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知ってた。「マクラーレンがSUVを発売するかも」との報道。ぼくはスポーツカーメーカーがSUVを発売すること、そしてその意味についてこう考える

| どう考えてもマクラーレンにはSUV発売しか道が残されていない |

すでにポルシェ・カイエン、フェラーリ・プロサングエの開発を主導してきた人物をCEOとして雇用済み

さて、マクラーレンはこれまで「他社のように、金儲けのためにSUVを発売するようなことはしない」と繰り返し述べ、SUVだけは発売しないこと、そしてSUVを発売するスポーツカーメーカーを暗に批判し続けてきたものの、今回マクラーレンがついに「SUV(もしくはクロスオーバー)を発売する」との報道。

なお、SUVは現在の自動車市場における主流であり、これを持つか持たないかで大きく販売や利益が変わってくるのもまた事実。

ちょっと前だとポルシェがカイエンの発売にて大きく財務状態を改善し、それによってさらにスポーツカーの開発にお金をかけることができるようになったのは周知の事実です。

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もはやスポーツカーメーカーであってもSUVは不可欠

そして現在だとランボルギーニとアストンマーティンがSUV(それぞれウルスとDBX)を持ちますが、これらはすでに両者の販売の半分を占めるに至っており(逆の言い方をすれば、販売台数が倍になっている)、これによって今までできなかったことが可能となっています。

「できなかったこと」については、新しい顧客の獲得、増加した利益による投資といったものがあり、さらにその資金は独立性を保つためにも非常に重要です。

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そして直近だとロータスがSUV「エレトレ」を発表していますが、ロータス自身は明確に「いいスポーツカーを作るにはお金が必要で、そのためにはSUVを売るしか無い」とコメント。

そしてこれはどのメーカーにとっても偽らざる事実なのだと思われ、そして現代のスポーツカーやスーパーカーを購入する人は十分にそれを理解している、とも思われます。

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さらにイマドキ、自動車メーカーに対して「SUVを作るようではスポーツカーメーカーとは言えない」というようなことを言う人はいないものと思われ、それは時代が変わったということ、スポーツカーやスーパーカーは「少数派」であり、少ししか売れないクルマだけを作っていてはメーカーが生き残れないこと、そして何より技術の進歩によって、SUVであろうとも非常に高いパフォーマンスを持っていたり、そのメーカーならではの独自性を出すことが可能になったというこも関係していると考えています(高価格帯のブランドになればなるほど、その客層の知識や理解度も高まると考えられるので、現代だとSUVに対する許容度も高くなっているはずだ)。

SUVには「利益」意外の役割もある

なお、SUVにはもう一つ(現代ならではの)役割があって、それは「そのメーカーのCO2排出量を引き下げることができる可能性がある」ということ。

御存知の通り、世界のいくつかの有力市場では「自動車メーカーごとにCO2排出量の規制」が敷かれ、これを超えるとトンデモナイ罰金を払う必要が出てきます。

たとえばですが、欧州において、現在はおおよそ各自動車メーカーにつき、新車1台あたりの平均CO2排出量は95g以内にすべしと設定されていて(メーカーによって上下幅はある)、たとえばポルシェだと、もっともベーシックな911カレラで206gを排出し、基準値である95gを倍以上も超えることに。

よって、仮にポルシェが911しかラインアップを持たなければ、1台売るごとに111gぶんの罰金を支払う必要が出てきます。

しかしながら、ここにカイエンEハイブリッドを加えると、これのCO2排出量は58gなので、仮に911カレラとカイエンEハイブリッドが1:1で売れたならば、平均排出量は76.5gになるため「罰金を支払わなくてもよく」なるわけですね。

「じゃあ911カレラをハイブリッド化して売ればいいじゃない」という意見も聞こえてきそうですが、スポーツカーはもともと軽量に作られているので、ハイブリッド化すると重量が重くなり、加速、最高速、ブレーキング、ハンドリングといった「スポーツカーに重要な要素すべてに」影響を及ぼします。

そうなった911は「もはや911ではなく」誰も買わないのは目に見えていて、そもそもそういった911をスポーツカーと呼べるかどうかも疑問かもしれません。

であれば、911はピュアなスポーツカーとして作り続け(しかしいつかは電動化せねばならない)、しかし一方で911のCO2排出量を相殺する手段としてSUVを発売する、というのはポルシェのアイデンテティを保つ手段としても非常に有効だとも考えています。

なお、ここでSUVである必要性を論じるならば、SUVはもともと車重が重く、よって「ハイブリッドシステムの搭載によって重量が200kg増えたとしても」車体重量1500kgの911より、2300kgのカイエンのほうが”その比率が小さく”、運動性能に与える影響も小さく抑えることができ、加えてもともとSUVは”そこまでシビアに運動性能を追求したクルマではない”ということを考慮せねばなりません。

よって、スポーツカーメーカーにとって、SUVを「いま」作るということは、資金を獲得するということ以外にも、メーカー全体としてのCO2排出規制を下げて社会的な責務を果たすとともに、罰金を回避するという意味でもその重要性が非常に高く、むしろ「いや、ウチはスポーツカーしか作らないんで・・・」という姿勢を貫くほうが「経営(株主)のことを考えていない」「反社会的である」というレッテルを貼られることにもなりそうです。

マクラーレンがSUVと作ることは「正解」でもある

たいへん前置きが長くなってしまったものの、ここからが本題のマクラーレンのSUVについて。

まず、マクラーレンはCO2排出量の引き下げを目的としたハイブリッドスポーツ「アルトゥーラ」を発表していますが、これはV6ツインターボ+ハイブリッドシステム搭載にて合計680馬力を発生させるスーパーカー。

なお車体重量は1395kg、このうちハイブリッドコンポーネントが占めるのは130kgだとされ、加速性能は0-100km/h加速3.0秒、0-200km/h加速8.3秒最高速度は330km/h(リミッター制御)というスペックを誇ります。

このスペックはマクラーレン720Sに比較しても見劣りするもので、しかし「2965万円」という価格を考えるとかなり頑張ったとも考えています。

マクラーレン・アルトゥーラを見てきた!この時点でここまで完成されたハイブリッドスポーツを出されると、他メーカーはさぞやりづらいだろうな・・・。

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ただ、アルトゥーラのCO2排出量は129gなので、これでも一般的な規制値である95gには程遠いということになり、重量を130kgも増やしてハイブリッド化した割には、スーパーカーに求められる本来のパフォーマンスが向上しておらず、しかもCO2排出量もまだまだ罰金回避には届かず、正直言うと「ちょっとハンパ」な印象も。

反面、フェラーリSF90ストラダーレは同じハイブリッドスポーツであっても「1000馬力、0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速6.7秒、最高速340km/h」というこれまでのフェラーリを超えるパフォーマンスを実現しており(価格もそのぶん高価ですが)、ハイブリッド化によって増えた重量を回収してあまりあるほどの性能を実現していて、ハイブリッド化を正当化したスポーツカーだとも考えられます(296GTBも同じだと考えている)。※フェラーリSF90ストラダーレのCO2排出量は190g

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そのため、極言すれば、マクラーレンは「ハイブリッドをシステムを、運動性能向上のためではなく、環境性能向上のために使用した(日和った)」ということになり、ぼくとしては「そういったことをするくらいであれば、いっそハイブリッドSUVを作り、そちらでCO2排出量低減を狙いつつ、スーパースポーツセグメントではもっと割り切ることで性能向上を追求したほうが良かったんじゃないか」と思ったり。

ある意味、マクラーレンは「スポーツカー」にこだわるがために他のセグメントのクルマを作らず、しかし環境規制への対応のためにハンパなスポーツカーを作ってしまい(スポーツカーにすべてを求めた)、それではマクラーレンがせっかくスポーツカーにこだわった意味が失われてしまったんじゃないかという印象も。

であれば潔く「スポーツカーをスポーツカーらしくするためにSUVを作る」と宣言したほうが世間の理解度も高くなるものと思われ、今回の報道を見るに、実際にマクラーレンも「そう」判断したのかもしれません。

最近のマクラーレンはちょっと違った動きを見せていた

実際のところ、ここ最近のマクラーレンは少し変わった動きを見せていて、ひとつはエレクトリックオフローダーを使用した「エクストリームE」への参戦。

オフロードレースに参戦するというのはマクラーレンにとって異例のことではありますが、それでも「レース」というところにマクラーレンのDNAを結びつけ、これはオフローダー発売のための布石なのだろうと考えています。

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そしてもう一つは、長年マクラーレンのCEOを努めてきたマイク・フルーイット氏が突如退任したこと。

同氏こそがずっと「SUVは作らない」と主張してきた張本人ではありますが、その結果として本社を失うという事態にまで発展しているので、その責任を取らされた可能性が大きそう。

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さらにそれに続く異変としては、新CEOとしてマイケル・ライターズ氏を迎え入れたこと。

こう聞いてもピンと来ないかとは思いますが、マイケル・ライターズ氏はポルシェにて「ポルシェ初のSUVであるカイエン」を開発し世に送り出した人物であり、さらにフェラーリ在籍時には「フェラーリ初のSUVであるプロサングエの開発を主導してきた」その人です。

となると、これまでの「点と点」が「線」となってつながってくるようにも思われ、マクラーレンはこれまでの体制を一新してSUVの開発に向かい、そしてそれを正当化するため(あわせて実践からそのノウハウを学ぶため)にもエクストリームEへと参戦するのだろう、ということが推測できます。

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マクラーレンのSUVはどんなクルマに?

そこで気になるのがマクラーレンが発売するかもしれない新型SUV。

これは2020年代後半に発売すると言われており、ピュアエレクトリックパワートレーンを採用し、ガソリンエンジンを搭載するバリエーションは存在しない、とも。

モーターの数は2つもしくは3つ、駆動方式はもちろんAWDだと見られ、その価格はおそらく5500万円くらいのになるでは、と報じられています。

この「ピュアエレクトリック」ということについて、もちろんCO2総排出量の引き下げの助けとなることを期待しているのだと思われますが、エクストリームEとの関連性を示し、かつ「これまでのマクラーレンのラインアップとは異なる存在である」ということを示すことで、既存のイメージへの影響を最小限にとどめたいのかもしれません。

現時点ではその出力や航続距離、もちろんパフォーマンスについても謎ではありますが、マクラーレンの未来を示すクルマになるであろうこと、そしてエレクトリック化とSUV発売の正当性を顧客に納得させる必要があることを考えると、1000馬力を確実に超え、0-100km/h加速も2秒台(前半?)になるんじゃないかと推測しており、つまりこれによって「エレクトリック化こそ正義であり、これだけのパフォーマンスを持つクルマによって、SUVやスポーツカーという概念や垣根を吹き飛ばす」ことがマクラーレンの狙いなのかもしれません。

参照: Autocar

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