| スマートとしては豊富な資金を得ることができて良かったのかもしれない |

「スマート」ブランドの50%が中国の吉利汽車(ボルボとロータスの親会社)へと売却されたのは今年の1月ですが、早くも「新型スマート」のウワサが出ている模様。
英国Autocarによると、今年半ばには(もう半ばに近い)新型スマートが発表されるとしており、これはダイムラーの研究開発部門のボスであるマーカス・シェーファー氏へのインタビューから判明したようですね。
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スマートはこれから本格攻勢に出る
マーカス・シェーファー氏によれば、「スマートはブランドとして人々に認知されるという点においては成功であったが、商業的には成功とはいい難かった」と語り、「だから我々は販売台数を増やす必要がある」とも。
なお、スマートはもともと1994年に「MCC(マイクロカーコーポレーション)」として設立され、当時の主体は腕時計の「スウォッチ(SWATCH)」。
なお車名の「スマート(Smart)」はSwatch、Mercedes-BenzにARTを組み合わせた造語です。
パートナーはメルセデス・ベンツではあったものの、スウォッチがクルマを作るという話題が先行し(当時スウォッチはとんでもないプレミアが付いたモデルもあった)「スウォッチカー」と呼ばれたこともあって、市場からは高い期待が寄せられるもなかなか発売は実現せず。
その後1998年にようやく市販にこぎつけていますが、小型車の開発経験がなかったメルセデス・ベンツは安全性の確保に苦労し、改良にコストがかさんでなかなか黒字転換できず、結局スウォッチは資本を引き上げる、という事態となっています。
これによって貧乏くじを引いたのがメルセデス・ベンツですが(スマートを引き取らざるを得なかった)、その後黒字化できたのは2008年だとされるので、創業から14年(発売開始からは12年)もずっと赤字だったわけですね。
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一時は「スマート廃止」案も
その後スマートはなんとか販路を拡大しつつ現在にいたり、しかしダイムラーとしては(販売台数が伸びないので)これ以上コストをかけることができずに「ついにスマートブランド終了か」という話まで出ることになるものの、そこで登場するのが吉利汽車。
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この吉利汽車を率いるのは李書福という人物で、同氏は冷蔵庫メーカーから自動車メーカーへと自身の会社を変革し、そこで最初に試作した自動車がメルセデス・ベンツEクラスのコピーであったというほどのメルセデス・ベンツ好き。
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2018年にはメルセデス・ベンツに提携を持ちかけるも「誰だお前」と門前払いを食らい、そこでメルセデス・ベンツ(ダイムラー)の株式を10%近く買い進め、ついに筆頭株主に躍り出ています。
ただ、問題なのは、筆頭株主になったとしてメルセデス・ベンツと中国内における提携が出来ないこと。
というのも、中国側のルールにて「外資系の自動車メーカーが、中国企業と提携できるのは2社まで」というものがあり、メルセデス・ベンツはすでにこの枠を使い切っていたためです。
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スマートにとっては「渡りに船」
しかし李書福氏はなんとかメルセデス・ベンツとのジョイントを行いたく、よってスマートの株式を別途買い取り、メルセデス・ベンツではなくスマートブランドとの合弁を展開することにしたわけですね。

そして、中国にて合弁企業を展開するからには新スマートの生産は中国ということになり、この「中国産スマート」はフルエレクトリック、さらには世界中に輸出されることになる、とも。
現時点ではどのようなクルマになるかわかりませんが、吉利汽車の持つノウハウを投入し、そこにはボルボも一枚噛む、と言われます。
なお、デザインや実際の開発はダイムラー側で進めるとも報道されており、これまでのスマートから大きく乖離しないとは思えるものの、メインマーケットが中国となるのは間違いなく、中国市場の嗜好を盛り込んだ仕様となるのは間違いなさそう。
今回の報道が正しければ、あと1~2ヶ月で新型スマートが登場するということになりますが、2023年には「クロスオーバー」も追加されると言われており、「街なか中心」というスタンスは崩さずとも、これまでとはやや異なるブランドへと進化するのかもしれません(ただし、スマートは2016年頃からSUVの発売を考えていたので、吉利汽車のバックアップを得て念願が叶うということになるのかも)。
VIA:Autocar