ホンダのVTECエンジン搭載車にて、「バックでも高回転側のカムに入れることができるか?」というチャレンジ動画。
なお動画内では「VTECの機構」について解説をしており、ぼくとしてはそちらのほうが気になったので、ここでVTECに触れてみたいと思います。
VTECは「Variable valve Timing and lift Electronic Control system」の略で、ご存知ホンダの有する可変バルブタイミング機構。
エンジンには「バルブ」というパーツがあり、これは開閉することでシリンダー内に空気を取り入れたり排出したりする役割を果たしますが、一般に低回転では「小さく開閉」、高回転では「大きく開閉(いっぱい空気が吸えていっぱい出てゆく)」するのが好ましいとされています。
そしてこの「バルブ」の開閉=リフト量は「カム」というパーツによってコントロールされ、この「カム」の高さによってバルブの開閉量が異なります(よく聞く”ハイカム”だとバルブのリフト量が大きくなり、高回転域での性能が向上する)。
要は低回転と高回転では相反する要求がなされるということですが、高回転重視で「ハイカム(バルブの開閉=リフトが大きくなる)」にすると低回転ではトルクがスカスカになったりというデメリットが生じ、市販車ではなかなか「ハイカム化(高回転域での高性能化)」が難しかったわけですね。
しかしVTECではこの「バルブの開閉(とそれをコントロールする”カム”)」を低回転時と高回転時とで切り替えることが可能で、「低回転時のトルク」と「高回転時の出力向上」とを両立できるのが大きなメリット。
それまでは「ハイカム」というと競技用の車や、チューニングカーに「低速を犠牲にして」組み込まれるものででしたが、VTECでは「低速では普通に乗れて、高回転まで回すとチューニングカーのような」特性を発揮する、ということですね。
バルブタイミングとリフト量を同時にコントロールするのはVTECが市販エンジン「初」で、1989年にインテグラに初搭載(この年は初代ロードスターやセルシオが誕生したり、日産がR32GT-Rとアテーサ4WDを発表したり、といろいろあった年だった)。
同様の考え方(可変バルブ)を持つ機構として、トヨタではVVT-i、スバルはAVCS、三菱はMIVEC、日産ではNEO VVLといった機構を採用しており、欧州車ではBMWのVANOS、ポルシェのバリオカムなどが存在します(各社とも特許回避のために構造や動きは当然異なる)。
一般には5000~6000回転から「高回転型カム」に切り替わる設定が多くなっていますが、「理論上」はバックでもそこまで回せばカムが切り替わる、ということにはなりますね。
↓こちらがその動画「Can You Hit VTEC In Reverse?」。
VTECのカムの動きをアニメーションで見ることができます。