この時代のクルマの維持や整備にかかる手間を考えると、オーナーには頭が下がる
さて、京都にて開催されたクラシックカーイベント「コンコルソ・デレガンツァ京都2019」。
様々なクルマが展示されていますが、今回は1930-1950年代という「もっとも古い」部類のクルマを見てみましょう。
Alfa Romeo 6C 1750 Zagato(1930)
まずはこのAlfa Romeo 6C 1750 Zagato(1930)。
名称の通りアルファロメオ6C 1750がベースとなりますが、この「ザガートバージョン」の情報はあまりに少なく、ベースモデルの6C 1750について簡単に述べてみたいと思います。
6C 1750は非常に性能の高いクルマとして知られ、1930年のミッレ・ミリアで市場初めて平均時速100キロを突破し優勝を飾っています。
なお、その際のドライバーはあのタツィオ・ヌヴォラーリ。
全長は4070ミリ、全幅1625ミリ、全高1330ミリ、車体重量は942キロ。
エンジンは直6DOHC/1750ccにスーパーチャージャーをドッキングさせ85馬力を発生した、とされています。
こんなに昔からスーパーチャージャーが存在した、というのは驚きでもありますね。
この6C 1750にザガートがどのように手を入れたのかはわかりませんが、両者を見比べてみると、グリルやサイド、リアフェンダー上に見られるシルバーの加飾が主な相違点のように見えます。
Alfa Romeo 6C 1750 GS Zagato(1931)
そしてアルファロメオ6C 1750 GS ザガート。
こちらについてもベース車であるアルファロメオ6C 1750GSの説明にはなりますが、「GS」はグランスポルトを意味し、その名の通りエンジンは102馬力へとパワーアップ。
戦績としては英国ツーリスト・トロフィー(やはりタツィオ・ヌヴォラーリのドライブ)、スパ・フランコルシャン24時間でも優勝したという記録が残っています。
なお重量は942キロから820キロに軽量化されていて、6C 1750に比較してかなり戦闘力が高くなっていることが想像できます。
なお、アルファロメオの公式サイトには過去のモデルを紹介するコンテンツがあり、これによると6C 1750GSのボディデザイン/製作が「ザガート」だと記載があって、つまりはもともとの6C 1750GSをザガートがカスタムしたというよりは、6C 1750GSそのものがザガートの製作ということになるのかもしれません。
今でこそザガートはカスタムビルダーという印象があるものの、当時は車体とボディを別々のメーカー(もしくは工房)が制作するのが通例であり、6C 1750GSは基本的にザガートのボディを身にまとうと考えたほうが自然なのでしょうね。※カロッツェリア・ツーリング(トゥーリング)製も存在する模様
Alfa Romeo 6C 2500 S(1942)
そして1939年に登場したのがアルファロメオ6C 2500S(スポルト)。
この上の二台の6Cもそうですが、現代の基準に照らし合わせてもかなり大きいと思えるクルマであり、とくに6C 1750はタイヤの直径がかなり大きい、と感じます。
なお、6C 2500はトゥーリズモ、スポルト、スーペル・スポルト、スーペル・スポルト・コルサといった派生モデルが存在し、様々なバリエーションがあるようです。
Cisitalia 202 Spyder Nuvolari Mille Miglia(1947)
これは相当な希少車に属すると思いますが、Cisitaliaは1946年にPiero Dusioによって設立されたイタリアの自動車メーカー。
その名に「Nuvolari」とあるとおり、実際に1947年にタツィオ・ヌヴォラーリのドライブにてミッレ・ミリアに参戦したという記録が残っており、当時の生産台数はわずか28台。
2013年におよそ4000万円ほどで落札されたという記録が残っています。
この個体は空力を考えて助手席上にカバーが装着されていますね。
Alfa Romeo 6C 2500 Sport Freccia d'Oro(1950)
そしてもう一台の6C 2500Sですが、こちらは「Freccia d'Oro」、つまり「黄金の矢」という名を持っています。
製造は1946-1952、生産台数は680台。
ボディ全体に「CARRERA PANAMERICANA」のレターが入り、これはメキシコで行われていた公道レース、カレラ・パナメリカーナ・メヒコを指すことになりますが、ポルシェ(550/155RSスパイダー)やメルセデス・ベンツ(300SL)も活躍しており、ポルシェ911”カレラ”、ポルシェ”パナメーラ”、そしてメルセデスAMGの上位モデルが採用する”パナメリカーナ・グリル”もここから。
FIAT 8 V Zagato(1952)
そしてフィアット8 V ザガート。
これは相当にオシャレな個体で、来場者からも大人気。
ボディはブルーとブラックとのツートンカラー、そして内装もブラックとブルー。
フィアット8Vは1952-1954年に生産されていますが、もともと「V8」という名称とするところを(実際にV8エンジンを搭載している)、フォードが「V8」を商標登録していたという理由で「8V」に。
なお、このフィアット8Vにはフィアットによる通常版、カロッツェリア・ギアの製造による「スーパーソニック」といったモデルも存在し、「もっとも高価なフィアット」としても知られます。
ザガート版8Vはフィアットやギア版に比較すると「ザガートらしく」空力を追求した丸みを帯びたボディへと改められ、その後のザガートにも通じる「広いグラスエリア」が与えられることに(ルーフはダブルバブルではない)。
こうやって時代別にクルマを見てみると、メーカーの差こそあれ、1930~1940年代辺りまではクルマのサイズ、タイヤも「かなりデカい」のに、1960年台になると一気にサイズが小さくなるのが非常に不思議です。