| 現在のマセラティは「ラグジュアリーカーブランド」というイメージが強いが |
このインディはオーナーの愛情が強く感じられる美しい外観、そして素晴らしいコンディションを持っている
マセラティが1969年に発売した4シータークーペ、「インディ」がRMサザビーズの開催するオークションへと登場予定。
現在のマセラティはラグジュアリー色が強く、その印象からはこういったスポーツクーペとのつながりを連想しにくいのですが、もともとはレース用の自動車チューニング、レーシングカー作製を行う会社として1914年に創業されており、F1グランプリにてワールドチャンピオンを獲得したこともある生粋の「スポーツカーメーカー」。
ただ、その後資金難からオルシ家に経営権を渡し(1937年)、その後デ・トマソが1976年に経営権を取得することになるのですが、ここで誕生したのが「ビトゥルボ」で、このヒットによってマセラティはスポーツカーメーカーからラグジュアリーカーメーカーという性質を強め、そして現在に至ります。
マセラティ・インディはこんなクルマ
そこでこのマセラティ・インディについて、これは1939年と1940年にインディアナポリス500で優勝した8CTFレーシングカーへのオマージュとして、1969年のジュネーブモーターショーでデビューしたクルマ(1975年までに1,102台が生産される)。
ヴィニャーレがデザインを担当し、ユニボディ構造で作られた4シータークーペというパッケージングを持っており、ギブリとメキシコとの間のギャップを埋めるというポジションに位置します。
ルーフラインはギブリに比べて高く設定され(そのため、シューティングブレークっぽくも見える)、そのため後部座席のヘッドルームを広く取ることが可能となっており、快適性が十二分に考慮されています。
一方、インディにはダブルオーバーヘッドカムシャフトを採用し、最高出力260馬力を誇る4.2リッターV型8気筒エンジンが搭載され(このスペックでは436台が製造)、その後には4.7リッター、4.9リッターと排気量が拡大されてゆくことに。※このエンジンにはウェーバー製キャブレターが装着されている
記録によれば、標準装備として2ウェイ・アジャスタブル・ステアリングコラム、レザーシート、スモークウィンドウ、リクライニングシート、フォグランプ、ヒーテッドリアウィンドスクリーン、ダッシュボードクロックなどが挙げられ、パワーステアリング、オートマチックトランスミッション、ラジオはオプション扱い。
ヘッドライトはポップアップ(リトラクタブル)式で・・・。
開くとこう。
そしてイタリアのスポーツカーの常として、ドアハンドルにも特徴アリ(日常性よりも美しさが優先されている)。
このマセラティ・インディはこういった経歴を持っている
そこでこの個体について触れてみると、生産が完了したのは1970年6月25日、そしてイタリアのミラノで新車で納車されたという記録が残ります。
マセラティが発表した車両情報によると、もともとオロ・メタリザート(メタリックゴールド)にブラックのインテリアで仕上げられて工場に出荷さており、ZF社製の5速マニュアル・トランスミッションという”標準”仕様。
ただしその後どこかの段階でフランス人オーナーが購入したようで、その後多くの時間をフランスで過ごすことになり、現在もフランスのナンバープレートが装着されています。
なお、現在のボディカラーは淡いメタリックブルーなので、これもどこかの段階で塗り替えられたのだと思われますが、ドアを開いたところまでちゃんとこの色に塗られているので、再塗装の際には(外せるパーツはすべて外すなど)けっこうな手間がかけられていることもわかります。
一方でインテリアは当時のままと思われるブラックレザー仕上げとなっており、エアコン、パワーウィンドウ、パワーステアリングといった快適装備も。
現代でいう「デュアル・コクピット」を採用しているところが印象的ですね。
現在のオーナー、つまり出品者は2016年6月にこのインディを入手し、その後すぐに専門家による整備を受け、バルブタイミングとアイドリングの調整、オルタネーターベルトとフロントブレーキラインの交換、ドアロック、ホーン、助手席シートアジャスターの修理など、外観やメカニズムにおける細かいトラブルを解決している、とのこと。
その後2018年4月になると、このオーナーはペンシルベニア州マルバーンのスクーデリア・ペルフォルマンテに依頼してパワステホースとフルードの交換、オイル交換を実施しており、2022年7月にはミシュランの新品タイヤを装着したうえでバッテリーを交換し、再度オイル交換が実施されることに。
このマセラティ・インディ4.2は、現オーナーの愛情、そして細部へのこだわりによって美しい状態が保たれ、純正のボラーニホイール、そして重要なことにマッチングナンバーのエンジンを持っており、さらにはツールキット(金槌まで入ってる。何に使うんだろう)、ファクトリーマニュアル、パーツブックレット、タイヤ交換用具、各種サービスインボイスが付属しており、コレクションアイテムとしてはなかなかに魅力的な一台だと思います。
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参照:RM Sotheby's