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乗り遅れるな!これからの高級腕時計は「メタルブレス」。オーデマピゲ、パテックの牙城へとウブロ等が相次ぎ参戦

2020/10/06

| ただし単なるメタルブレスではなく、ケースと一体化したデザインと構造が必要 |

さて、ここ最近の腕時計を見ていて感じるのが、「メタルブレスレット」を前面に押し出した腕時計が増えてきたな、ということ。

正確にいうならば、メタルブレスレットを用いた腕時計自体は以前から存在したものの、最近のメタルブレスウォッチは「ケースと一体化したデザインを持つモデルが多い」ということですね。

たとえば最近発表されたものだと「ウブロ ビッグ・バン インテグラル チタニウム」があり、これはラバーブレスの採用で業界に衝撃を与えたウブロとしてはかなり珍しい仕様です。

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ウブロの他にもこんなメタルブレスウォッチが

そしてウブロのほかにも「ケース一体型メタルブレスウォッチ」を発売したメーカーも多く、ベル&ロスは「BR05」を発表。

同ブランドはこれまで「(ベルト交換を前提に)ケースはケース、ベルトはベルト」といった感じでデザインを分けており、そのためこのBR05は「らしくない」、しかし新しい時代に対応するコレクションということになりそうです。

そしてカルティエも「サントス」をリニューアルさせ、いっそうケースとベルトとの一体感が増しています。

なお、カルティエは以前より「パンテール」「パシャ」「スピードスター」など、ケースとブレスレットとの一体感を重視したシリーズを多く発売しており、このあたりは「さすがジュエラー」といったところですね。

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ジュエラーというところではブルガリも同様で、「オクト」シリーズではケース、そしてブレスレットとの一体感を演出。

レディースでは以前より「セルペンティ」など、ケースとブレスレットとが融合したデザインを多く展開しています。

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このほか、ショパール、H.モーザー、A.ランゲ&ゾーネ、ブライトリング、ジラール・ペルゴ、チューダーも「ケース一体型デザイン」を持つ腕時計を発表していますね。

雲上ブランドは以前から「ケース一体型メタルブレスレット」を採用

そしていわゆる雲上ブランドも以前よりケース一体型メタルブレスレットを採用していて、こちらはもはや説明不要の「パテックフィリップノーチラス」。

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やはりメタルブレスといえばこれ、という感じのオーデマピゲ ロイヤルオーク。

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ロイヤルオークの場合はコマとコマとをつなぐ「リンク」も独特のデザインを持っており、これによって「どの角度から見ても、オーデマピゲ」という視覚的印象を作り出していると考えて良さそう。

なお、スポーティーな「ロイヤルオーク・オフショア・クロノグラフ」よりも、ベーシックな3針を持つメタルブレスの「ロイヤルオーク」のほうが人気が高く、この傾向を見るに、腕時計のトレンドは「スポーツ」から「ラグジュアリースポーツ」、そして「ビジネスにも使用できるラグジュアリースポーツ」へと移行しつつあるのかもしれません。

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今までのメタルブレスウォッチはこんな感じ

ケース一体型メタルブレスレットの定義を、”そのブレスレットを一般的なものへと交換した場合、デザイン的、構造的に腕時計として破綻をきたすもの”と考えた場合ではありますが、ケース一体型メタルブレスレットではない、「これまで」のメタルブレスレットを持つ腕時計の代表格がオメガ・スピードマスター。

仕上げはケースと統一されているものの、やはり「ケースはケース、ブレスレットはブレスレット」という隔たりが感じられます(腕時計メゾンならではの矜持のあらわれであり、ケースとムーブメントを重要視し、ブレスレットに対するプライオリティが低いのかも)。

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IWCアクアタイマーも同様ですね。

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パネライも同様。

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ロレックスもやはり同じだと思います。

なぜこういった傾向が加速?

こうやってざっと各ブランドの腕時計を見てみると、「ジュエラーや超高級ブランドは以前からケース一体型メタルブレスレットを採用している」ということがわかり、実用腕時計的色合いが強いブランドは「ケースとブレスレットとの一体感が薄い(ルミノックスも同様で、用途に応じてベルトを使い分けるから?)」ということもわかります。

ただ、上述の通り、様々な腕時計ブランドが「ケース一体型メタルブレスレット」に参入していて、これは「腕時計メゾンが、実用面よりもラグジュアリー面を強調し始めた」ということなのかもしれません。

これまでだと「機能が優れていればいい腕時計」だと評価されていたものの、現代では(腕時計の機能は携帯電話に取って代わられているということもあって)腕時計に占める「機能」の重要度が低くなり、ブランド性(排他性とも言える)やデザイン性の重要度が上がっているのでは、と考えています。

つまり、顧客は「性能の良い腕時計」を求めているのではなく、「ファッションやアクセサリーとして優れる」腕時計を求めていて、それは「機能に優れるが、見た目がほかの腕時計と区別がつかない」腕時計ではなく「ほかのブランドと、明確に差異のある見た目を持つ腕時計」なのだと思われます。

そう考えると、これからのオメガ、パネライ、IWCは「ケース一体型メタルブレスレット」を持つ新作を投入してくる可能性もありそうですね。

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腕時計意外の例だと、かつては「馬」が移動や交通のための一般的手段であったものの、列車や自動車が発達するにあたって馬は徐々にその役割を失ってゆき、現代においては「乗馬」という一部の人のみがたしなむラグジュアリースポーツへと変化しています。

よって、腕時計業界にも同様に「従来の腕時計からのパラダイムシフト」が起きていると考えられ、腕時計メゾンとしてもそれにキャッチアップしないわけにはゆかないのかもしれません(でないと、使役馬や馬車のように絶滅することになる)。

今後はカジュアルウォッチにもこの波が拡がる?

高級腕時計において広がったムーブメントが「カジュアルウォッチ」へと波及するのが世の中の常。

よって、カジュアルウォッチ、ファッションウォッチにもこの傾向が拡がるのかということについて考えてみたいと思いますが、ぼくとしては「ないだろうな」と考えています。

その理由としては単純に、得られるリターンが「コストに見合わないから」。

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ケースとベルトとを別々にデザインするメリットとしては、様々なバリエーションを展開することで、より多くの嗜好(顧客)に対応し、販売を最大化して利益率を高めるというものがあり、たとえばチューダー(ブラックベイ)やハミルトン(カーキ)、アップルウォッチに顕著な例だと考えています。

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ただ、「ケースとブレスレットとを一緒にデザインする」となると(ロイヤルオークやノーチラスのように)バリエーションが制限され、たとえばその腕時計全体のデザインを気に入ってもらえなければ「売れない」ということに。

反面、ハミルトン・カーキのように多数のバリエーションを揃えておけば「売れるモデルに生産をシフト」などの調整も効き、シーズンごとに文字盤やベルトを変更することで新鮮さを出せる、というメリットも。

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加えて、ケース一体型メタルブレスレットをデザイン/設計/製造するには高いレベルの技術が必要であり、簡単にこれを実現することはできず、カジュアルウォッチメーカー/ファッションウォッチメーカーがこれを真似ようと考えても、一朝一夕にできるものではない、とも考えています(ケースとベルトとのフィッティングが重要で、ここにギャップがあればむしろ全体の質感を落としてしまう)。

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よって、「ケース一体型メタルブレスレット」を採用できる例は、「そのブランドの価値が非常に高く、デザインよりもブランド価値で腕時計が売れる」「設計や製造技術のレベルが高い」「一つのモデルを長く作り続ける」「そもそも排他的デザインを持っている、もしくは確立できる見込みがある」場合のみだと考えていて、となるとカジュアルウォッチメーカーはこれらには該当せず、ケース一体型メタルブレスレットを作ることができない、ということに。

これは同時に、結果として「ケース一体型メタルブレスレットは高級腕時計メーカーにしかできない」デザイン・構造だということになり、自ずとここがそれぞれのブランドにとっての差別化になるということなのかもしれません。

それらを考慮すると、「他ブランドとの差別化」という観点からも、「どこでもできる」レザーブレス、NATOベルト、汎用性の高いメタルブレスを排除し、自社にしか無い、そしてその腕時計のケースと融合したデザインと構造を持つメタルブレスの開発こそが、腕時計メゾンにとって急務とされる課題だとも考えられます。

参照:Hublot, PATEK PHILIPPE, Audemars Piguet, Bell&Ross, BVLGARI, IWC, OMEGA, PANERAI, ROLEX,

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