| 911GT3の歴史は果てしないパフォーマンスアップ追求の歴史だった |
ポルシェが最初の「911 GT3」を発売して20周年。
たった20年なのかという思いと、もう20年なのかという思いとが交錯していますが、「最初の911 GT3」は1999年のフランクフルト・モーターショーにて発表された996世代の911GT3。
その後997世代、991世代と合計3世代に渡って911GT3はリリースされ、もちろん現行992世代でも異次元のパフォーマンスとともに新型911GT3が登場することになりそう(プロトタイプも頻繁に目撃されている)。
996世代のポルシェ911GT3はこんなクルマ
初代911GT3(996)は355馬力の3.6リッター・フラットシックス(レブリミットは7,800回転)を積みますが、これはほかの(同世代の)911に積まれる水冷専用設計エンジンではなく、ハンス・メツガー氏(レース用ポルシェのエンジンを設計し、同氏なくしてはポルシェの栄光はあり得なかった)の設計となる空冷ベースの「メツガー・エンジン」を搭載。
さらにトランスミッションは993世代のGT2から移植されるという、「(ノーマルモデルからの変更が)見た目よりも内部のほうが大きい」GT3でもあります(この頃のGT3は、見た目がノーマルモデルとそれほど大きく変わらない)。
そのほか車高調整式サスペンション、軽量化など「レースレディな」ハードコアモデル。
ワルター・ロール氏のドライブにて「はじめてニュルブルクリンクを8分以下で走った」市販車としても知られます。
2003年にはフェイスリフトを受けた996の第2世代をベースにした911GT3が登場し、出力は375馬力へ。
エンジンにはバリオカムが搭載され、カーボンセラミックブレーキがポルシェの市販車として初めて設定されています。
ナナサンカレラをイメージした、ブルーもしくはレッドのストライプが採用された上位モデル「911GT3 RS」も登場していますね。
997世代のポルシェ911GT3はこんなクルマ
そして2007年に登場した997GT3もやはり「メツガー・エンジン」を採用し、その上でチタンコンロッドを採用するなどさらにスパルタンに。
3.6リッター水平対向エンジンは415馬力(レブリミットは8,400回転)を発生し、997世代から新しく登場したアクティブサスペンションシステムも装備(ただし、一般的なアクティブサスではなく、そのダンピングを変更できる、というだけのもの)。
もちろんこの世代にも「GT3 RS」が登場していますが、「黒×オレンジ」のインパクトが強いカラーリングが採用されたことが記憶に残ります(これはしばらくチューニング業界のトレンドになった)。
2010年にはフェイスリフト版である997.2ベースのGT3が登場し、エンジンは3.8リッターへと排気量がアップされ。出力は435馬力へ。
センターロックホイール、ダイナミックエンジンマウント(PASMと同じ原理で、エンジンマウントを任意で固くできる)が用意されたのはこの世代が「初」。
もちろん「RS」モデルが登場し、GT3 RS 3.8(450馬力)、GT3 RS 4.0(500馬力)も存在します。
991世代の911GT3RSはこんなクルマ
991世代の911GT3(2013)はもっとも大きな変化を迎えたGT3と言ってよく、まずはエンジンが「メツガー・エンジン」から「水冷専用設計エンジン」へと変更されたこと。
加えて「これまで6MTのみだった」トランスミッションが「7速PDKのみ」に変更され、大いに911ファンを戸惑わせたものです。
エンジンは3.8リッター水平対向(レブリミットはついに9,000回転に)、出力は475馬力。
新機軸としてリアアクスル・ステアリングが搭載されたこともトピックですね。0-100キロ加速は3.5秒、最高速度は315km/h。
そしてフェイスリフトが施された991.2世代の911GT3ではエンジンが4リッターに拡大されて出力は500馬力へ。
トランスミッションに「6MTが(消費者の要望によって)復活しており、これはポルシェの英断だと考えています。
なお、前期モデルで「PDKのみ」だったのは「PDKのほうが速いから」で、当時のポルシェはMTの意味を見い出せなかったから(GT3は純粋にタイムのみを追求したモデルという位置づけだった)。
ただし「911R」にて、いかにマニュアル・トランスミッションの要望が強いかを知らされることになり、この判断に至った、ということですね。
大きなリアウイングを廃止した「ツーリングパッケージ」が設定されたのは新しいところで、これは992世代の911GT3RSにも引き継がれるかもしれません。
こうやって見ると、とにかく911GT3の歴史というのは「パフォーマンス向上」の歴史だと言うことができ、モデルチェンジのたびにパワーアップ(レブリミットも大きく引き上げられている)はもちろん、より速く走るためのデバイスが投入されていることもわかりますね。