ミニ・クラブマン(F54)に試乗。
試乗車はクーパー、136馬力、幅1800ミリ、長さ4270ミリ、高さ1470ミリ、価格は344万円(あと7万円でメルセデス・ベンツCLAが買える!)。
幅が1800ミリに達しており、これはけっこう大きな車と言えますね(ポルシェ・ボクスターと同じくらい)。
価格も3ドアハッチのクーパー(280万)とは大きく乖離があり、これはもはや派生車種というよりは別の車と捉えた方が良さそうです。
外観をざっと見てみると3ドアハッチ、5ドアハッチ(F56)とは細部が異なり、バンパーやフェンダーに明確なプレスラインが入ったり、より面構成が複雑になるほか、フロントフェンダー後部にはフロントフェンダーとシンクロしたデザインの加飾も。
こういったデザイン的差異、サイズを考慮するとハッチバックとの価格的差異も納得できるように感じますね(ぼくとしてはハッチバックのフロントスポイラーにある”アゴ”が気になるのですが、クラブマンにはこれがない)。
なお内装だとミニ初の電気式パーキングブレーキを備えるなど、やはりハッチバックとは差別化が図られます。
前から見るとやはり幅が広いという印象ですが、正直言うとハッチバックよりもこちらのほうがバランスが取れているようにも感じますね。
ハッチバックはサイズを切り詰めた反面、大柄なドイツ人にも対応するためにルーフが高くなっており、クラブマンを見た後ではそれが「ちょっとバランスが悪い」と感じるのも不思議なところ(ハッチバックだけを見るとそうは感じないのもデザインの妙)。
内装はハッチバックと大きな差異はなく、ただしちょっと高級感があるようにも感じます。
そして大きな差異は上述のように電動式パーキングブレーキ。
ミニのパーキングブレーキレバーはけっこう大きく、小さな車内でけっこう目立っていたので、これはかなり嬉しいポイントですね。
早速乗り込みますが、ドアの閉まる音が重厚なのはハッチバック同様。
室内のインターフェースもほぼ同じなので迷うことなくエンジンを始動し、ギアをDレンジに入れてスタートします。
すぐに感じるのはボディ剛性の高さで、段差を超えてもしっかりとサスペンションが動くのがわかります。
なお内装のたてつけも良く、試乗を通して内装の軋み音は聞こえてこず、このあたり先代に比べても大きく進歩していますね。
次いで感じるのは「意外とパワーがある」ということで、1400キロを超える重量に大人二人が乗り、しかし136馬力というのは不足があるだろうと考えていたのですが、それは良い意味で裏切られます。
加速しての追い越しや上り坂での加速、スタートダッシュ、いずれをとっても十分なレベルですね。
購入するのであれば絶対にクーパーSと考えていたのですが、正直これはクーパーで十分じゃないかと思えます(クーパーSは価格が高いのでなおさら)。
ワイドトレッド化、ロングホイールベース化の恩恵は絶大で、これはコーナリング時や高速走行時に大きな差となって現れるようです。
特にコーナリング時のロールの小ささは特筆もので、大きくなってもゴーカートフィーリングは健在(ハッチバックよりもキレが良いかもしれない)。
乗り味はこのサイズや価格をはるかに超えるもので、これはハッチバック(F56)試乗のときにも驚きましたが、ミニ・クラブマンにおいてもよくこのサイズでこの乗り心地や安定性を実現できるものだと驚かされることに。
「ミニ」として考えると高価ですが、同価格帯のアウディ、メルセデス・ベンツと比べると明らかに優位性があると断言できます(ブランドバリュー・装備を考えるとアウディ、メルセデス・ベンツに軍配があがるが、リセールを考えるとミニ・クラブマンのほうがオススメと言える)。
なおクラブマン・クーパーSの価格は384万円。
クーパー・クラブマンとの価格差は40万円ですが、ヘッドライトをLEDにしたり、とクーパーSの装備に近づけるとその価格差が縮小。
ただしクーパーSクラブマンだとオプションを幾つかつけると購入価格が500万円ほどになるので、これはちょっと高いような気もします。
であれば価格の低いクーパー・クラブマンにしてレザーシートを選び内装を豪華にして精神的ゆとりを楽しむという乗りかたもアリかもしれず、動力性能にこだわらずに予算を抑えて購入、というのも良いかもしれません。
総合して考えると、今回のミニ・クラブマンは「ちょっと無理してでもハッチバックよりこちらを選ぶか」と思わせる魅力を持っており、そして「クーパーSこそが最良」というヒエラルキーにとらわれない楽しみかたができる車と言えます。
予算があればもちろんクーパーSクラブマンですが、もしハッチバックの購入しかもクーパーSの購入を考えているのであれば、ちょっとだけ足してクーパー・クラブマンという選択肢も十分あり。
最後に見積もりを取得しましたが、とりあえずクーパーSクラブマンにてオプションはメタリックカラー、ペッパーパッケージ、プライバラシーガラス、ブラックホイール(インチアップなし)、前後ソナー+バックカメラ。
これでだいたい諸経費込みで580万円くらいですね。
なおボディカラーは迷うところで、ブラックも良いですがクラブマンの複雑なボディカラーが一番よく表現されるのはメルティング・シルバー・メタリックのように思います。
これまでの試乗レポートは下記のとおり。
最新の試乗レポートはこちらにあります。