| EVを作るのはそれほどまでに難しいのか |

イギリス政府から多額の援助を受けて電気自動車の開発を薦めていた(掃除機の)ダイソン。
このプロジェクト規模は非常に大きく、 ダイソンはアストンマーティンに22年間も務めた購買部門責任者のデビッド・ワイアー氏、同じくアストンマーティンで製品開発の責任者であったアン・ミナーズ氏を獲得し、テスラのスポークスマン、リカルド・レイエス氏も引き抜き済み。
英国政府は18億円の融資をこの新プロジェクトに対して行ったとされ、ダイソンはエンジニア含めて3,000名以上を追加で雇用すると発表するなど、一部では「沸きに沸いていた」事業でもあります。
「いかなる手段を用いても、実現不可能だとわかった」
そして今回、ダイソンが公式に「やっぱり電気自動車を作るのは無理でした」と発表し、電気自動車事業からの撤退を表明。
ダイソンいわく「我々は画期的な手法を考え、それを実現しようとプッシュしてきた。だが、いかなる手段を用いても、商業的にそれは実現不可能だとわかった」。
ダイソンのEVについてはソリッドステートバッテリーを使用することが前提として考えられており、価格帯についても「日産リーフのように安価ではない」とコメント。
2020年までには発表するとしていたものの、2020年を待たずにその計画をクローズさせたということになります。
ちなみにダイソンはそのEV事業の売却先を探したそうですが、買い手が見つからず、「まるまるの損失」となる見込み。
アストンマーティンはこの事態を予見
なお、ダイソンのEVについては逸話があり、それはダイソンが「EVに参入する」と発表した際に、アストンマーティンCEOが「ダイソンはEVを発売できないだろう」と即座にコメントしたこと。
アストンマーティンは比較的以前からEV開発を進めており、もともとは新型クロスオーバー「DBX」もEVとして企画されていたものの、それを断念してガソリンエンジン車として発売するという経緯があります。
つまり、アストンマーティンは、ほかのどのメーカーよりも「EVの難しさ」を理解している会社のひとつだということになりますが、それだけに異業種から電気自動車産業に参入し、壮大な計画を公開したダイソンにカチンと来たのかも。
実際にアストンマーティンCEOは「誰もがEVにかかるコストと時間を甘く見ている」とダイソンに対してコメントし、「発売は無理だろうが、頑張ってみるといい」とも。
そして、「掃除機メーカーが自動車産業に参入するのなら、我々アストンマーティンも掃除機業界に参入するとしよう。そしてそれは我々のヘリテージを反映したV12となるだろう」とし、12個のファンネルを持つ掃除機のレンダリングも公開。

EV開発は本当に難しいようだ
過去、ダイソン同様にEVを諦めた会社としては「アップル」も。
アップル創業者であるスティーブ・ジョブズはカーマニアとして知られ、(ポルシェ928、メルセデス・ベンツSL、BMW Z8などフロントエンジンの大排気量車に好んで乗っていたようだ)自社での自動車製造は悲願だったと考えられ、その生前から「アップルカー」「タイタン」等と呼ばれたプロジェクトを推進し、しかしその後プロジェクトをシャットダウンして売却しています。

そのほかにも数しれないほどの「EVベンチャー」が世界中で大量に発生したものの、実際に発売できたのは一握り(にも満たない)で、ダイソンやアップルですら成し遂げられなかったということがその困難さを示していますね。
なお、多くの企業がEVへと参入したのは、テスラがあまりにもアッサリとEVを発売したのを見て「自分たちにもできる」と考えたためだと思われますが、これについても「テスラおよび、イーロン・マスクの実力を、皆が過小評価していた」のかもしれません。