
| もはや自動車会社の経営は「工業製品を作ること」から「ブランド価値を上げること」へとシフトしている |
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もはや「いいモノ」を作るだけでは会社を存続させることは難しい
さて、現在「自動車以外のビジネスを本格展開する」と公式に発表し、ライセンスビジネス、レストラン事業、アパレル事業に力を入れるとしたフェラーリ。
すでにアルマーニから人材を獲得し、およそ4年の歳月をかけて準備した高級アパレルラインを発表済みですが、今回は「ロデオドライブ(ビバリーヒルズ)にオンリーショップを開設した」とアナウンスしています。
もちろんこのロデオドライブは世界の高級ブランドショップが立ち並ぶことで知られる区画でもあり、ついにフェラーリもそこへ進出、ということになりますね。
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なぜフェラーリはブランドビジネスを?
そこで気になるのが「なぜフェラーリがブランドビジネスを手掛けるのか」。
この理由については語られていないものの、ぼくはこれについて「自動車業界が将来的に利益を出しにくい構造になると予測し、そのリスクヘッジ」のためだと考えています。
御存知のとおり自動車業界は電動化へと一気に進んでおり、ガソリンエンジンはまず絶滅することになるものと思われ、そして自動車の存在自体が「悪」、ひいては自動車メーカーそのものが「反社会的」とみなされる時代がやってくるかもしれません。

さらに自動車は「個人所有」から「公共モビリティ」としての性格を強め、クルマを自分で運転しなく(できなく)なる可能性も。
もちろんそういった方向へとすぐにシフトするわけでもなく、どんな状況であろうとも個人所有を求める人々は存在するとは思われますが、「主流」が変わりつつあることには間違いなく、よって自動車メーカーの経営者はこういった事情を無視できないということですね。
そうなると自動車メーカーは自動車以外でも利益を出せる方向を模索する必要があり、ポルシェの「空」やヒュンダイの「ロボット」、ホンダやトヨタ、日産に「宇宙」はひとつの例だと考えてよく、あと数十年もすれば「船を作ってない日立造船」のように、「自動車と社名がつくのに自動車を作っていない会社」がでてきても不思議ではなさそう。

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フェラーリは抜群のブランドバリューを誇る
ちょっと脱線しましたが、フェラーリに話を戻すと、フェラーリは現在「ブランドランキング」では非常に高いポジションを誇り、これはエンツォ・フェラーリが創業した時代から「信念を貫き、顧客を選んできた」ためだと思われます(とうじはもちろんブランディングなどという言葉も概念もなく、しかしエンツォ・フェラーリは本能的にそれを実践したということになる)。
これによって「フェラーリと聞いて、想像するイメージが世界中の誰であっても同じ」「お金があっても手に入れることができるわけではない高嶺の花」という状況が出来上がったわけですが、現在のフェラーリはそのブランドバリューを利用してほかのビジネスを開始するということになり、これは他の自動車メーカーとは圧倒的に異なるところ。
たとえば、いかに自動車販売台数世界ナンバーワンのトヨタが「高級アパレルや高級レストランをはじめました」といっても多くの人は興味をそそられないと思われ、これがいわゆる「ブランドの強さ」ということになります(ただし「企業」価値だとトヨタのほうが圧倒的に上であることは間違いない)。
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現在でもフェラーリは顧客を絞った展開を行い、「とにかく手に入らない」という飢餓感を醸成することでその価値を上げ続けていますが、これはロレックスやオーデマピゲ、パテックフィリップといった高級機械式腕時計にも通じる戦略であり、一部の限られた企業やブランドにしかできない戦略だと考えられます。
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そして今回フェラーリが展開する新しい高級アパレルラインだと「靴が10万円以上」といった恐ろしい価格を掲げるものの、ある意味では「手が届くフェラーリ」でもあり、たとえフェラーリに乗っていなくても、こういった製品を購入することでフェラーリに対する帰属意識を高めようと考えているのだと思われ、この戦略はフェラーリ・ワールドや、新しく展開がアナウンスされたレゴランドとのタイアップにも通じるものがありそう。
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とにかくフェラーリは「自動車ビジネスにて、そのブランド価値を極限まで高め」、その高めた価値をもって他ビジネスへと乗り出して収益化を図るとともに「フェラーリの次世代ファンを育成する」という手法を採用していると認識しているわけですが、これによって「永遠に続く帝国」を築こうとしているのだとも捉えています。
ちなみにフェラーリは前CEO、ルイス・カミレッリ氏が電撃辞任した際、グッチなどハイブランドからCEOを迎えようとしたという報道もなされており、これが事実だとすれば、もはや自動車会社の運営は「工業製品の製造」から「ブランドビジネス」へと変化しているということを意味していそうですね。
そしてブランド価値を上げることができれば、本業の自動車においても「車両価格を高く設定できるので、利益幅が大きくなる」のはもちろん、フェラーリのように「そのほかのビジネス展開が可能になり、新たな可能性が見えてくる」ことになるのだとも思います(ブランド価値ではなく、工業製品の価値のみにこだわっていると、いつまでもモノだけを作らねばならず、多くの日本の製造業のように、世の中の変化に対応できずに淘汰される可能性もある。日本の製品は世界に誇れるものが多数あるが、作り手優先に過ぎたのかもしれない。グッチもエルメスも最初から高級ブランドであったわけではなく、優れた製品づくりに加え、製品を周知させるという活動によって現在の地位を築いている)。
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参照:Ferrari
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