| サリーンは中国に未来を見出した? |
アメリカのスーパーカーメーカー「サリーン」。
もともとサリーンの創業者であるスティーブ・サリーンはレーシングドライバーで、自身のノウハウを反映したコンプリートカーを販売することで名を挙げています。
なお、自身がフォードのクルマでレースに参戦することが多かったためか、コンプリートカーもフォードに集中しており、マスタングやフォーカス、エスコートを扱うことが多かったようですね。
その後2000年には独自設計のスーパーカー「S7」を発表していますが、これはフォードの7リッターV8をミドシップマウントし、出力はなんと(2005年のアップグレードで)760馬力。※最新モデルは1500馬力を発生するらしい
0-100キロ加速は2.8秒、最高速度は時速400キロという、今でも第一級のパフォーマンスを誇っています。
当時アメリカでも大きな話題となって、いくつかの映画に登場したり、日本ではキムタクが所有しているというウワサ(これはデマ)が流れたりしたクルマでもありますね。
サリーンはいつの間にか中国シフトを行っていた
ただ、その後はあまりサリーンの話を聞くことはなくなり、しかし本国アメリカや、中国での活動を続けており、アメリカでは得意の「マスタング」のコンプリートカーも2018年に発表。
そして中国のパートナー企業とともに開発された「S1」も発表。
これは2.5リッター4気筒ターボエンジンを搭載して450馬力を発生し、0-100キロ加速3.5秒で駆け抜けるスーパーカーで、価格は1100万円ほど。
アメリカ、そして欧州、中国にて発売されているようですね。
中国に活路を見出すメーカーも多い
そして今回驚かされたのが、中国で開催されたサリーンのイベント。
中国現地のパートナー、 Jiangsu Secco Automobile Technology Corporationとの共同開催となりますが、巨大なスタジアムを借り切り、まるでオリンピックの開会式並のおおがかりなイベントとなっています。
そして派手な演出にて最新モデルの「S7」がアンヴェール。
サリーンのバックボーンを紹介。
そしてなんとジェイソン・ステイサムも登場!
そしてダンスイベントも。
ラップや中国の伝統を取り入れたものなど、様々な世代に向けたダンスが披露されています。
プロミスガールズっぽいのも登場。
そしてマイクロカーの入場。
現在、正式名称は明かされていないものの、「MAC」「マイアミ」とも呼ばれているようですね。
ピュアエレクトリックカーとなり、出力は107馬力、一回の満充電あたり走行可能距離は300キロ程度というスペックです。
こちらはプロモーション用と思われるレーシングバージョン。
こちらはサリーン製SUV。
ぼくは「サリーン=ハイパフォーマンスカー、スーパーカー」という印象を持っていただけに、今回の「マイクロカーとSUV」にはちょっと驚き。
ただ、スーパーカーで名を売って、その後に「より儲かる」SUVやコミューターに進出する例は珍しくなく、同じく中国の「NIO」、香港の「GFG」も同様の計画を持っていますし、ピニンファリーナも「2000馬力級の」ハイパーEVで名を轟かせた後、SUVとサルーンを展開する、としていますね。
そしてサリーンの全モデル大集合。
とにかく歌って踊りまくる、中国らしいイベントですね。
いったいいいくらかかってるんだと思わせる内容ですが、現在中国では「儲かっていなくとも、会社を大きく見せる」ビジネス手法が盛んであり、借金に借金を重ねてもプロモーションには巨額を突っ込む、という傾向があります。
一般にこれは中国で「焼銭」と呼ばれ、とにかく名を売り、シェアを最大化した後に収益化を考えるというビジネスで、一時期シリコンバレーで盛んだった「まずはフリー(無料)でサービスを浸透させ、その後にプレミアム(有料)化する=フリーミアム」を中国風にアレンジしたもの。
こういったビジネスが流行する背景には、「投資ブーム」も関与しているのではと考えていますが、つまり中国では「伸びそうな会社に投資し、収益があがれば還元してもらう」という傾向が強いようです。
よって人々は「常に投資する対象」を探していて、それを企業側もよく理解しているので、投資家を説得してうまくお金を引き出すという戦略に出ているのでしょうね(他人のふんどしで相撲を取る=他人のお金でビジネスを行うのは中国の基本的な考え方でもある。ある意味では世界標準にも近い)。