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【動画】フェラーリの歴史を振り返る!一蹴したはずのランボルギーニに対抗せざるを得なかった1970年代、それによって確立された「ミドシップ」、「周年記念限定モデル」の投入

【動画】フェラーリの歴史を振り返る!一蹴したはずのランボルギーニに対抗せざるを得なかった1970年代、それによって確立された「ミドシップ」、「周年記念限定モデル」の投入

| フェラーリとて時代の流れには対応する動きを見せ、しかしそれによってエンツォ・フェラーリの当初の思惑とは異なる方向に |

しかしながら様々なチャレンジが新たな歴史を生み出すことに

さて、ちょっと前にはフェラーリの創業前後から量産開始までの歴史を紹介しましたが、今回はそこから「先」のフェラーリについて触れてみたいと思います。

まずここで外すことが出来ないのが「ランボルギーニとの関係性」。

ランボルギーニは「世界で最も設立目的が明確な自動車メーカーのひとつ」と言われ、その理由とは「フェラーリへの対抗心から」だとされています。

トラクタービジネスにて財をなしたフェルッチオ・ランボルギーニがフェラーリを購入し、そこで欠陥を見つけたため、エンツォ・フェラーリに改良のための提案に行ったところ、エンツォフェラーリに「ランボルギーニよ、お前はトラクターを運転することはできるだろうが、フェラーリを適切に扱うことができるとは思えない」と言われて追い返され、これに立腹したフェルッチョ・ランボルギーニがスーパーカーを作るために「ランボルギーニ」を立ち上げたというわけですね(諸説あり)。

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ランボルギーニの真実が今ここに。「フェルッチオはフェラーリに抗議に行かなかった」

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しかしながらランボルギーニは「無視できない」存在に

そしてランボルギーニは1964年に350GT、1968年にミウラを発売しますが、ミウラは当時「大排気量初の」ミドシップスポーツカー。

フェラーリ初の量産モデルであった206ディーノの販売台数が152台であったのに対し、ミウラは(販売期間は異なるが)747台を販売しており、フェラーリとしてもこの事実を看過できなかったと言われます。

なお、エンツォ・フェラーリは「エンジンはフロントに収まっているべき」と考えており、実際に「牛は荷車を押さない。荷車を引っ張るのだ」と発言するなど、ミドシップやリアエンジンに対しては懐疑的であったこともわかりますね。

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ただ、そういったエンツォの主張とは裏腹に、ランボルギーニ・ミウラは多くの著名人に愛されることになり、かのフランク・シナトラも「誰かになりたいと思ったらフェラーリを買うといい。だがランボルギーニを買うのは”誰か”である場合だ」とコメントしており、つまりランボルギーニは自分自身を持っている人が行う選択だと述べたわけですね。

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これは「今や誰もがフェラーリを運転したいと願っている。それこそが私が当初意図したことなのだ」と語ったエンツォ・フェラーリにとってはプライドをいたく傷つけられる一件だったと考えてよく、そこで登場したのが1971年の365GT4 BBだったとされています。

なお、365GT4 BBにはリトラクタブルヘッドライトが与えられ、その後90年代おわりまで続く、「いかにもスーパーカー的な」デザインを採用した先駆的存在だと考えています。

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その後ミドシップモデルとしてはV8エンジンを積む308GTB(1975年)、308GTS(1977年)が発売されていますが、これらの価格はかなり求めやすい(当時)45,000ドルに設定されており、308GTSはなんと3,219台もが売れる大ヒットに(308GTBは2,897台)。

308GTB/GTSはディーノの流れを汲むモデルだと考えられるので、これらの発売の直接の理由が「ミウラの登場」であったとは言い切れませんが、少なくともミウラに触発されて発売することとなった365GT4 BBにて「ミドシップへの」はずみがついたことは間違いなく、その意味では「ランボルギーニは、自らの手で自身を窮地に追いやってしまった」とも考えることができるのかもしれません。

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いつしかミドシップはフェラーリにとっての重要なモデルに

そして1980年に導入されたのが「モンディアル」。

「世界の」という、現在のフェラーリからは想像できないようなオープンなネーミングを持っていて、位置づけとしては38GTB/308GTSの後継であり、しかし”より広い”ターゲットを獲得すべく「2+2」というレイアウトを持っています。

ボディデザインはピニンファリーナの担当、そしてエンジンはV8(ミドシップマウント)というパッケージングを採用し、発表当初こそ評判は芳しくなかったものの、その後改良を重ねつつ1993年まで販売されています。

結果的に「フェラーリにとって、もっとも販売面で成功したモデルのひとつ」へと成長しており、しかしその後フェラーリCEOへと就任したルカ・ディ・モンテゼーモロ氏の新戦略によって廃止され、以降フェラーリには「V8ミドシップと2+2」という組み合わせが存在しない状態です(フロントエンジンではあるが、V8エンジンと2+2という組み合わせは2008年に”カリフォルニア”が採用している)。

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その後1984年にに登場したのが「テスタロッサ(5リッターV12 / ミッドエンジン」。

エンジンヘッドが赤いことから「赤い頭」すなわちイタリア語でテスタロッサというネーミングを持っていますが、このネーミングは1957年に活躍したレーシングカーへのオマージュとなっています。

フェラーリは1970年代に入り、それまでの優雅なカーブをもつボディ形状から、「フロントフェンダーがやや角張った」近代的なデザインへと移行しているものの、このテスタロッサではリアセクションも角張った形状が与えられ、それまでのフェラーリとは大きくイメージが変わることに。

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そしてインパクトのあるデザイン、世界的な好景気に乗って販売台数はフェラーリの市販車史上最高の9,457台を記録していますが、同年には「近代では最初の少量生産モデル」となる288GTO(2.9リッターV8ツインターボ / ミッドエンジン)も登場しており、大きな転換期がこの1984年であったのかもしれません。

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その後は288GTOの流れをくむ328GTS/GTB(1985年)が登場しますが、北米での新車価格は58,400ドルという控えめなプライシングがなされています。

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フェラーリは「周年記念モデル」という新たな柱を構築

そして1987年には、エンツォ・フェラーリが関わった最後のフェラーリ「F40」が登場。※その後、エンツォ・フェラーリは1988年に90歳で亡くなる

F40はフェラーリの40周年記念として発売されていますが、公にこういった「何周年」記念として発売された初のモデルでもあり、そのために世界中から購入依頼が殺到したため、もともとの生産予定台数であった350〜400台の予定を大幅に超えた1,311台が製造されています(北米での新車価格は40万ドル)。※1,315台説もある

搭載されるエンジンは2.9リッターV8ツインターボ、重量1089キロ、0-100キロ加速は3.9秒(0−60マイルだと3.8秒)、そして世界で初めて最高速が200マイル(時速322キロ)を突破した車としても知られますね。

ちなみに選択できたボディカラーは1色のみ、それはもちろんレッド。

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なお、フェラーリ=レッドというイメージがありますが、もともとのカンパニーカラーはモデナ市のカラーでもある「イエロー」で、レッドを使用しはじめたのは、レッドがイタリアの(国際レースにおける)ナショナルカラーだったため。

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ただ、モータスポーツにおけるフェラーリの活躍があまりに強烈だったため、目にする(報道される)フェラーリの車両がレッドばかりになり、そのイメージが(レッドに)固定されてしまったのでしょうね。

なお、今ではたとえ限定モデルと言えど多様なカラーを選択できますが、それでも(フェラーリの全モデルを含め)レッドの占める割合はじつに45%にももぼるのだそう。

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そしてその後、フェラーリのV8ラインナップは348(1989年)、さらに348GTS/GTB(1993年)へ。

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ぼくの大好きなフェラーリ・ミトス(ピニンファリーナによるコンセプトカー)がデビューしたのもこの時期であり、ちなみにですが、ぼくがもっとも好きなフェラーリのデザイン世代はこのウェッジシェイプを採用していたあたりで、348や355には強い魅力を感じます。

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フェラーリは新CEOのもとで新たな路線へ

そして一方、V12エンジン搭載モデルとして新しく登場したのが「456」。

これもやはりルカ・ディ・モンテゼーモロの意向を強くあらわしたクルマだと考えられ(同氏はフェラーリに快適性と信頼性、豪華さを求めた)、新たな客層を獲得するとともに、その後の時代に続く道を切り開いたモデルだとも考えられます(ある意味では、FFやGTC4ルッソもこの延長線上に存在する)。

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V8モデルは大きくパフォーマンスと信頼性を向上させた「355」が登場しており、こちらは4,871台が販売されるヒット作に。

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1995年にはフェラーリ創立50周年を記念するF50が発売されますが、これは「公道を走るF1マシン」というコンセプトのもとに製造されており、フェラーリのスペシャルモデルの中でも「もっとも」スパルタンだと言われます。※F40のコンセプトは「そのままレースに出場できるフェラーリ」

生産台数は349台に絞られ、これは「常にフェラーリは、その顧客が求めるよりも1台少なく作る」というポリシーを反映させたもので、「求められるがままに作りすぎた」F40に対する反省の意味も込められていそうですね。

なお、ボディカラーはF40の「レッドのみ」とは異なり、ブラックやイエロー、シルバーなど様々なカラーを選択することが可能です。

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1996年にはV12エンジンをフロントに積む550マラネロが登場。

同じ「V12フロントエンジン」としては456GT、456M GTと併売されていますが、456はグランドツアラーという性格を持ち、しかしこの550マラネロはニュルブルクリンクにて発表されたことでもわかる通りモータースポーツを強く意識したモデルであり(実際に数多くのレースに参戦している)、現在の812スーパーファストの祖先だと考えることができます。

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1999年には「オールアルミ」モノコックを採用した新世代フェラーリ「360モデナ」が誕生し、一気にその設計が近代化されることに(当時としては非常に先進的で、時代の先を行っていた)。

北米での新車価格は14万ドル(355から大きく上昇している)、しかしこの高価格帯にもかかわらず8,800台が販売されています。

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その後フェラーリは「創立55周年記念」としてエンツォフェラーリを発表。

その名の通り、創業者であるエンツォ・フェラーリの名を冠したモデルで、399台のみの限定販売となっています。

なお、エンジンはエンツォの愛した「V12」が搭載され、そのデザインはピニンファリーナに在籍していた奥山清行氏(のちにガンダムをモチーフにしたと語っている)。

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このエンツォフェラーリについて、399台とは別に、「1台のみ」特別なモデルが存在し、それはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がフェラーリに注文した個体。

これは2005年にチャリティーオークションに出品されて95万ユーロで落札されていますが、収益金はインド洋大津波の義捐金に当てられています。

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ざっとここまでが2000年代前半までのフェラーリですが、ざっとおさらいしておくと、まずフェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリはありファロメオのドライバーからスタートし、その後はアルファロメオのレーシングチームを任され、しかし後にアルファロメオと決別してフェラーリを創業。

フェラーリ創業の目的は市販車を販売するためではなく「モータースポーツ活動を行うため」であり、その資金を捻出するために市販車を販売することになりますが、まずは巨大市場であるアメリカに目をつけてアメリカ市場向けのモデルを企画することに。

その後さらなる資金が必要となり、「V12以外は認めん」としていたものの、V6エンジンを搭載したディーノを発売することで大きく販売台数を伸ばし、さらには足蹴にしたフェルッチオ・ランボルギーニが創業したランボルギーニ社より登場したミドシップスポーツ、「ミウラ」のヒットによってミドシップスポーツへの進出を決断させられることに(エンツォ・フェラーリは、”エンジンはフロントにあるべき”という信念を持っていた)。

しかしながらこのV12ミドシップもヒットすることによって、自身の信仰でもあった「V12エンジン、フロントエンジンレイアウト」ではないというフェラーリの人気が加速するというジレンマに陥っていったように思います。

そしてエンツォ・フェラーリの死後はさらにその傾向が加速し、F1においても「フェラーリはタバコを吸わない」として、たばこメーカーのカラーへとマシンをペイントすることを断固拒否していたものの、エンツォ・フェラーリ亡き後には「スクーデリア・フェラーリ・マールボロ」が誕生するなど、1990年代以降はフェラーリとして大きな変革を迎えた時期ということになりそうです。

さらに言及するならば、「ミドシップV8」が確固たる柱として確立され、一方でV12モデルはフロントエンジンへと変更され、しかし「GT」「スポーツ」へと分かれるなど現在のフェラーリにつばがる基礎ができあがり、「周年記念限定モデル」という手法も定番となったのが今回紹介した時期に起きたことでもありますね。

フェラーリの進化と変遷を紹介する動画はこちら

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参照:Flatlife

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