
| たしかに欧州ではタイカンの人気が高く、アウディの工員までもがポルシェでタイカン製造を手伝っているというが |
ちょっと信じられないものの、タイカンが「欧州にて、ポルシェでもっとも売れているモデルになった」との報道。
これは2020年8月統計を取ったものだそうですが、1位はタイカン(1183台)、2位は911(1097台、前年同期比-37%)、3位はカイエン(771台、前年と変わらず)、4位はマカン(646台、前年同期比-62%)、5位はカイエンクーペ(554台、前年同期比+29%)、6位は718シリーズ(517台、前年同期比-5%)、7位はパナメーラ(278台、前年同期比-71%)。
One remarkable fact of August’s new car regs in 🇪🇺 is the position of #PorscheTaycan. It was Porsche’s bestselling product counting for almost 1/4 of total volume. #Taycan was 5th bestselling car in E-segment, 15th bestselling electric car. Source: JATO #carindustryanalysis pic.twitter.com/AQAkdISCp9
— Car Industry Analysis (@lovecarindustry) September 22, 2020
タイカンはパナメーラを食ってしまった?
なお、この数字を見て思うのは「カイエン強いな」ということ、そしてタイカンが「パナメーラの売上を食ってしまったんじゃないか」ということ。
パナメーラが昨年比-71%ということは、昨年だと「960台売れていた」ということで、そしてここまで大きく落ち込んだ背景にはタイカンの影響を否定できない、とも考えています。

そしてこれを裏付ける理由としては、欧州でパナメーラのハイブリッド系が高い人気を誇っていたこと。
一時は(トヨタRAV4 PHV同様に)売れ過ぎでバッテリーが足りなくなってしまったほどで、これは欧州特有の現象だと考えて良さそう。
というのも欧州では環境意識が非常に高く、たとえ高価でも環境にいいものを選ぶという傾向があり、マツダ3でも「SKYACTIV-X」を選択する比率が高い、と言われます。
つまり、欧州のポルシェユーザーは「環境に優しい」ということでパナメーラのハイブリッドモデルを選んでいたと思われるものの、そこへ「もっと環境負荷が小さい」タイカンが登場したため、そちらへシフトしたのだろうということですね。
ただし日本や欧米では事情が異なる
ただ、日本や欧米ではこの限りではないと思われ、というのもそこまで「高価なハイブリッド車を購入する」傾向が強くはなく、とくにポルシェのようなスポーツカーメーカーにて「わざわざハイブリッドを選ぶ例も多くない」ため。※中古市場のパナメーラ・ハイブリッド系の数(比率)から推測
そして米国では「ポルシェ内部での自食作用」よりも「テスラからのやってくる客」のほうが多いともコメントされており、地域が変わればずいぶん事情が変わるものだ、と思います。
加えて、欧州での販売傾向を見ていると、「2025年までに販売の半数をエレクトリックモデルに」という(ポルシェが属する)フォルクスワーゲングループの計画も荒唐無稽なものではなく、ハイブリッドモデルを投入しさえすれば、コンパクトカーであってもハイパフォーマンスカーであっても、顧客は喜んでそちらを選ぶという読みに基づいたものなのかもしれません。
フォルクスワーゲンID.4の受注サイトはあまりの人気にクラッシュ
ただ、最近のエレクトリックモデル人気の高さは欧州だけではないと見え、フォルクスワーゲンがアメリカで新型EV、ID.4の受注をオンラインで開始した途端にサイトが(アクセス集中で)クラッシュする、という事件が発生。※ID.3の際はそういった話を聞かなかったので、やはりアメリカ人はEVといえどSUVを好むようだ
参考までに、初回限定モデルとなるID.4 1stエディションの価格は43,995ドルに設定されるものの、もっとも安価なID4 proだとその価格は39,995ドル。

ID.4の一回の充電あたり走行可能距離は402kmで、これはテスラ・モデル3の409kmに(価格ともども)対抗できるレベルであり、こちらもポルシェ・タイカン同様にテスラの客を奪ったのかもしれません。
つい先日、テスラは自社の開催した「バッテリーデイ」にて、(モデル3よりも)安価なEVの投入を示唆していますが、それには他社の追随という事情、ゆくゆくは競争に巻き込まれるため、他社が踏み込めない領域を開拓する、という意図があったのかもしれませんね。