| とりあえずは安心した |

数日前、米ブルームバーグが「フォルクスワーゲングループが、ランボルギーニブランドの売却を検討している」という報道を行ったばかりですが、これに対してフォルクスワーゲンが正式に「否定」を行っています。
これはフォルクスワーゲンのスポークスパーソンがロイターを通じて声明を発表したもので、「ランボルギーニの売却、もしくはIPO(株式公開)という計画はない」というシンプルなもの。
なお、このコメントが出されたのは休業日である「日曜日」で、かつランボルギーニからではなく、フォルクスワーゲンが正式に発表したというところを見るに、けっこうブルームバーグの報道に対する反響が大きかったのだと思われ、投資家心理に配慮して週明けの株式相場での(株価の上下など)影響を避けたかったのかもしれません。
エレクトリック化はお金がかかる
なお、売却の話が話が出てきたのは、「フォルクスワーゲングループは、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェに資本(投資)を集中させたく、そのためにランボルギーニを売却する」というもの。
この「フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ」3ブランドはグループ内でもエレクトリック化の急先鋒であり、そしてエレクトリック化に際しては研究開発はもちろん、製造においても「ガソリン車とは異なる」設備が必要で、とにかくお金がかかります。
しかしながら、お金をかけなければ他社に先を越されることになり、ここで遅れを取ることは致命傷となりかねず、そのためにランボルギーニを売ってお金を得るのでは、という推量が根底にあったわけですね。
加えて「ディーゼル不正事件」によって相当額の補償金が必要になったことや、ランボルギーニを買収してフォルクスワーゲングループに組み込んだ人物でもあるフェルディナント・ピエヒ氏が亡くなるにあたり、「お金になりやすく、大排気量エンジンに集中していて、VWの進めるエレクトリック化とは相性が良くない」ランボルギーニを売ると考えられる条件が揃った、ということもあったのかもしれません。
フォルクスワーゲンはグループの価値を2.5倍にする計画を持っている
ただ、ランボルギーニを売却するというのは「刹那的」な対策にしか過ぎず、これは「FCAがフェラーリを手放した」のとはまた別の話。
FCAは内情が(当時)非常に苦しくなっており、しかしフェラーリを上場させることでFCAが持つ、そして売却できるぶんの株式の値上がり益を手に入れることができ、これを経営のための原資に充てることができたわけですね。
そしてFCAは当時これ以外にお金を得る方法がなく、”やむを得ない”手段であったと考えられ、将来に渡ってお金を生み出す、金のなる木であるフェラーリを上場させた後、さらに手放さねばならないというのは苦渋の決断であったことも容易に想像できます。
しかしランボルギーニの場合は、「フォルクスワーゲンはそこまでお金に困っているわけではない」ため、今すぐにランボルギーニを売却する必要はなく、フォルクスワーゲングループの時価総額「890億ドル」のうち「110億ドル」という大きな比率を占めるランボルギーニを焦って売ると、将来困ることになりそう。

ちなみにフォルクスワーゲンは、890億ドルの時価総額を、今後約2.5倍の2200億ドルにしたいと考えていて、そこで「110億ドル」を目先のお金のために失うわけにはゆかないのでしょうね。
なお、2018年の世界自動車販売について、VWは自動車業界トップの536万5300台。
それに対してランボルギーニの2018年における販売台数は5,750台。
つまり、フォルクスワーゲングループにおけるランボルギーニの販売台数はわずか「1/933」ですが、時価総額だとランボルギーニは、フォルクスワーゲングループのうち「1/8」を占めるということになり、かなり効率の良いブランドである、とも言えます。