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昔なつかしバブル期に全盛だったワイドボディカスタム。メルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディが競売に登場、当時はもっとも高価だった市販車の一つ

2022/11/05

昔なつかしバブル期に全盛だったワイドボディカスタム。メルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディが競売に登場、当時はもっとも高価だった市販車の一つ

| 今、1980-1990年代のチューンドカー再評価の機運が高まっている |

とくにこのメルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディは歴史的にも重要性が高い

さて、1987年製のメルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディがRMサザビーズ開催のオークションへと登場予定。

AMGは現在でこそ「メルセデスAMG」としてメルセデス・ベンツのサブブランドのひとつとして活動していますが、もともとは全く別の法人であり、1967年に、メルセデス・ベンツのエンジニアであったハンス・ヴェルナー・アウフレヒト、エアハルト・メルヒャーによって設立されています。

AMGの由来は「アウフレヒト」「メルヒャー」の頭文字、そしてアウフレヒトの出身地であったグロースアスパッハの頭文字を取ったもので、当初はエンジンビルダー兼チューニングメーカーとして活動しており、そのパワフルなエンジンの製造や搭載によって一気のその名を知られることに。

そして1999年にはメルセデス・ベンツがAMGを手中に収めて現在に至るわけですが、今回出品される「メルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディ」は、メルセデス・ベンツ傘下となる前に製作された非常に希少なモデルです。

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メルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディはこんなクルマ

この560 SEC 6.0 "ワイドボディ "は、AMGの最もワイルドで有名な作品のひとつだとされ、メルセデス・ベンツのフラッグシップであったSECクーペにAMG製の6.0リッターとワイドボディが加わることとなっており、しかし現代のように最初から「メルセデスAMG」として設計されているわけではなく、新車のメルセデス・ベンツSECクーペをAMGが改造しているためにコストが非常に高くなってしまい、そのためこれは「当時最も高価なクルマのひとつ」として知られています。

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当時の価格は17万ドルほどとなりますが、インフレを考慮すると現代の貨幣価値ではこの価格よりも遥かに高い金額となり、よって購入できたのは「わずか一握りの人」だけであったとも言われていますね。

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ただしこの時期日本は「バブル経済」まっさかりであったので、多数のメルセデス・ベンツAMG、そしてケーニッヒで溢れかえっていた時期があり、もしかすると当時のAMGにとって日本がもっとも出荷台数が多い地域であったのかもしれません(ただし統計はない)。

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見たところ、ドアにはソニックデザインのスピーカーが埋め込まれており、もしかするとこの個体はしばらく日本に存在し、然るべきときにソニックデザインのスピーカーが装着された可能性もありそうです。

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バブル期のメルセデス・ベンツ560SEC AMGがオークションに
バブル期のメルセデス・ベンツ560SEC AMGがオークションに登場!あの頃はこんなワイドボディばっかりだったな・・・。

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このメルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディのボディカラーは(当時人気があった)ブルーブラックメタリック、インテリアはアンスラサイトレザー。

新車時はベルリンのH・ハーマンの依頼によってドイツ市場向けとして(AMG本社のある)アファルターバッハにて製造され、1987年7月に納車されたという記録が残っています。

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フロントグリル内のスリーポインテッドスター、ボンネット上のエンブレムもボディ同色となっており、この頃の欧州のチューンドカーにはこういった仕様が多く(とにかくあちこちをボディカラー同色にしていた)、これが当時の日本のチューニングシーンにも影響を与え、よって日本でも「なんでもかんでもボディカラー同色」にペイントするカスタムが流行り、そして根付いたのかもしれません。

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搭載されるエンジンは5.5リッターから6リッターに排気量アップ

AMGは新車のメルセデス・ベンツSECのエンジンをためらうことなく改造することになり、この5.5リッターM117 V型8気筒エンジンはボーリングによって6.0リッターに拡大され、高性能カムシャフトと16バルブ、サンドキャスト製法によるシリンダーヘッドを組み合わせています。

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さらにはスロットルボディ、エキゾーストパイプ、インテークマニホールドを改良し、ノーマル比2倍のトルクと385psを発生することになりますが、パワーは、アップグレードされたトランスミッションを介して後輪に伝達されることに。

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ホイールはOZ製の3ピースディッシュタイプ(Aero III、17インチ)、ディスク部分はボディ同色。

このホイール形状もまた全世界的に大きく流行し、現在でもいくつか復刻されたり、これをモチーフとして取り入れたコンセプトカーもいくつか存在します。

ブレーキシステムはAMG製の4ピストンフロントブレーキキャリパー、ショックアブソーバーはビルシュタインによるカスタム品が組み合わせられている、とのこと。

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よくメルセデスがこれを許したな・・・。ウィル・アイ・アムとのコラボによるGクラス顔のAMG GT「ザ・フリップ」正式発表。エンブレムにはベンツマークではなく「クマ」
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メルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディのインテリアはコンディション上々

アンスラサイトレザーインテリアは、ドア、ダッシュボード、センターコンソールにバールウッドトリムを採用し、いかにも当時の高級車といった雰囲気に。

レカロ製CSEシート(ディープサイドボルスター付)には多数のパワーアジャストが装備され、AMG仕様のモモ製M38ステアリングホイール(4スポーク/革巻き)が装着されています。

この時代に製造されたウッドパネルは往々にしてひび割れを起こしていることも多いのですが、この個体についてはそういった劣化も見られず、非常に優れたコンディションを保っているように見えますね(どこかの段階で修復された可能性もある)。

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こういったスイッチ類はいかにも「当時」を感じさせるもの。

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なお、エンジンとトランスミッションのナンバーは、「正しいAMG配列」を持ち、つまりは後に載せ替えなどが行われていないということを意味し、フロントフェンダーとフロントバンパーには、(当時の)西ドイツでの生産情報を示すAMGボディキットナンバーが刻印され、バルブカバーには6.0リッターの排気量とシーケンス(点火順)ナンバー、そして製造した社員IDコードを示すスタンプ、ヘッド、エキゾーストマニホールド、スロットルボディにも改造を証明するスタンプが押されている、とのこと。

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このメルセデス・ベンツ560SEC AMG 6.0ワイドボディは2015年に現在のオーナーが入手しており、現時点での走行距離はわずか24,014km。

一時期こういった「改造車」は敬遠される傾向にあったものの、メルセデスAMGの評価が高まり、ガソリンエンジンの終了が「秒読み」段階に入った今、チューナが手作業にて多くのアップグレードを加えたカスタムカーの再評価の機運が高まっており、ある意味での芸術作品ともみなされる風潮が出てきたようにも思います。

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参照:RM Sotherby's

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