
さて、ここ数ヶ月のあいだ気になっていたのが、日本におけるジムニーシエラの登録台数。
ジムニーシエラは発売された後、今に至るまで高い人気を誇っており、まだまだ十分に行き渡らない状態だとも言われます。
その理由としては「生産台数が限られている」からだと報じられており、これはべつに「生産台数を(希少性維持のために)限定している」からではなく、その構造に起因して増産が難しいため。
ジムニーの車体構造は急な増産に対応できない
ジムニーはスズキの乗用車中では珍しい「ラダーオンフレーム」、つまりラダー上のフレームの上にキャビンを乗せるという構造を持ち、他の車種は「モノコック」。
クルマとしての構造が全く違うということもあり、ジムニーに人気があるからといって他モデルの生産ラインを借り、そこでジムニーを生産するということができないわけですね。
ジムニーの生産台数には謎が多い
そしてジムニーの生産に使用する工作機械は当然ながらジムニー専用であり、すでにいっぱいいっぱいまで使用していると報じられているために「これ以上の生産ができない」状態だと推測されます。
ただ、ちょっと動きがあったのが2020年6月。
下記は2020年に入ってからのジムニーシエラの国内登録台数ですが、1月~3月までほぼ同じ数字を維持していることがわかります。
そしてこの「ほぼ同じ」数字というのは、つまり「生産台数が、工場のキャパシティ上限に達している」と捉えることが可能。
正確に言うならば、ジムニー/ジムニーシエラの台数自体はもっと生産しているものの、他の国にも輸出しているために、「日本への割当がそれくらいしか割けず、その上限が1,200台前後」だと考えて良さそうです。
- 1月・・・1,206台
- 2月・・・1,220台
- 3月・・・1,134台
- 4月・・・616台
- 5月・・・827台
- 6月・・・2,028台
- 7月・・・2,099台
- 8月・・・1,381台
そして4月と5月にはガクっと販売が落ちており、しかしこれはコロナウイルスの影響にて生産やサプライヤーからの供給が滞ったのだと思われ、例外だと捉えています(何もなければ、いつもどおり1,200台前後が登録されていたと予想)。
ここで問題となるのが6月と7月ですが、これまでの1,200台前と比較すると、1~3月の倍近い「2,000台ちょっと」。
この数字は「増産ができない」ジムニーにとってはかなり異常な数字であり、しかも2ヶ月連続して同じような台数となっています。
しかしジムニーは「増産できない」という性質を持っており、生産数量そのものが増えたとは考えづらく、ここで関連づくのが「英国でのジムニー販売終了」。

これはジムニー(日本でのジムニーシエラ)の環境性能が現地の規制にマッチしなくなったためで、よってスズキは乗用車としてのジムニーの販売を終了させ、「商用車」としてのみ継続させるという選択を行っています。※商用車であれば、厳しい規制が適用されない
そして商用ジムニーは「リアシートがない」等の(乗用車バージョンとの)相違があり、当然ながら販売数もガクっと落ちることに。
よってぼくは突然のジムニー販売台数増加について「イギリス(販売終了)分のジムニー生産枠を日本に回したんだろうな」と考えていたのですが、8月になってまた謎の減少を記録しています。
つまり、このまま英国分の生産を日本向けに振り替えることで、日本国内のジムニー需要を満たそうとしているのだろうと考えていたものの、その仮説が揺らいでしまい、しかしここでももうひとつ思い当たるフシがあって、それはインドへのジムニー生産用CKD輸出。

このCKDというのはコンプリートノックダウンを指し、つまり現地生産のための設備をスズキが日本からインドへと輸送した、という報道がなされているわけですね(スズキからの正式発表はない)。
このCKD輸出の目的としては、「コストの高い日本よりも、コストの安いインドで生産し、そこで作ったジムニーを世界中へと輸出する」ということになりますが、これまで日本に保有していたジムニー生産設備の一部をインドへと運んだために「またしても生産台数が少なくなってしまった」と考えることも可能です。
もし9月の登録台数が8月並みであれば、この仮設が「ビンゴ」ということにもなり、需給が緩和されると思われたジムニーシエラについて、「まだまだしばらくは行き渡らない」ということになるのかもしれません。
参照:日本自動車販売協会連合会