
| ソリッドステートバッテリーは「2020年には実現しているはず」の技術だったが |
この記事のもくじ
もしかするとこのまま「実現できず」、そのうち代替技術が確立されるかも
さて、フォードとBMWが近々、ソリッドステートバッテリーのテストを開始するとの報道。
2017年、この二社は”先進的な新型電池”を開発しているソリッド・パワー社への投資を発表していますが、このソリッドパワー社は、2022年初頭に固体電池のパイロット生産を開始する準備を進めながら、コロラド州にある工場面積を拡大していることが明らかとなっています。
-
-
BMWは2025年にソリッドステートバッテリー実用化?「飛躍的にEVとしての性能を高め、価格や性能的にガソリン車と変わらない、”ノイエクラッセ”を投入する」
| BMWはすでに次世代EVを企画中 |この記事のもくじ| BMWはすでに次世代EVを企画中 |ソリッドステートバッテリーの登場にはまだ5年ほど?ただし実用化が難しいと判断したメーカーも合わせて読みた ...
続きを見る
それでも実用化されるのは「10年先」
Tech Crunchによると、この新工場では、硫化物をベースとした固体電解質材料の製造に重点を置き、100アンペアのバッテリーセルに焦点を当てた生産ラインのスペースを確保すると報じられていますが、フォードとBMWは、2022年初頭にこの電池セルを手に入れ、10年後の市場投入に向けて自動車用途でのテストを開始するとのこと。
おそらくBMWとフォードはソリッドステートバッテリーのテストを開始する「トップバッター」になるんじゃないかと思われますが、それでも「10年後の市場投入」というのはかなり先。
それでも多くの自動車メーカーが挑戦し、一部は諦めてしまったことを鑑みるに、10年先といえども「まだいいほう」なのかもしれません。

固体電池(ソリッドステートバッテリー)は、電気自動車やハイブリッド車に使用されている現在のリチウムイオン電池の次の段階の電池として注目されていますが、エネルギー密度を高め、コストを削減し、寿命を延ばすことが可能だと見られる”次世代”技術。
ソリッドパワー社のCEOであるダグ・キャンベルは、TechCrunchの取材に対し、「熱暴走を引き起こす火花」となるのは電解液であるため、従来のバッテリーよりも安全であると述べており、将来的に自動車メーカーの収益を圧迫するだろうと言われる「EVの火災」からも逃れることができ、「現代自動車とGMが現在直面しているこれらの問題は、ソリッドステートバッテリーの使用で解決できると強く信じています」とも。
-
-
EVの火災発生率はガソリン車の2倍!かつEVは深刻かつ大規模リコールが多く、メーカーに大きなダメージを与えている模様。消費者にとっては車両コスト高、任意保険高騰など負担増か
| このまま「未体験ゾーン」へと一気に踏み込むと、自動車メーカーを苦しめ、社会的にも大きな問題を引き起こす可能性がありそうだ |この記事のもくじ| このまま「未体験ゾーン」へと一気に踏み込むと、自動車 ...
続きを見る
なお、ソリッドパワー社は、パナソニック、LG、CATLといった企業のライバルになるつもりはなく、あくまでも素材メーカーであると述べ、今回の生産拡大により、複数の自動車メーカーに供給できるだけの電池セルを生産できるようになりますが、その電池セルは自社で生産するのではなく、パートナーにライセンスする予定だとされています(つまり、フォードやBMWは技術・素材の供与を受け、自社、もしくはサプライヤーにてこれを生産することになる)。
ソリッドステートバッテリーは「もう実現してもいいはず」だったが
参考までに、ちょっと前までは「トヨタ(とパナソニック)がもっともソリッドステートバッテリーの実現に近いポジションにいる」とされながらも未だ実現で来ていない状態(2020年に実験用車両に実装するはずだった)。
-
-
トヨタが「世界で初めて」ソリッドステートバッテリーを実用化?早ければ2020年にオリンピック選手向け自動運転モビリティに搭載
| ソリッドステートバッテリーは多くの自動車メーカーの「夢」だが、実用化は程遠いとされている |この記事のもくじ| ソリッドステートバッテリーは多くの自動車メーカーの「夢」だが、実用化は程遠いとされて ...
続きを見る
さらには「ソリッドステートバッテリー搭載車を発売する」と宣言していたフィスカーも「やはり無理だった」とソリッドステートバッテリーからの撤退を表明しています。
-
-
ソリッドステートバッテリー実用化一番乗りと見られたフィスカーが「やっぱり無理。新バッテリー計画をすべて中止する」と発表!こうなるとほかメーカーの雲行きも怪しそうだ
| ソリッドステートバッテリーは空飛ぶ車や自動運転同様、「見果てぬ夢」に終わるのか |この記事のもくじ| ソリッドステートバッテリーは空飛ぶ車や自動運転同様、「見果てぬ夢」に終わるのか |「あと10% ...
続きを見る
さらにリマック、ウィリアムズ、その他多くのメーカーがこれに取り組んでいるものの未だ実験檀家でも成功例は聞かず、ポルシェは現在のリチウムイオンバッテリーの改良型にて当面(ハイパフォーマンスカー向けのバッテリーに)対応する予定。
-
-
ポルシェが「ハイパフォーマンスカー、限定モデル」のみに搭載するという新型バッテリー開発計画を公開!バッテリー製造と充電インフラ構築を急ぎ、EVにおけるアドバンテージ獲得を目指すようだ
| リマックへと出資した成果がついに形として現れる? |この記事のもくじ| リマックへと出資した成果がついに形として現れる? |そのほかにはこんなメリットもポルシェは「電動化環境」の構築を急ぐ現在、タ ...
続きを見る
そしてフェラーリやランボルギーニ、ポルシェなど「次世代ハイパーカーの登場は2025年前後」とコメントしているものの、これはおそらく「その頃にはソリッドステートバッテリーが必要化されているはず」という観測に立ったものだと考えられ、となると(先駆的存在のBMWですら2030年頃の実用化となるため)それらハイパーカー計画についても「既存バッテリーの使用」「(ピュアEVをやめて)ハイブリッド」など、ソリッドステートバッテリーを使用しない前提に立って計画を練り直す必要が出てくるのかもしれません。
-
-
ポルシェ「918スパイダー後継は2025年までは発売できないだろう」。バッテリー技術がポルシェの求めるレベルに達するのに5年はかかる模様
ポルシェは現在数社とバッテリー技術向上に向け研究中 ポルシェは2015年にハイパーカー「918スパイダー」を発売していますが、常に話題になるのがその後継モデル。ポルシェは以前に「なんらかの技術的ブレイ ...
続きを見る
合わせて読みたい、バッテリー関連投稿
-
-
今度はイタリアから2040馬力のエレクトリックハイパーカー「エストレマ・フルミネア」登場!世界初のソリッドステートバッテリー(個体電池)搭載EVとなるようだ
| ただし未だソリッドステートバッテリーを搭載したハイパーカーは存在しない |この記事のもくじ| ただし未だソリッドステートバッテリーを搭載したハイパーカーは存在しない |初の「個体電池採用」電気自動 ...
続きを見る
-
-
テスラとLGとが新型バッテリー工場を建設し「バッテリー需要逼迫」に備えるとの報道。なおGMは「リチウムメタル」バッテリー開発開始、トヨタは「ソリッドステート」実用化を目指すなど各社各様
| テスラは次世代バッテリーよりもリチウムイオンバッテリーの可能性を追求するようだ |この記事のもくじ| テスラは次世代バッテリーよりもリチウムイオンバッテリーの可能性を追求するようだ |バッテリー確 ...
続きを見る
参照:Tech Crunch