|1990年代からドイツの自動車メーカーはカルテルを結んでいた?|
今年6月にドイツのメディアがフォルクスワーゲン、アウディ、BMW、ポルシェ、メルセデス・ベンツの5社が「カルテルを結んでいる」と報道しており、これはディーゼルエンジンにおけるエミッションコントロールのみならず、部品調達や技術開発についても各社が歩調を合わせている、と言われています。
これについては10月にもBMW、フォルクスワーゲン、ダイムラーがEU競争法(独占禁止法)違反の疑いで欧州委員会の立ち入り調査を受けており、もし「ギルティ」となるとかなりの衝撃になりそう。
ベンツに続きアウディも「同じ理由で」ディーゼルをリコール。なおポルシェ含む5社の「カルテル」が報じられる
今回、立ち入り検査の事実を受けてフォルクスワーゲンCEO、マティアス・ミュラー氏が「そんな事実はない」と否定。
さらには「我々はEU競争法を尊重し遵守している」とコメントし、一切カルテルに関与していない、と明言しています。
なぜジャーマンスリーの自動車価格は似たようなものに?
ただ、ぼくは以前から「ジャーマンスリーの車の価格、使用される技術が非常に似通っている」とは感じていて、カルテルとはゆかないまでも「何らかの協調体制」があるのでは、と思っているのも事実(これに対してネガティブな感情は持っていない。業界を継続成長させるためには必要なことではないかとも考えている)。
ここでちょっと各社の同じセグメントに属する車の価格を見て見ましょう。
日本での価格設定なので本国とは事情が異なりますが、「なぜか似ている」価格帯となっていることがわかりますね。
BMW 3シリーズ 419~832万円
アウディA4 447~679万円
メルセデス・ベンツEクラス 682万円~1014万円
BMW 5シリーズ 617~1036万円
アウディA6 628~972万円
もちろんライバルを意識した値付けを行うであろうことは理解できますが、「3社がそろって」似たような価格になるのは何となく見えない力が働いているようにも感じられます。
採用される技術も同じような時期に同じようなものが
価格のほか、「技術的な分野での」歩調となると、「同じような技術が同じ時期に出てくる」不思議もあり、最近だとメルセデスAMG E63 Sと新型BMW M5が同じような性能と価格を持つことに。
メルセデス・ベンツE63・・・612馬力 4WD ドリフトモード付き 1785万円(1馬力あたり2.91万円)
BMW M5・・・600馬力 4WD ドリフトモード付き 1703万円(1馬力あたり2.83万円
こういった例についてもぼくはやはりネガティブなイメージをもっていなくて、自動車メーカーが体力を維持しながら定期的に新しい技術を出してゆくにはある意味で必要なことかもしれず、これによって「買い替え需要」を促進できたり、次に出てくる技術を予測できたり、新型車に採用される技術を予測できたりするのではないかと思うこともあるのですね。
なお例外としてはBMWの「i」シリーズがありますが、これは珍しく「歩調が合わなかった」例。
もしかするとBMW以外のメーカーはこの時とくに「エレクトリックに興味がなく」、「やるならやれば」程度の認識だったのかもしれません。
ただ、これから各メーカーがエレクトリック化を進めるにあたり、おおよその登場時期、性能あたりの価格、走行可能距離などが「似たような感じ」になってくると思われ(サプライヤーが似通ってくるので性能も同じようなものになってくる、ということもありますが)、こういった「足並みを揃える」行為は消費者の利益を阻害するというよりは、むしろ選択肢を広げてくれている可能性もある、とも考えています(判断の難しい問題ではありますが。価格のつり上げなど消費者の権利が阻害されている事実があれば問題)。