| あのファン・パブロ・モントーヤにちなんだ限定モデルで42本限定、価格は2500万円 |
ロレックスは「(大きく)変わらぬデザイン」が人気のブランドではありますが、80年代以降に登場した多くの新興ブランドを好む人々にとってはその「地味さ」がちょっと物足りないかもしれません。
よって、世の中にはロレックスをカスタムするショップがいくつかありますが、今回はなんとArtisans de Genève(アルティザン・ドゥ・ジュネーブ)がロレックス・デイトナ116508をカスタムした”Artisans de Genève La Montoya Gold”を公開。
見ての通りスケルトンダイヤルを持つことが特徴ですが、それだけではなくなんと「ケースバックまでもがスケルトン(シースルーバック)」。
ロレックス・デイトナをここまでカスタムするとは
なお、ロレックス・デイトナといえばプレミアまみれの腕時計で、ロレックスではもっとも高値で取引される腕時計のひとつ。
そしてロレックスファンはその伝統を重んじるために「改造」はもってのほか、という風潮があります。
ちなみにデイトナのゴールドモデルはもともとこういったダイアル(文字盤)を持っており、当然スケルトンではないわけですね。※これは116518LN
そして今回の「アルティザン・ドゥ・ジュネーブ・ラ・モントーヤ・ゴールド」は42本の限定モデルで、その価格はなんと邦貨換算で2500万円。
見たところ文字盤を完全に入れ替えており、インデックスはサブマリーナやヨットマスター、シードゥエラー、ディープシー等に使用される丸形へ。
スモールセコンドの外周は「すり鉢状」となり、文字と針には「ブルー」「レッド」「イエロー」が使用されています。
なお、ベゼルは「フォージドカーボン(鍛造カーボン)」のようですね。
スケルトン文字盤の上には一枚ガラスが追加されているようで、そこにはロレックスの王冠と「ROLEX OYSTER PERPETUAL COSMOGRAPH」の文字。
クロノメーター検定に関する記載は省かれているようです。※王冠が立体だったら良かった
ロレックスはもともと「表、裏とも」見せることを前提としていないため、内部パーツについては「芸術的な美しさ」を持つ仕上げがなされていないはずですが、今回のアルティザン・ドゥ・ジュネーブ・ラ・モントーヤ・ゴールドについては内部が仕上げられているのかどうかは不明。
もし仕上げがなされていないのであれば、ロレックスはもともと、見えないところに至るまで「恐るべき美しさ」を持つということになりますね。
なお、アップルがマッキントッシュを設計する際、スティーブ・ジョブズは「一般人は見ることがない」基盤の美しさにまでこだわったと言われ、エンジニアの「誰もそんなところを見ない(のでこだわっても無駄)」という意見に対し、「いや、オレが見る」という一言で押切り、思い通りの”美しい”基盤を設計させたというエピソードがありますが、ロレックスもやはり”見えないところにまで美しさ”を求めた製品なのかも。
ケースバックはこんな感じ。
ローターには「ファン・パブロ・モントーヤ」、そして「LIMITED EDITION」の文字も。
もしかするとローターそのものは入れ替えられている可能性もありそうです。
ちなみに裏蓋にも「200,175C LES ARTISANS DE GENEVE 12/42JUAN PABLO MONTOYA LIMITED EDITION」の刻印が見られ、オリジナルの裏蓋を「彫った」のかもしれません。
なお、この個体は「42本限定のうちの12本」ということになりそうですね。
F1ドライバーは腕時計好き
なお、モントーヤというと、昨年にブガッティ・シロンで「停止から時速400キロまで加速し、また停止する」という世界記録を達成したばかり。
F1史上最高速度である時速372キロを記録した人物でもありますが、「三大レース」のうちモナコGPとインディ500を制しており、デイトナ24時間での優勝経験があるなど、そのドライビングスキルには定評があります。
そしてF1ドライバーは腕時計好きな人が多く、ほかにはヤルノ・トゥルーリ(オーデマピゲ)、ミハエル・シューマッハ(オーデマピゲ)、ミック・シューマッハ(リシャール・ミル)、シャルル・ルクレール(リシャール・ミル)といったコラボレーションもしくはスポンサーシップも。
VIA: Watchfinder & Co.
ほかにはこんなロレックスのカスタムも
ロレックスのカスタムで有名なのは「バンフォード・ウォッチ・デパートメント(BAMFORD WATCH DEPARTMENT)」。
もともとはアパレルブランドであったバンフォードが腕時計部門を設立してカスタムをはじめたものですが、ステンレスケースをDLC/PVD加工によってブラックに着したり、文字盤やインデックス、針の仕様やカラーを変更したり、といったものですね。
ただ、このバンフォードは「キワモノ」ではなく、ブルガリ、ゼニス、タグ・ホイヤーから「オフィシャル」にてカスタムビルダーとして”唯一”認可されており、実際に各メーカーから公式に許可したカスタムモデルを発表しています。
そのほか、バンフォードの代表がオーダーした「真っ黒な」ベントレー・ミュルザンヌも公開されていて、今相当に力を持つショップということになりそうですね。
ほかに「スケルトンダイヤル」にはこんな製品も
そしてスケルトンダイヤルで有名なのはやはり「ウブロ(HUBLOT)」。
スケルトンダイヤルは「クオーツでは絶対にできない」精密さをアピールする手法ともいえ(逆にクオーツ登場初期にコイルをアピールしたクオーツもありましたが)、オーナーに対しても「支払った対価に見合う満足」を与えてくれる仕様だと言えそうです(スケルトンバックも目的は同じだと思われる)。
ただ、時間を読み取るという、時計本来の機能に関しては「スケルトンではない」ダイヤルに大きく遅れをとるものの、現代だとそれは問題ではないのかもしれません。
そしてウブロのCEOが移ってきたタグホイヤー(両方とも同じLVMHグループ)もスケルトン化。
やはりLVMHグループ傘下にあるゼニスも最近はスケルトンダイヤルを発表していて、これは腕時計がもはや「時間を知る」という道具からアクセサリーへと変化しているということを意味しているのかもしれませんね(時を知るという意味では、クオーツ式腕時計はもちろん、スマートフォンやスマートウォッチにかなわない)。
やはりこれ抜きでは語れない、リシャール・ミル。
そのほかロジェデュブイも一部スケルトンダイヤルが存在しますが、これはブリッジなど腕時計の機能を見せるため。
多くのメーカーが「トゥールビヨン」を見せるためにスケルトンダイヤルを採用するのもやはり「機能を強調するという」意図があるものと思われます(というか、それ以外にはない)。
なお、こういった流れはクルマも同じで、「べつに見せる必要がない」エンジンを見せるという手法もまた、時代に沿った演出のひとつ。
もちろんスポーツカーにとって、車体上部にこういった「重たいガラス」を使用することは運動性能をスポイルすることになりますが、それでもこういった装備はオーナーの所有意欲を満たしてくれるものであり、もはやその性能を存分に引き出す環境がなくなってきたり、セダンでもスポーツカーに匹敵する加速性能を持つに至った現代において、スポーツカーオーナーにとっての「最後の矜持」なのかもしれません。