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生産わずか40台、フェラーリがこの50年で唯一製造したスポーツプロトタイプ「333P」が中古市場に。最初のオーナーは神戸在住のコレクター

2022/05/17

生産わずか40台、フェラーリがこの50年で唯一製造したスポーツプロトタイプ「333P」が中古市場に。最初のオーナーは神戸在住のコレクター

| このフェラーリ333Pの取引価格が明かされることはおそらくないだろう |

333PはF1そしてF50と同じエンジンを積み、モータースポーツにおいて華々しい戦績をあげている

さて、1993年に発表されたフェラーリのレーシングカー「333SP(スポーツプロトタイプ)」がRMサザビーズ主催のプライベートセールに登場。

最初の14台はダラーラ、残り26台はミケロットによって製造され、つまり40台しか生産されなかった希少なレーシングカーということになりますが(試作車を入れると41台)、これはフェラーリにとって20年ぶりのスポーツプロトタイプであり、F1マシン(641)に積まれていた4リッター自然吸気V8エンジン(641馬力/11,000rpm)を改良して搭載するという特別なシリーズです。

ちなみにフェラーリ641は1990年のF1シーズンに投入されてコンストラクターズタイトル2位を獲得していますが、「もっとも美しい」フェラーリのF1マシンとの呼び声も高く、そして今年のF1-75はそのカラーリングを反映させたものだとして大きな話題を呼んでいますね。

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そして今回売りに出されるフェラーリ333SPのシャシーナンバーは032で、つまりミケロット製ということになり、これまでに受けた整備の明細と請求書、22013年に発行されたフェラーリ・クラシケの公式証明書、通関書類を含む書類が付属する、とのこと。

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333Pの「P」はもちろんプロトタイプ(プロトティーポ)を意味しますが、250P、275P、330P2、330P4、312PBといった歴史的なモデルの系譜に連なるレーシングカーであり、その価値は非常に高いと考えられます。

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フェラーリは1973年以降、ワークスとしてはプロトタイプを参戦させていない

ちなみにフェラーリが「ワークス」としてプロトタイプを走らせたのは1973年が最後で、1973年にスポーツカー選手権からフェラーリが撤退した理由は「F1に集中するため」だとされています。

なお、復帰を表明した2023年のル・マンもプロトタイプで走ることになりますが、つまり「最後にプロトタイプでレースをしたのち、50年後の節目に復帰」ということにもなりますね。

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話をこの333SPに戻すと、これは1994年に導入されたIMSA GT選手権の新レギュレーションに対応するために企画されたレーシングカーで、それまでのクローズドコックピットのGTP(グランドツーリングプロトタイプ)クラスに代わり、オープンコックピットのWSC(ワールドスポーツカー)クラスが新設されたため、ここに参戦しようと考えたわけですね。

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ただ、この333Pはフェラーリがワークスとして参入するのではなく「カスタマーカー」として販売され、そのためにフェラーリの「プロトタイプ欠格期間」である50年の間を埋めるに至っていないわけですが、その開発はフェラーリとダラーラの共同にて行われ、ダラーラが空力の開発を行い、最終的にはミケロットが部品組み立てを担当することに。

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構造としてはフラットボトムのカーボンファイバー・モノコック・シャシーをその核とし、サスペンションはダブルウィッシュボーン+プッシュロッド(ダラーラの経験、フェラーリがF1で培ったノウハウが投入されている)。

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WSCのレギュレーションだと、エンジンは市販車用で排気量4.0リッター以下と定められていたそうですが、なぜか333Pでは1990年のF1用エンジンをロングストローク化した4.0リッターV型12気筒F310Eエンジンを搭載することが可能となったといい、このエンジンは後にF50にも搭載されています(その際には排気量が拡大している)。

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フェラーリ333Pは華々しい戦果をあげる

果たして333Pは1994年からレースに参戦を会誌いますが、1994年のIMSAでは7戦中5勝を挙げ、1995年のセブリング12時間ではみごと優勝をかざり、IMSAドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルの両方を獲得。

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さらには1998年のデイトナ24時間ではモモチームが1967年以来の勝利をフェラーリにもたらし、2002年の公式戦最終戦までに333SPは350以上のレースに参加し50以上の勝利と12の主要タイトルを獲得するに至っています。

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こういった戦績を見るに、フェラーリ333Pは、フェラーリがこの50年の間に製造した唯一のレーシングプロトタイプであると同時に、フェラーリの長いモータースポーツの歴史の中でも特別かつ重要な位置を占めているということがわかるかと思います。

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構造やパーツは現代のレーシングカーと大きくは変わらない

なお、1993年というとけっこう前のようにも思えますが、エアロダイナミクスや車体構造は現代のレーシングカーとさほど大きく変わらないように見え、この時代にはある程度の(現代のレーシングカーの)基礎ができていたのかも。

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さらには一部パーツがCNC加工にて製造されていることわかりますが、サスアームのあたりは結構タイトで、チューブなどを「噛んで」しまわないかちょっと心配になったり。

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当然ながらブレーキのクーリングはかなり入念に行われているようですね。

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そしてシートは(レーシングカーということを考慮しても)超質素。

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なお、この個体は、1999年の生産終了間際に製作されたといい、車体カラーはフェラーリの代名詞ともいえるロッソコルサ。

最初のオーナーはなんと神戸のコレクターだそうで、当時コーンズを通じて販売され、ガレージでは288GTOエボルツィオーネ、F50GT、F40LM、マクラーレンF1などと並んで過ごすことになったと報じられています。

その後は2005年5月にオーストラリア在住のオーナーの手に渡り、2007年にはカナダのケベックに住むコレクターのもとへ、そして2011年には現在のコレクターが購入することとなったようですね。

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そして2011年の売却の際にはフェラーリ・ケベックにて整備が行われ、2012年にはミケロットによってシャーシ、エンジン、ギアボックスのリコミッショニングが行われ、さらにはフライホイール、オイル、ウォーターシールの交換とダイナモメーターテスト、ギアボックス内部のシール類の交換、燃料ラインとフィルターの交換、右側サスペンション部品の修正、ディスクブレーキ部品の交換、冷却システムの交換、ボディワークの修正なども行われていますが、この際の修理費用は合計で約19万ユーロ。

その後2015年と2016年、この333 SPはイタリアのムジェロで開催されたフィナーリ・モンディアリ、アメリカのデイトナで開催されたコルサ・クリエンティにて走行し、さらにその後の2016年と2018年にはミケロットで再びメンテナンスを行い、そのコンディションを最適に保っています。

参照:RM Sotheby's

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