F8トリブートはV8ミドシップの「エントリー」でありコストをかけたくなかった
フェラーリはジュネーブ・モーターショーにおいて新型車「F8トリブート」を発表していますが、これはなぜか「488GTBの延長線上にある設計」を持つクルマ。
ここ最近のフェラーリは「およそ2世代ごとにプラットフォームをリニューアル」してきたものの、F8トリブートでは「458イタリア」「488GTB」に使用されてきたプラットフォームを採用しており、そこが多くの人々に撮っての疑問であったわけですが、今回フェラーリの技術部門のトップ、マイケル・レイタース氏がRoad and Trackへのインタビューに答え、その疑問に対していくつかの回答を行っています。
フェラーリF8トリブートはこんなクルマ
まず、ここでフェラーリF8トリブートをざっとおさらい。
そのトピックは下記のとおりです。
- エンジンは488GTBプラス50馬力、488ピスタと同じ720馬力
- 0−100キロ加速は488GTBから0.1秒速くなって2.9秒(488ピスタは2.85秒)
- 車体重量は488GTBマイナス40キロの1330キロ(488ピスタは1280キロ)
- 最高速は488GTBプラス10km/hの340km/h(488ピスタと同じ)
- リアウインドウはV8エンジン搭載のF40をイメージ
- テールランプ周辺は過去のV8モデル、たとえば308GTBをイメージ
これに加えて、F1やGT選手権などフェラーリのモータースポーツ活動で得られた技術などを盛り込んだ最新デバイスが与えられ、つまりは過去におけるフェラーリV8モデルへのオマージュそして集大成が「F8トリブート」であるとも言えますね。
なぜF8トリブートはプラットフォームを変えなかったのか
そこでマイケル・レイタース氏のコメントですが、「F8トリブートは日常性を重視し、まずはハイブリッド化よりも488GTBを磨き上げることを選んだ」。
そして「F8トリブートは488GTBと488ピスタとの間に位置するクルマ」だとも語っていますが、これはかなりオブラートに包んだ言い方でもあり、逆に多くのことを示唆しているように思います。
フェラーリCEO、ルイス・カルミエリ氏はつい最近、数ヶ月内に「ハイブリッド化されたニューモデル」を発表すると明言していますが、こちらは一転して「完全新設計プラットフォーム」に加え「パフォーマンス追求型」だと言われており、ハイブリッドというイメージとは裏腹に、究極のドライバビリティを備える、と言われます(もちろんフェラーリのハイブリッドは燃費のためではなく、KERS同様にパフォーマンス向上のために設計されたものなので当然ではありますが)。
そしてこの「新型ハイブリッドモデル」はV6エンジンを搭載すると言われ、しかし価格はF8トリブートよりも上になる模様(よって、F8トリブートは新設計ではなく既存プラットフォームを使用することでその価格を抑えたかった)。
加えてフェラーリは「ミドシップスポーツカーは2つのラインアップを持つようになる」とも発言しているので、V8ミドシップ(F8トリブート)、V6+ハイブリッドミドシップ(新型)という構成になりそう。
そしてこれまでの発言からするに、V8のほうは過去モデルへのオマージュ的デザインを持たせた「日常性も考慮(しかしGTカーではなくピュアスポーツ)したスポーツカー」、V6ハイブリッドの方は「サーキットに特化した妥協なきスポーツカー」といった構成を持つことになりそうですね。
以前にフェラーリ専門掲示板「Ferrarichat」に、内部関係者を名乗る人物から「フェラーリは488GTBの上に位置するハードコアモデルを開発している」という書き込みがありましたが、それも「ここ最近のフェラーリの動き、そして発言」を見るに納得性の高いもので、今になってようやく全容が見えてきた、という感じでもあります。
「V6」というと、アストンマーティンが今後「ミドシップ+V6」でスーパースポーツセグメントへと乗り込むことになりますが、これはフェラーリと真っ向から対決することになりそう。
一方でランボルギーニは「自然吸気V10」という他にないエンジンをもってその存在感を示すことになるかと思われ、そしてマクラーレンはどう出るか、というのも今後の見どころ。
つまりはここ2−3年でスーパースポーツセグメントは大きく変わる可能性があり、5年後くらいには「スーパースポーツは小排気量エンジン+ハイブリッドが当たり前」になっているのかもしれません。
Source: Road & Track