| 意外な事実ではあるが、テスラは消費者の意見を収集し、事細かく改良を行うことで知られている |
それにしてもエアコン操作やシート形状、オーディオやマイクといった細かいところにまでアップデートを施すとは思わなかった
さて、新型テスラ・モデル3が正式に発表され、大きな注目を集めている状態ですが、ここ数日で各メディアより試乗含むレポートが公開されており、新型モデル3はどう変わったのか、それらの情報をここでまとめてみたいと思います。
なお、外観については前後バンパーにヘッドライトとテールランプ、ボンネットにフロントフェンダーが変更された程度ではあるものの、これらによって見た目の印象が大きく変わり、しかしそれ以上に「中身」が劇的に変わっているようですね。
新型テスラ・モデル3はこう変わった
新型モデル3のボディサイズは全長4,720ミリ、全幅は1,880ミリ、全高は1,440ミリ、そしてホイールベースは2,880ミリで、「全長が少し(20ミリ)」伸びた程度。
ボディ形状の変更にて空力効率が向上してCd値が0.225から0.219へと低下しており、19インチホイール(ブレードつき)は5%、18インチホイール装着者では8%の総合効率(電費)向上がなされている、とアナウンスされています。
車体重量も従来型とほぼ変わらず、モデル3 RWDでは1,761kg(+1kg)、モデル3 ロングレンジだと1,824kg(-20kg)。※後述の通り補強や遮音材などの追加があったことを考慮すると実質的には軽量化されている
ボディカラーにはウルトラ・レッド(従来のレッドより濃い色)とステルス・グレー(従来のグレーより濃い色)が用意され、わずかに選択肢が拡大しています。
なお、テールライトは、バンパーとテールゲート間の仕切り部分で「2つに分割されない」構造へと変更され一体感が増しており(テールランプはトランクリッドと一体化されている)、テールゲート中央には「Tマーク」の代わりに「TESLA」文字が入ります(レクサスの変更同様、これはひとつのトレンドでもある)。
加えてリバースライトとリアフォグランプはバンパー下部に配置され、新しいエアロダイナミクス・ディフューザーが組み込まれるなど、フロント同様に一目で「新型」だとわかるデザインが与えられることに。
トランクスペースは561リットルから594リットルへと拡大され、フロントトランクの容量も88リットル増加しているというので、これは車体構造そのものが(ギガキャストの導入によって)大きく変わったことを示している部分なのかもしれません。
ちなみにですがボディ周囲には、クルマの全周を監視するカメラが配置され、一般にハードウェア4.0と呼ばれる、「距離センサーを廃止して、カメラのみで機能する」システムが導入されるなど、チョコチョコとした変化も多数報告されています。
新型テスラ・モデル3は「より静かで快適に」
新型テスラ・モデル3は、基準が厳しくなっている米国の側面衝突テスト(道路を走るSUVが増えたことを考慮し、衝突時に2倍のエネルギーを放散することが義務付けられている)に耐えられるよう内装の補強構造が変更されており、後部ドアにも二重ガラスが採用され、その他のガラスにもすべて遮音ガラスが使用されることで静粛性が大きく向上。
加えてボンネット形状の変更で風切り音が減少し、タイヤも低ノイズタイプを採用している、と紹介されています。
室内だとリアシートの形状が変更されて快適性が増し、フロントシートはベンチレーション付き、そして全シートはエコレザー張りへ(パーフォレイト=穴あき加工が施されている)。
後席乗員用として8.0インチのタッチスクリーンが装備され、ここではエアコンのほか、リア専用オーディオシステムの調整ができるほか、YouTubeやNetflixなどのストリーミングプラットフォームを視聴することもでき、さらにはラップトップコンピューターを2台まで充電できる65ワットのUSB-Cアウトレットが2つ備わるなど、大幅に使い勝手も改善されているようですね。
キャビン上部には新しいアンビエントライトがあり、インフォテインメント・システムのメニューから異なる色に設定できるほか、センターコンソールの素材が変更され、加えてダッシュボード上部にはカスタマイズ可能なソフト素材のインサートも。
なお、特に携帯電話のワイヤレス充電を行う部分のアルミニウムは放熱性が向上しているというので、かなり細かいところにまで改良の手が及んでいるということになりそうです。
ステアリングホイールもアップデートされることでタッチキャパシティブ・コントロールが増え、かつ(インフォテイメントスクリーンともども)入力レスポンスも改善され、シフトコントロールはレバーからタッチスクリーンへ。
細かいところだとタッチスクリーンは15インチから15.4インチへ、そして助手席側のエアコン送風をオフにできる機能が追加されたほか、オーディオシステムもアップグレードされて14スピーカーから17スピーカーへ(アンプ、そしてコントロールソフトウエアもバージョンアップされている)。
そしてハンズフリー通話の際などに使用する車内マイクも1つから2つになるなど、テスラの(顧客をないがしろにするという)イメージからは想像もできないようなきめ細かな配慮もなされています(実際、テスラは市場から様々な意見を収集しており、細かくアップデートを行っている)。
新型テスラ・モデル3の走りは「さらに上質に」
そしていくつかの動画では実際に新型モデル3に試乗していますが、そこで述べられているのが「ちょっと走って、マンホールの蓋や段差を乗り越えただけで、サスペンションが改善され、以前よりも凹凸を吸収するようになったことが実感できる」。
さらにはステアリングの反応も変化しており、フロントエンドのジオメトリーが変わったことによって、ステアリングはよりプログレッシブでリニアに感じられる方向へと変化したようですね。
サスペンション自体は剛性を増したサブフレームとともに車体に取り付けられ、スプリングとダンパーに新しいブッシュ、そして異なるキャリブレーションが与えられることでいっそう「乗員を外部から隔離し、キャビンの遮音性を高めている」という印象が強くなっているもよう。
装着されるタイヤは専用に開発されたもので(ミシュランとハンコック製が存在することが確認されている)、転がり抵抗の低減、若干のエアロダイナミクスの向上がなされ、加えて衝撃吸収性を高めた「新型モデル3専用品」。
一方でブレーキとバッテリーは従来モデルと変わりはなく、モデル3 RWDだと中国CATL社のLFPプリズムセルケミストリーを採用したバッテリーを(容量は60.0kWh/使用可能57.5kWh)搭載しており、シングルモーターの出力は283馬力/420Nm、0-100km/hは6.1秒、最高速度は従来のモデル3の225km/hから201km/hへと引き下げられることに。
新型モデル3のWLTP複合サイクルでの航続可能距離は(従来のモデル3の)491kmから19インチホイール装着時で513kmへ、18インチホイール装着時で554kmと伸びており、これには主に「改善されたエアロダイナミクスが貢献」していると紹介されています。※電費は5~8%向上している
一方、モデル3ロングレンジは498馬力/493Nmの出力を誇るエレクトリックモーター、NMCケミストリー製の円筒型セルを採用した78.0kWhバッテリー(使用可能75.0kWh)を搭載して0-100km/hタイムは4.4秒、最高速度は従来のモデル3の1233km/h201km/hへ。
テスラは「モデルチェンジを行わず」ずっと同じモデルを生産するスタイルを採用していますが、2014年に登場したモデル3も「見えない部分で」多くの改良を受け、登場初期の車両と直近の車両とを比較すると「中身はまったく別モノ」だとも言われます。
そして今回は「フェイスリフト」に分類される変更が行われたわけですが、様々な動画を見るに「変わっていないのは基本形状とパワートレーンだけ」であり、そのほかは”ほぼ”すべて置き換えられるという実質的なモデルチェンジだと捉えたほうがいいのかもしれません。
ちなみにこの新型モデル3を生産するのは今のところギガ上海のみで、ベルリン、テキサス、フリーモントにあるギガファクトリーでは生産されておらず、よって販売される地域も限定された状態です(ただし順次新型モデル3の生産が拡大され、全世界においてこの新型に切り替えられるものと思われる)。