| とくにアウディのクワトロシステムは、そのルーツが「速く走るため」にある |
Motorsport magazineが、アウディRS5スポーツバックを仏マニクール・サーキットに持ち込み1:59.97を記録する動画を公開。
このタイムはなんと991世代(後期)のポルシェ911カレラSが記録した2:01.10よりも速く、BMW M3コンペティション(1:59.80)、M2コンペティション(1:59.78)に迫るタイムです。
アウディRS5スポーツバックに搭載されるエンジンは2.9リッターツインターボ(V6)、出力は450と非常にパワフルなので「当然といえば当然」かもしれませんが、より軽量でピュア度の高いポルシェ911、そしてBMW M3やM2と同等のタイムを出せるというのは驚きでもありますね。
サーキットを速く走るのであれば4WD
このタイムの背景には「4WD(クワトロ)」という駆動方式が関係していると思われ、というのも最近の4WDはパッケージング上の不利をあっさりと覆してしまうことがあるため。
どういうことかというと、一般にサーキットを走るには「軽く、重心が低い」ことが有利なのは周知の事実ですよね。
これはコーナリング中に「慣性によってクルマがアウトに膨らまない」ためには非常に重要な要素で、軽くて重心が低ければ、そのぶんアウトに膨らまず、かつ車体が安定するということになります。
ただし近年の「トルクベクタリング4WD」は、クルマがアウト側に膨らみそうになれば「外側のタイヤの駆動力を強め」、無理やりに車体をインに近づけることができ、これまで常識とされてきたセオリーをアッサリ覆すことに。
加えて、コーナーの出口では前輪がクルマを牽引するかのように思いっきり引っ張りながら加速するために脱出速度も速く、これもタイム向上に直結する部分です。
よって、最近では「サーキットを速く走るには4WDでないと」という風潮がありますが、これはとくに「重い車」や「フロントエンジン車」において顕著。
フロントエンジン車がパフォーマンス面で不利であることは、新型コルベットが「ミドシップ化によって驚異の性能向上を遂げた」ことでもわかり、アウディRS5の場合はその不利をクワトロシステムにて補っている、ということになります。
ただし4WDに対する考え方は様々
なお、メルセデスAMGを選ぶ顧客はほとんどが4WD(4MATIC)を選ぶといい、BMWも現行M5にて4WDを取り入れ、ついに新型M3でも4WD(xDrive)を採用することが決定済み。
これによって新型M3のタイムが(FRレイアウトを採用する)現行M3に比較してどれほど伸びるかも楽しみではあるものの、一方でよく言われるのが「4WDは楽しくない」。
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これはつまり後輪の駆動力でクルマの向きを変えたり姿勢を制御することが(4WDでは)できないということを指しているのだと思われますが、これに対応する形でメルセデスAMGでは一部のモデル、そしてBMWはM5にて「ドリフトモード」を導入。
これはスイッチ操作のみによって本来4輪に分配するトルクを「後輪のみ」に振り分け、かつスタビリティコントロールを甘めに変更して「意図的に後輪が滑る」ように設定変更するもので、これによって操る楽しみを見出そうということになります。
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ちなみにメルセデスAMG(63系)においては、ドライブモードを「スポーツ」に入れると後輪寄り(モデルによっても異なるが30:70くらい)になってFR的性格となり、サーキットアタック用モード「レース」に入れると「前後50:50」に。
つまり楽しく走るなら後輪寄りのトルク配分、しかし本気で走るならフロントの駆動力を強めにという考え方を採用していることがわかります。
一方、アウディそしてフォルクスワーゲンはドリフトモードについては否定的で、とことん「滑らせない」方向を選択しており、エンジンが発生するパワーを余すところ無く駆動力に変換することを目的としていて、このあたりは各社各様ですね(加えてアウディは、ひとつのクルマに複数の駆動方式を内包することに否定的)。
VW「次期ゴルフRは現行よりパワフル。ただしドリフトモード、後輪操舵はない。それらはヨソのやり方で、我々の方法ではない