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アカデミー賞4部門ノミネート!映画「フォードVSフェラーリ」を観てきた。お金で買えない”挑む心、情熱”がいかに大切かがわかる一本

2020/01/14

| 近年まれに見るシンプルで気持ちのいい映画 |

さて、日本でもついに封切りとなった「フォードVSフェラーリ」。
昨日発表された第92回アカデミー賞各賞候補では4部門にノミネートされています(最多は”ジョーカー”の11部門)。
主演はマット・デイモンそしてクリスチャン・ベイル、監督はジェームズ・マンゴールド。

正直、この「1966年のル・マン」が映画化されると聞いても「なんでそんなマニアックな話を・・・クラシックカーレース好きしか観にゆかないだろう」と思ったのもの、出演者に「一般受けする俳優陣」を揃えてメジャー受けを狙ってきたわけですね。※フォードVSフェラーリ公式サイトはこちら

映画自体は誰にでも興味が持てる内容に

そして実際にこの映画を観た印象ですが、「レース」そのものよりは「レースに挑戦する」という過程に焦点を当てたもので、クルマが主役でも、レーシングカー同氏のバトルがメインでもなく、あくまでも「人が中心」。

そういった意味では幅広い人々に興味が持てる、そして共感が持てる内容に仕上がっていて、「作品賞へのノミネート」も頷けるものとなっています。

なお、大筋としては「欧州には力で及ばないアメリカ人(や製品)が、欧州に挑み、それに勝利する」というもので、この構図は、歴史が新しいアメリカという国、そしてアメリカ建国の経緯を考えると「アメリカ人に好まれる」内容。
同様のストーリーとしては「シービスケット(2003)」が挙げられ、なんらかの問題、欠陥をかかえる人々が、自身の能力だけを頼りに、”より強く、より強力な”相手に立ち向かう姿を感動的に描く姿はぼくら日本人にとっても共感を誘うのは間違いない、と思います。

フォードとフェラーリにはこういった経緯があった

ストーリーについて簡単に触れておくと、「1960年代に、フォードはより客層を広げるためにスポーツカーの販売を計画したが、それには”モータースポーツでの栄光”が必要だと考え、当時経営難にあったフェラーリを買収し、これを利用してモータースポーツでの活躍を通じてブランドイメージを向上させようとした」ことがその背景にあります。

実際のところ、この買収話はうまく進み、あとは調印するだけというところで(フェラーリ創業者である)エンツォフェラーリが契約を破棄し、そこで怒ったフォードが「フェラーリをぶっ潰してやる」ということになり、その財力をもって「金に糸目をつけず」フェラーリをル・マン24時間レースで倒そうとする、という話。

ただ、今ではにわかに信じられないことですが、劇中のセリフにあるとおり、当時のフォードが「フェラーリを超える車を作る」には「200年か300年かかっても無理」というほど両者の性能には乖離があり、そこを埋めるというのがこの映画の見どころとなっています。

なお、フェラーリはこの映画ではあまり良く描かれておらず、「よくフェラーリが映画化と上映を許可したな」と思う場面もあり、相当な調整も必要だったんだろうな、とも感じさせられます。

そして重要なのは、よくある「勝つために手段を選ばない」「卑怯な」「人倫にもとる」ような人物やドライバーが登場しないということで、誰もが勝利のために真摯に向き合っている、ということ(人を貶めることで上に立とうとするのではなく、純粋に勝利を目指しているということ。一部”会社人間”は登場しますが)。

ル・マン24時間レースは特別

世の中には様々なレースがあるものの、ル・マン24時間レースだけは「特別」と見る人々が多く、それは「すべての努力がたった1日で試されるから」。
F1やNASCAR、WRCのように「転戦」するわけではなく、走るのはたった一回。
よって、その一回でマシンが壊れたりクラッシュしたりするとすべてがパーということになるわけですね(シリーズ戦だと、まだどこかでリカバリーできるチャンスがある)。

よって、クルマの耐久性や信頼性、ドライバーの精神力や技術、チームの団結など「すべて」が高いレベルで揃わないと勝てないのがル・マン24時間というレース。

一般的な傾向として、欧州では「スプリント」ではなく、こういった総合力が試される「耐久レース」での勝利が重視される傾向にあり、ここは「短距離走」が好まれるアメリカや日本と大きく異るところかもしれません(最後に立っている者が勝利する、的な)。

なお、クルマが高度に完成され分業化が進んだ現代とは異なり、以前は「クルマの扱い方をよく知っている、いい開発者こそがいいドライバーであった」ということもこの映画から見て取ることができます。

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