| トヨタはFCVをもって「世界を変えることができる」と信じている |
レクサスLSのフューエルセルつまり燃料電池車と思われるプロトタイプが目撃に。
なお、レクサスはLSの発売に先駆けてコンセプトカー「LF-FC」を発表しており、これは「FC」の名でわかるとおり、燃料電池をパワートレインに採用しています。※「LF」は「レクサス・フューチャー」
なお、トヨタは「MIRAI(ミライ)」にてFCVへと参入していますが、LS-FC(の市販モデル)はこれに続く第二弾という位置づけであり、今回「LS」のひとつのグレードとして市販される、ということなのかもしれません。
グリルやヘッドライトで「未来」をアピール?
今回目撃された「LSのフューエルセル」バージョンについては、ボディ形状こそLSとほぼおなじに見えるものの、ディティールは大きく変更されるようで、グリルやヘッドライト/テールランプは厳重にカモフラージュ。
「プリウスとプリウスPHV」とまでは行かないまでも、パワートレーンの違いを見た目でアピールすることになりそうですね。
FCVとは一体何?
そこで「FCV」ですが、これは現在トヨタとBMWが主に進めているもので、しかし多くのメーカーは興味を示さないという特殊なカテゴリのクルマ。
なぜ多くのメーカーがここに参入しないのかというと、燃料に「水素」を採用しており、しかしこの水素は「水素ステーション」にゆかねば手に入らず、正直”消費者のメリットにならないため”。
水素ステーションの国内所在地はこちらにありますが、なんと近畿だと稼働中の水素ステーションは11箇所しか無い、という状況。
充電スタンドすら足りていないという状況において、水素ステーションは輪をかけて少なく、水素をチャージするためにわざわざ「不要な距離を走らねばならない」「そのための走行距離の残りを計算しておかなければならない」という、消費者にとっては時間も手間もかかる割にメリットが少ない乗り物で、そういったクルマを作ることに魅力を感じないメーカーが多いことにも頷けますね。
ちなみに 北海道、東北だとわずか一箇所しか水素ステーションがなく、水素を入れるために何キロ走らなくてはならないのかということを考えると、いかに不便で面倒であるかがわかると思います。※自宅と水素ステーションとの距離が100キロあると、それだけで往復200キロを無駄に走ることになる
なお、消費者が「電気自動車を買わない理由」の多くは「充電に不安があるから」だとしていますが、こういった状況だとFCVが普及するのは難しく、となると車両価格が非常に高くなり、つまるところ「やっぱり売れない」ということになるのは明らかですね。
もしかすると官公庁がFCVを導入する可能性もありますが、「クリーンエナジーをアピールするため」にテスラ・モデルXを導入した千葉県市川市に批判が殺到していることを考えると、正直「官公庁での導入」も期待できなさそう。
ちなみに「MIRAI」は車両価格なんと7,274,880円で、CEV補助金を考慮しても「相当に高いクルマ」です。
そして、環境のために、自らのお金や時間、手間を費やそうという人でなくては買えないクルマでもありますね。
MIRAIは、3分ほどかけて充填した水素を使用し、そこで発電した「電気」で走行しますが、一回の充填あたり走行可能距離は約650キロ。
これも真夏や真冬の渋滞にハマると走行距離が一気に短くなることが想定でき、正気なところ「実用には耐えられない」乗り物なのかもしれません。
なぜトヨタは燃料電池車を開発するのか
そこで不思議なのが、なぜトヨタが燃料電池車を開発するのか。
上述の通り、「高く、不便」でしかないクルマに力を入れる理由が理解できず、そんな時間とお金があれば電気自動車を開発したほうがいいんじゃないかと考えています。
ただ、トヨタ自身は燃料電池を新しい付加価値として捉え、これを積んだ「高級車」を作れば、これまでも「LS」」や「ハイブリッド」で高級車のあり方を変えてきたように、他メーカーのクルマとは異なる、新しい価値観を持ったクルマを作ることができる、と考えているのだと報じられています(だからこそ、コンパクトカーではなく”レクサスLS”を選んだのだと思われる)。
つまり、他メーカーが「エレクトリックパワートレーンを搭載した高級車」を今後どんどん出してくるであろうことを想定し、それらとの競争に巻き込まれないよう、独自のポジションを確立し、「高くても売れる」クルマの開発を行っているということですね。
考え方としては「電気自動車よりも先」に行っていると言えなくもないですが、インフラが追いつかないことには(FCVの)普及は難しのかもしれません(先日、水素ステーションも爆発したりという事故もあり、水素自体のイメージも良くない)。
そして、FCVにできることでEVにできないことはほとんどなく、逆にEVにできてFCVにできないことは山のようにある、とも考えています。
VIA:Motor1