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フェラーリのSUV「プロサングエ」は必然の産物だった?フェラーリは常に時代を前に進めるために革新的な取り組みを行い、そして日常性を追求してきた

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| フェラーリは「レーシングカー」と「ロードカー」とを混同することはない |

そしてフェラーリはそのロードカーにおいて、常に洗練されたデザインと技術を追求してきた

さて、フェラーリはブランド初となるSUV「プロサングエ」を発売していますが、これはモータースポーツをバックボーンとするフェラーリにとっては極めて異例なクルマです。

これまでにポルシェやランボルギーニ、アストンマーティンがSUVを発売した際には多かれ少なかれ問題提起がなされたものですが、プロサングエの場合は反対意見がまったく聞こえてこず、むしろウエルカムな反応で満たされているようにも思います(ぼくもその一人である)。

そして今回、フェラーリが「プロサングエという新種」をリリースするにあたり、過去にフェラーリが経験してきたターニングポイントに焦点を当てるコンテンツを公開しており、ここでその内容を見てみましょう。

フェラーリ・プロサングエ
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そもそもフェラーリの定義とは

なお、フェラーリはもともとレーシングチームとして発足しており、レース参戦への資金を稼ぐためにレーシングカーを公道用にアレンジして販売することからそのビジネスをスタートさせ、その後はレーシングカーの販売やロードカーの販売へとその業容を拡大しているわけですが、それを成功させたのは創業者であるエンツォ・フェラーリの商業的才覚であったと言ってよいかと思います。

まだ「ブランディング」という言葉がなかった時代から「フェラーリ」の価値を高めることに専念しており、そのために取った様々な手法はぼくにとってどんなビジネス書よりも参考になったんじゃないかと思うほど。

一方でファンや顧客を大事にする姿勢もほかの自動車メーカーとは一線を画しており、そういった小さなことの積み重ねが現在のフェラーリを構築しているのだと考えています。

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要は、フェラーリというブランドは「エンツォ・フェラーリの、非常に個人的な思想と信念から成り立っている」ということだとも解釈しており、フェラーリのすべての定義はエンツォ・フェラーリによってなされたとも捉えています。

そして今回フェラーリが公開したコンテンツによると、エンツォ・フェラーリが定義したフェラーリとは「世界最高のエンジンを搭載し、最も品格のあるカロッツェリアがデザインしたボディをまとい、献身的な職人が手掛けたスポーツカー」。

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一方、フェラーリは実用性も無視していなかった

そしてその一方、エンツォ・フェラーリは「実用性もないがしろにしていなかった」といい、実際に2+2や4シーターのフェラーリが過去には発売されていて、さらにエンツォ・フェラーリ自身の愛車のひとつは365GT 2+2(オートマチック)。

こういった背景もあり、現代のフェラーリは「プロサングエの登場は必然でもあった」と語っているわけですが、フェラーリとしてはじめてのロードカーとなった「166インテル」もエンツォ・フェラーリの思想を端的に表しているといい、これは166MMバルケッタなど、フェラーリのレーシングカーを「よりフォーマルに」仕立て上げ、優雅さと快適性とを付加したクルマです。

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上述の通り、フェラーリはレーシングチームとしてのスタートを切っているものの、けしてレーシングカーと市販車とを同一視していなかったようで、それは現代のフェラーリにおいても、「市販車にはリアウイングが装備されない」ことからも理解ができますね(一方、レーシングカーと市販車とを同列に語るメーカーもあるが、これは優劣の問題ではなく、思想の問題である)。※そして市販車には優雅さや実用性を求めており、これがセレブに愛された理由なのかも

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さらには250に実用性をもたせた250GT 2+2、330GTといったクルマも登場し・・・。

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1980年にはピニンファリーナによるコンセプトカー「ピニン(Pinin)」が発表されていますが、これはピニンファリーナの50歳の誕生日を祝って企画されたクルマで、見ての通り4ドアというパッケージングを持ち、フラット12気筒エンジンをフロントに積んだ唯一のフェラーリでもありますが、このエンジンによって「望外に低い」フロントボンネットを実現できたとも考えられます。

こういった例を見ても、フェラーリは以外なことに「4ドアの可能性を排除せず、快適性を重視してきた」ということもわかりますね。

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なお、ぼくがフェラーリを運転していて思うのは「フェラーリは視界に優れる」ということであり、車高の低いスポーツカーでありながら、Aピラーを細く取り、斜め後方の視界についても可能な限り確保しているうえ、フロントフードの位置を下げることで前方の視界を広く取っているという印象を持っていて、これはランボルギーニやポルシェと比較した際のフェラーリの美点だとも捉えています(ただ、SF90ストラダーレ以降では、やや視界が犠牲になっている)。

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ちなみにですが、先日発表されたフェラーリ・ヴィジョン・グランツーリスモにおいても「視界を確保する」という要素が取り入れられており、フェラーリにおける視界(=日常性と置き換えることもできる)はけっこう重要なファクターということになりそうです。※ホンダはNSXにおいて視界を重要視しており、視界=性能だとも断言している

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フェラーリはさらなる「革新」も

そしてこういった快適性の他にもフェラーリは様々な革新を行っており、ちょっと時間を巻き戻して1967年には「初めてミドシップレイアウトを採用したフェラーリ」としてディーノが登場。※当初はフェラーリとは切り離したディーノブランドから発売されているが、現代ではフェラーリとして扱われることが多く、フェラーリもそうしているようだ

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その後1990年代になるとF355にてセミオートマチック・トランスミッション「F1」を導入し、1990年の360モデナでは市販車初のアルミボディの導入、2011年にはフェラーリ初の4WDであるFFを市場投入するなど、「業界初」「フェラーリ初」など様々な取り組みを行います。

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なお、このFFが画期的であったのは「ボディ形状にシューティングブレークを採用した」ということであり、この後継モデルであるGTC4ルッソの紹介においては「ベビーカーも乗せることが可能」という衝撃的なコンテンツも掲載されることに。

このほかフェラーリ自身が「革新的な試み」として挙げているのは「リアミッドエンジン+4シーター」のモンディアル8、トランスアクスルレイアウトを採用した456GT、F355のエアロダイナミクス(とくにアンダーボディ)、アクティブエアロ(エンツォフェラーリ)、電制デフとマネッティーノ(F430)、ハイブリッド(ラ・フェラーリ)など。

つまフェラーリは過去に固執せず、その時代と要望にあわせて「正しくフェラーリのDNAを解釈したフェラーリ」を開発し提供しているということになり、その最新の思想が反映されたクルマが「プロサングエ」ということになるわけですね。

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参考までに、アブダビのフェラーリワールドには「ちょっとハイライダーなコンセプトカー」が展示されていて、随分前から(SUVがブームとなる前から)プロサングエに近いクルマが企画されていたということもわかり、これもやはりフェラーリが日常性を追求していたという証左なのかもしれません。

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参照:The Official Ferrari magazine

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