| ポルシェ718ケイマンSに乗ってきた |
さて、ポルシェ718ケイマンSに試乗(画像は展示車の”S”がついていないケイマン)。
718世代のポルシェとしては以前に718ボクスターに試乗していますが、718ケイマン、そして718モデルの「S」グレードの試乗ははじめて。
718ケイマンSのスペックとしては下記の通りとなっています(ポルシェ・ジャパンによる718ケイマンの製品ページはこちら)。
エンジン:2.5リッター4気筒ターボ
出力:350馬力
0-100キロ加速:4.4秒(PDKの場合。マニュアル・トランスミッションだと4.6秒)
ボディサイズ:全長4385ミリ×全幅1800ミリ×全高1295ミリ
車体重量:1460キロ
サスペンション形式:前後マクファーソンストラット
”718”って何?
ポルシェはこれまで「ボクスター」「ケイマン」を別車種として扱い、それぞれエンジンについても差別化し、ケイマンのほうを「上」に設定。
しかしながら2015年12月にボクスター、ケイマンをひっくるめて”718”としてフェイスリフト。
これによってこれまで差異が設けられていた前後バンパーも「718ボクスター/ケイマン共通」となり、価格も逆転してボクスターのほうが「上」に設定されることに。
この「718」はポルシェが1957年にレースへと投入したレーシングカーで、4気筒エンジンをミドシップマウント。
ボクスター/ケイマンは718へと移行するにあたり「伝統の水平対向6気筒エンジンを捨てる」ことになりましたが、その批判をかわすための大義名分として「4気筒エンジンを搭載した伝説のレーシングカー」の名を冠したのだと思われます。
なおポルシェは2ドアのスポーツカーにおいては「718」「911」のように数字3桁の名称である”Pコード”を与え、4/5ドアモデルには「パナメーラ」「マカン」「カイエン」といった”名前”を付与することとしていますね。
ポルシェ718ケイマンSの外観を見てみよう
ポルシェ718ケイマンSの外観はその前身でもある「981ケイマン」から大きく進化。
とくに前後ランプ内の構造が大きくかわり、「クワッドLED(フロントはLEDヘッドライトを選択しないとクワッドにならない)」が強調されるとともに質感がずいぶん向上しています。
↓このケイマンはオプションのダーク仕上げテールランプを装着
加えて前後バンパー、そしてリアスポイラーとガーニッシュも洗練された雰囲気となり、「かなり都会的になった」という印象。
リアには燦然と輝く「PORSCHE」文字。
ポルシェは長らく車体後部に「PORSCHE」文字を付与することはなく、しかし最近ではブランディングのためかこういった「PORSCHE」文字を付与することに。
加えて車両のデザインを各モデル間で統一する傾向にあり、ここ数年で「デザイン上のセオリー」が大きく変わったであろうことがわかります。
ポルシェ718ケイマンSのインテリアは?
ポルシェは981/991世代から内装の質感を大きく向上させていますが、718世代では更にそれが向上。
とくに金属風の質感を持つパーツは大きく高級感を増加させたと思います。
これら金属調パーツの輝きはかなり「強く」、これが硬質感を強調させる部分でもありますね。
現行のポルシェにおいては一部の特殊なモデルを除くと基本的に右ハンドルしか選べないようになっています(登場初期のみ左ハンドルを選択可能)。
右ハンドルモデルは左ハンドルに比べるとペダル類が若干車両中心に向けてオフセットされており、かつブレーキペダルとアクセルペダルとが接近しているようですが、これはすぐに慣れるので問題はないと考えているところ(ポルシェは左ハンドルでも普通の車に比べるとちょっと特殊なペダルレイアウトになっている)。
シート位置は「かなり」低く、一般的な発券機においてチケットを取るのはちょっと難しい(シートを一番上まであげるか、座高が高いか、腕が長くなければ)と思います。
加えてロールセンター適正化のためにシートが中央に寄っているのでその傾向がさらに強く、日常的に発券機を使うことが多いのであれば、ここは購入前に注意した方が良さそうです。
なお、ぼくは981ボクスターに乗っていた頃、ほぼ毎日発券機を使用していましたが、「身を乗り出す」ことでこれをカバー。
このシートレイアウトはポルシェが「必要」と考えて決めているものなので、その車に乗る以上はぼくらがそれに適応する必要があると考えており、何よりも「愛情でカバーできる部分」だとも考えています(つまり、ぼくは気にしていない)。
逆に、サーキット走行などで「ヘルメットを被る」ことを想定しているのか、頭上にはかなりな余裕も見られます。
インテリア全般について、ポルシェ全体に言えることですが「アナログ」感が強く、操作系もタッチパネルよりは物理スイッチの方が多くなっていますが、これは同じグループに属するアウディやフォルクスワーゲンとは対照的。
ただし最新世代のカイエンの内装を見るにデジタル化が進んでおり、今後は「アウディ寄り」となるのかもしれません。
ポルシェ718ケイマンで走ってみた印象は?
さて、718ケイマンSに乗り込みドアを閉めて思うのは「ドアが閉まる音の重厚さ」。
半ば空冷時代のポルシェ911で感じたような金属的な音と「バフッ」という重い音とが重なったような感じで、これはポルシェ・ケイマン独特の音(ボクスターはオープンなのでまた音がちょっと違う)。
さすがポルシェ、としばし感慨に浸りキーをスロットに差し込んでエンジンをスタート。
ぼくは981ボクスターに2年乗っていたのである程度この世代のポルシェには慣れていたはずですが、久しぶりに乗ってみるとけっこう新鮮。
ステアリングホイールは同じグループに属するフォルクスワーゲンやアウディ、ランボルギーニと比べるとかなり「細め」。
ただ、これももちろん何らかの理由があるものと考えられます(レーシンググローブの着用を考えている、など)。
その後クリープが発生するに任せて車をゆっくり動かしていざ車道へ。
この時点で感じるのはステアリングホイールの操作に対する正確さ。
まさに精密機械としか表現のしようがありませんが、指一本分の操作に対してもきっちりと反応する応答性を持っている、と思います。
718ケイマンのハンドリングは?
なお718ケイマンは「電動パワステ」を採用していて、これはこれまでのパワーステアリングに比較してセンターにやや余裕があり、しかしいったん切り始めるととんでもない正確性をもって応答してくれます。
ただ電動パワステには賛否あると思われ、しかし987世代までに比べるとナーバスさが姿を消し、正確さだけが残ったのでぼく的にはウエルカム。
ハンドリングについてはとにかく「正確」としか言いようがなく、いったいどうやったらこんなに曲がる車ができるんだろうな、と思えるほど。
FRのようにフロントに荷重を乗せずともミドシップ特有の回頭性の良さを見せてクルリと回り、911のようにアクセル操作に気を使うこともなく、「楽しく」右に左にと身軽に舞うことができるクルマですね。
サスペンションも非常に「しなやか」で、他の車だと身構えてしまうほどの段差越え時でも難なく衝撃を吸収。
とにかく突き上げを感じないクルマであり、正直サルーンでもここまでカドが取れた乗り心地を持つ車はそうそうない、と思います。
これは高いボディ剛性に起因すると思われますが、ケイマンは「ボクスター」と基本骨格を共有しており、そしてボクスターはオープン専用モデル。
つまりボクスターは「オープンでも十分な剛性を発揮する」ことを前提に設計されているということになり、それをクローズドボディとしたケイマンの剛性が高いのは当然でもありますね。
ステアリングで感じた「精密さ」はブレーキ、アクセル操作においても同様。
ポルシェはまさに「アクセルを踏んだら踏んだだけ加速して、ハンドルを切ったら切っただけ曲がって、ブレーキを踏めば踏んだだけ止まる」クルマ。
実に単純明快ですが、それでも世の中のクルマの多くはこれができない、とぼくは認識しています。
アクセルを踏んでも加速しないクルマもあり、逆に出だしはグワっと出てもそこから加速せずに「あれれ」な車があったり。
ステアリング操作も同様で、ほとんどの車は(安全上の理由からか)アンダーステア。
ブレーキングも同様で「想像した位置で止まらない」クルマがほとんど。
ただしポルシェの場合は完全に自分が思った通りの、そして自分の感覚と相違のない動きをしてくれるわけですね。
これが徳大寺有恒氏が言った「ポルシェという車は、そこへ行こうと思った時にはもうそこにいいる車である」ということで、まるで自分の体のように、意識した時にはもうその動作を完了しているクルマである、と考えています(ポルシェを”着る”という表現があるが、それもよく理解できる)。
ただ、その身のこなしがあまりに自然であるためにその素晴らしさに気づかない場合も多いと思われ、とくに「初めてポルシェに乗る」人は普通すぎてなにも感じないかも。
しかし他の車で同じ道を同じように走ってみれば必ず718ケイマンは「実は他の車にできないことができる車だった」ということに気づくはずだ、と考えています(そう、ポルシェは他の車がとうていできないことを普通にやってしまう)。
ポルシェ718ケイマンのサウンドやエンジンは?
なおサウンドについては「かなりいい音」。
水平対抗エンジン特有のリズミカルなサウンドが強調されており、アイドリング時でもある程度室内に音が入る設定(ちゃんと後ろの方から聞こえる)。
なお、サウンドについてはポルシェの常として「外から聞いた方がいい音」を出していて、この音を楽しむにはオープンモデルの718ボクスターのほうが向いているかもしれません。
ただ、2019年モデルからはスポーツエキゾーストシステムも標準化されるので、これまで以上に勇ましいサウンドを奏で、かつ室内にも積極的に音を入れてくるはずであり、これから718ケイマン/ボクスターを購入するオーナーさんは「幸せ」だと言えそう。
ちなみに「718」からエンジンがターボ化されていますが、乗った感じはターボ化によるデメリットは全くなし(これは2リッターターボの718ボクスターに乗った時にも感じた)。
ターボラグ「ゼロ」を謳うフェラーリ488GTBのエンジンよりもターボラグが感じられず、雰囲気的には3.8リッター自然吸気のようなイメージ。
ポルシェはターボラグを解消するためにアクセルオフでもエンジン回転数を維持するという手法を用いており、これによっていつどこからアクセルを踏んでも大排気量NAのようなグイと出るトルクを発生させています。
981ボクスターに乗っていた身としては「981ボクスターの2.7リッター自然吸気エンジンよりも、718ケイマンのターボエンジンのほうがNAらしく乗りやすい」と感じるほど。
総合的に見てどうなのポルシェ718ケイマン?
ぼくは今まで3台のポルシェを乗り継いでいますが、それでも乗るたびに驚きがあるのがポルシェ。
「最新のポルシェが最良のポルシェ」というポルシェの主張通りに「過去最高なケイマン」なのが718ケイマンで、それはハンドリング、サウンド、質感などすべてにおいて。
981含めて「前世代の方が良かった」と思わせるところはなく、間違いなく「買い」な一台。
ポルシェ718ケイマンに近い価格帯で、これに比肩しうるスポーツカーは知る限りでは存在せず、これに近い乗り味を持っているのは最近試乗した「スポーツバイク」、ホンダCBR250RR。
718ケイマンSは4輪でありながらスポーツバイクのようにダイレクトな反応を示すということですが、CBR250RRよりもさらにパワフルで、さらにダイレクトだとも感じています。
例えるならばポルシェ718ケイマンは600ccあたりのロードスポーツバイクで、比較するならば今ぼくが乗っているアウディTTは250ccあたりのビッグスクーター、という感じ。
アウディではTTをして「リアルスポーツ」と表現していますが、両者の間にはそれくらい開きがある、と考えています。
ケイマンSを試乗したのはポルシェセンター北大阪さん
今回お世話になったのはポルシェセンター北大阪さん。
ポルシェセンター中大阪さんと同じ系列で、ぼくがポルシェをこれまで3台購入したディーラーさんでもあります。