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「スバル・エフェクト」?マツダがCX-5のマイチェンを機に「スバルっぽく」変化しつつあるようだ。アウトドア風の外観に一部シフト、さらに北米では「SUVを全車標準で4WD化」へ

2021/09/15

「スバル・エフェクト」?マツダがCX-5のマイチェンを機に「スバルっぽく」変化しつつあるようだ。アウトドア風の外観にシフト、さらに北米では「SUVを全車標準で4WD化」へ

| やはりマツダの「プレミアム」はだれも望んでおらず、スバルの「シンプルなアウトドア仕様」は多くの人が望んでいたのか |

これがマツダ再生のきっかけになることを望むばかり

さて、マツダは欧州と米国にて新型CX-5を発表していますが、これはマツダの戦略的に、そしてぼくにとっても非常に興味深いモデルです。

その理由としては「グレード間でのバリエーションが大きくなり、これまでのマツダには見られない手法を採用していて、明らかに違う動きが見られるから」。

欧州仕様としては「ニューグランド」「スポーツブラック」「GTスポーツ」が発表されており、「ニューグランド」はアウトドアっぽく、「スポーツブラック」はコントラスト強め、「GTスポーツ」はエレガントなラグジュアリースポーツといった感じ。

Mazda-CX-5 (6)

新型マツダCX-5発表!変わっていないようでけっこう変化は大きく、グレードごとの差別化が行われ、今までのマツダにはない「アウトドアっぽい」仕様も
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マツダの方向性はこう変わってきた

なお、これまでのマツダは「デザインや仕上げにシンプルな美しさを追求」するという意向を持っていたと捉えており、いわば「ピニンファリーナ型」であったとも認識しています。

より少ないラインで、より少ないパーツで、連続性のあるラインを持たせ、車体全体をひとつの彫刻のように見せるという手法を採用していて、いわば「都会的」で生活感を排除したいという意図があったように思われます。

しかし今回の「CX-5ニューグランド」では都市とは無縁の「アウトドア」っぽい意匠を取り入れており、シルバーのロックガード風パーツ、そして新色「ジルコンサンド」といったこれまでのマツダでは見られなかった仕様も。

2022-Mazda-CX-5-facelift-41

とくにボディカラーについて、マツダは「ソウルレッドクリスタルメタリック」のような無機質な輝きを持つカラーを好む傾向があり、やはり都会的な色味を揃えることが多く、「アースカラー」「ニュアンスカラー」を採用する例が(近年では)見られなかったように記憶しています。※下の画像は従来型CX-5のカラーラインアップ

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ただ、今回のCX-5「ニューグランド」ではアースカラーを採用し、オフィシャルフォトにおいても思いっきりアウトドアテイストを押し出すことに。

Mazda-CX-5 (13)

さらには「ビーチ」に加え「山」を連想させるショットも公開されています。

2022-Mazda-CX-5-facelift-44

マツダは常にスバルを意識してきた

そこでぼくが思うのが、「マツダがスバル化してきた」ということ。

マツダはかねてよりスバルをベンチマークとしており、スバルがファンを獲得する手法について研究を重ねていることが報じられています。

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なお、この(スバルをライバル視する)傾向は北米において顕著であり、「ワゴン市場では圧倒的シェアを誇り、リピート率も高いスバルの成功法則をなんとか取り込めないか」ということで北米法人の社長を久しぶりに日本人へと置き換えることに。

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そしてスバルはワゴン市場で独占といってもいい販売構成を持つほか、「また買う」と答える人がもっとも多いという信頼性の高いブランド。

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ただし現実は厳しく、スバルは好調を維持し、マツダはジリ貧に陥ってしまうわけですね。

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この「差」にはいくつかの要因があると考えていますが、端的にいうと、「スバルは人々が求めるものを作っているが、マツダが作るものはそうとは限らない」ということ。

たとえばスバルは「シンメトリー4WD」を核コンセプトとして押し出し、人気のミニバン、軽自動車を切り捨ててひたすらセダンとワゴン、SUVに特化していて、他のことには目もくれず、エレクトリック化についても自社では投資を抑えながら「必要になればほかから技術を買ってくる」というスタンスです。

そして何より「自分たちが得意とする分野で、それを求める人々のためだけに、ニッチな製品を作り続けている」ことが最大の特徴で、つまりメーカーとして一本の芯が通っており、その姿勢が人々に伝わるのだと思われます。

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ほかの自動車メーカーだとジープもこれに近く、車種で言えばスズキ・ジムニーやトヨタ・ランドクルーザーのようなものだとも考えていますが、そういった揺るぎない信念が人々の心を動かし、本来ターゲットとしている人々以外にも「刺さる」のかもしれません(やはり多くの人が”必要はなくとも”プロフェッショナルな製品に惹かれる傾向を持つ)。

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マツダの戦略においても、他社との競合を避け、自身が強みを発揮できる場所で勝負しようというところはスバルと同じですが、スバルは顕在化している需要を拾い(マーケットイン)、マツダは新たなる需要を作り出そうとしている(プロダクトアウト)ところに大きな差があり、マツダは需要の掘り起こしに苦戦しているものと考えられ、これについては、マツダのマーケティング手法が及ばないのか、そもそもマツダの思うところに潜在的な需要がなかったのかは不明ですはあるものの、ぼくとしては後者の可能性が高いと考えていて、マツダはここでいったん方針の見直しを行おうと考えたのかもしれません。

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スバルは一貫して「アウトドア」イメージを貫いてきた

なお、スバルは乗用車にはじめて「4WD」を採用したメーカーでもあり、その矜持を保つためか一貫してアウトドアテイストを維持しています。

そして最近はさらにそのイメージを強化し、「人々が待ち望んでいたであろう」、より高い悪路走破性を持つ「ウイルダーネス」ブランドを立ち上げており、さらにそのポジションを確固たるものにしようという動きが見られます。

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おそらくこのウィルダーネスブランドは高い人気を博することになるかと思いますが、現在世界中でに高まるアウトドア人気、そしてそれに付随して高まるスバルの支持率を見て、マツダは「このままではダメだ・・・」と考えたのかもしれません。

マツダの目指す路線はアウトドアとは真逆にある「都会的」なイメージであり、現代において(バブル期ならまだしも)この都会はイメージはさほど訴求力があるわけではなく、よってマツダはここで方向転換を(部分的に)図ったという可能性が高く、そこで登場したのがアースカラーを身にまとったオフロード風味の「ニューグランド」なのでしょうね(このカラーがCX-5全グレードに採用されるかどうかはわからないが、他のグレードには不似合いなようにも思う)。

2022-Mazda-CX-5-facelift-43

もちろんこれはスバルの持つアウトドアイメージを自社製品にも落とし込んだものだと思われ・・・。

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ボディカラーについても、スバルの採用する「クールグレーカーキ」や・・・。

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ブリリアント・ブロンズメタリックのような、優しい色合いを取り入れたものと思われます。

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インテリアについても、CX-5ニューグランドはライムグリーンのアクセントを持っていますが・・・。

Mazda-CX-5 (15)

これも(カラーこそ異なるものの)スバル「ウィルダネス」の手法を参考にしたのかもしれません。

マツダを動かしたのは北米のディーラー網か

これら変化を見るに、新型マツダCX-5の変更内容は小さいようでいて「実は大きい」と考えているわけですが、この方向性のシフトについては「北米のディーラー網の要望」によるものではないかと考えています。

というのも、現在北米ではスバルの人気が非常に高く、よってマツダディーラーはこれを「指を咥えて見ている」状態だと思うのですね。

さらにはトヨタRAV4はじめオフロードテイストの強いSUVが各社からどんどん出てきており、そんな中で「シティ派」を貫くマツダが苦戦を強いられるのは当然だと考えられます。

Mazda-CX-5 (12)

そして、大きな力を持つディーラー網(他の国では想像ができないが、北米ではディーラーの発言力が非常に強い)から「オフロードっぽいクルマを発売できないか」と詰め寄られて今回の変化に至ったという可能性が極めて高いと考えているわけですが、実際のところ、北米市場に限ってではあるものの、マツダは今回「CX-3、CX-30、CX-9など、すべてのクロスオーバーに4WDを標準にて搭載する」と発表しており、これもスバルを意識したひとつの戦略であると認識しています。

ただ、マツダとしても「全面的に」スバルを意識した方向性へと動くわけではなく、欧州プレミアムメーカーの発売するSUVのように「グロスプラック」を使用したコントラストの強い「スポーツブラック」や・・・。

Mazda-CX-5 (11)

マツダの考える「プレミアム」をさらに推し進めたと思われる「GTスポーツ」も投入しており、単にスバルの手法を取り入れるのではなく、これまでにない「幅広い層に」アピールできるように動いているということもわかります。

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