニ・ウラカンよりもちょっとずつ小さい数字です。
そしてロータス・エスプリはその後2004年まで、なんと28年間もモデルチェンジせずに製造されるという長寿モデルとなっています。
なお、ロータスはもともとコーリン・チャップマンが既存車の改造から始またメーカーで、そのため流用パーツをうまく活用することでも知られます。
初期のエスプリについても、サスペンションやブレーキはオペル・アスコナ、トランスミッションはシトロエンSM用といった感じで流用パーツ多数。
一時はトヨタとも提携関係にあったため、1990年代には、上述のようにトヨタ・ハチロク(AE86)のテールランプを流用していたことでも有名ですね。
VIA:Bloomberg