| ゼロヨン最速マシンの称号は伊達ではなかった |
さて、テスラ・モデルX P100Dに試乗。
以前にもモデルXに試乗したことはあるものの、今回は最強グレードの「P100D」。
しかも今回の個体は数々のアップグレードが施された最新モデルとなっています。
ボディカラーはレッド、ホイールは22インチサイズのブラック、内装もブラックという仕様ですね。
テスラ・モデルXのスペックを見てみよう
テスラ・モデルXは正直「かなり巨大」。
ボデイサイズは全長5037ミリ、全幅2070ミリというフルサイズSUVとなっています。
一回の充電あたり航続可能距離は542キロ、最高速度は時速250キロ(リミッター作動)、0-100キロ加速は3.1秒。
世界で最も安全なSUVを目指して作られたとされますが、実際のところアメリカのテスト機関ではその高い安全性が立証済み。
その安全性担保するのは強固なボディ、そして8台のサラウンドカメラに12個の超音波センサー、そしてフロントのレーダー。
事故を未然に防ぐほか、衝突時の乗員に対する影響も最小限、という評価がなされています。
その他特筆すべき点としてはディーラーに持ってゆかなくともアップデート可能な「ワイヤレスアップデート」、エアサスペンション、4WDシステム、生化学兵器にも対応可能はHEPAフィルター、といったところ。
テスラ・モデルXの外観を見てみよう
テスラ・モデルXのデザインは「凹凸がない」のが一つの特徴。
EVであるためグリルレスとなっていますが、そのほかドアハンドルや前後バンパー、ランプ類の段差が少なく、非常に滑らか。
このあたりが「未来」を感じさせる一つの要素であるのは間違いなさそうです。
ただ、これ見よがしな、言い替えると奇をてらったような「無理やりな新しさ」の演出は見られず、これは好感が持てる部分であると同時に「飽きにくい」一つの要素ですね。
なお、Cd値は0.25で、これはSUVとしてはもちろん、通常の車としてもかなり低い数字となっていますが、車体の裏面もまさに「凹凸がなく」、ディフューザーもこんな感じでスポーツカー顔負けの奥行きを持っています(このあたり、トランスミッションやエンジンがないので設計の自由度はガソリンエンジン車よりも高い)。
そしてモデルXならではの特徴が「ファルコンウイング」。
文字通り鷹が羽を広げるかのように開くドアですが、これは狭いスペースでの乗降に非常に便利で、開閉に要するのはわずか36センチ。
ドアは上方向にも大きく開くので、天井に頭をぶつける心配がないのもいいですね。
テスラ・モデルXのインテリアを見てみよう
テスラ・モデルXの斬新さは外観だけではなく、そのインテリアにも見られます。
まず、ドアを開けるにはドアノブを「押し」ますが、そうするとドアが自動でオープン。
勝手にドアがバーンと開くとドアが壁や隣の車にぶつかるのではという心配がありますが、モデルXではセンサーで「開閉可能な距離」を見積もって「必要な分だけ」開くというスマートさを持っています。
そして乗り込んだのちにブレーキペダルを踏むと、今度はなんと「自動でドアが閉まる」という便利機能つき。
シートは2列もしくは3列が選択可能。
乗降性は非常に良好です。
特筆すべきは「パノラミック ウインドシールドで、これは現在生産される自動車においてもっとも広い面積を持つとされ、フロントグラスが頭上まで広がる、というもの。確かにこれは衝撃的。
メインメーターは当然ながら液晶。
そしてモデルSにも採用されて話題となった大型ディスプレイ。
これによってクルマの全ての機能を調整でき、よってモデルXの室内には物理スイッチが非常に少ないという特徴がありますね。
テスラ・モデルXを運転してみよう
ひととおりインテリアをチェックし、シートやミラーの位置をあわせていざ試乗開始。
シフトレバーに当たるものはセンターコンソールにはなく、かわりにステアリングコラム右側に生えたレバーを下に押して「D」レンジへ。
このあたりメルセデス・ベンツと同じ操作方法となります。
クリープはないので走り出すにはアクセルペダルを踏む必要があり、しかし「わざとらしい」加速感の誇張がないために出だしはマイルド。
テスラというとその「とんでもない加速」が有名ですが、普通に乗ると本当に普通のクルマだと感じるところですね。
走行中の室内は静かそのもの。
EVなので当然と言えば当然ですが、多くのEVは重量を削るために防音や制振を省略していて、よって「止まっていたり低速走行だと静かであっても、普通に走り出すとロードノイズが入ってきて車内がうるさい」場合がほとんど。
ですが、モデルXの場合はどんな速度域でも静かなままで、ここはほかのEVとは全くこ異なる部分です。
テスラはモデルS発表時、「ガソリン車にできることはテスラにすべてできるし、ガソリン車の持つメリットはすべてテスラにも備わる」と公言していましたが、まさにそのとおりだ、と実感させられますね。
なおEVなので回生ブレーキによる独特の減速感はあるものの、それはすぐに慣れるので問題なし。
Aピラーが細く、サイドウインドウの下辺も低いために視界は良好で非常に運転しやすく、アクセル、ブレーキ、ステアリングホイールの操作感も非常に自然で好ましい反応を持っているという印象です。
そして期待の「加速テスト」に移りますが、交通法規を遵守しつつもガツンとアクセルを踏むと「さすが0-100キロ加速3.1秒」の加速。
なお、3.1秒というとランボルギーニ・ウラカンの「3.2秒」よりも速いタイムです。
さらにモデルX P100Dには「Ludicrous」モードが備わっており、これはそのまま訳すと「とんでもない、馬鹿げた」という意味。
つまり常軌を逸しているということですが、このモードに入れると0-100キロ加速がなんと2.5秒、つまりブガッティ・シロンと同じタイムにまで向上します。
ちなみに「読み」については公式な表記がなされていないものの、「ラディキュラス」が一番近いと考えていて、ぼくもそう表記。
ただ、リディキュラス、ルディキュラスと表記しているサイトもあるようですね。
このラディキュラスモードを試さずしてテスラに試乗したとは言えず、これも交通法規を守りながら試してみることに。
その印象としては「アカン!これはアカン!」というもので、実際にぼくが体験した自動車の加速では最も速いのは間違いなし。
よく「血液が後ろに持ってゆかれる」という表現をよく見ますが、まさにそのとおりで、加えていうならば加速によるGの影響で、ジャージ(パンツ)のポケットに入れていた携帯電話や小銭が全部ポケットから後ろに飛んで行ったほどです。
ここでぼくが思ったのは、その加速の凄まじさよりも、「この加速をコントロールできていることの凄さ」。
テスラは非常に事故率の低いクルマだと聞きますが、この加速を持つ車を「安全に」かつ「誰でも」乗れるように制御するのは並大抵のことではないはず。
加えてテスラは「2003年の設立」という新しい会社で、CEOのイーロン・マスク氏も自動車会社の出身ではなく、そういった会社そしてCEOが短い期間で「世界最高の加速性能と、世界最高の安全性能」を持つ車を作ったというのは驚き以外の何物でもない、と考えています。
テスラがあまりにそれを簡単にやってしまったので、他の会社も「自分にもできる」と思ったのか電気自動車のスタートアップがどんどん名乗りをあげたものの、実際に発売に至ったメーカー、そしてテスラと同じパフォーマンスと安全性能を持つクルマは皆無。
つまり、テスラの成し遂げたことは「簡単そうに見えて」それだけ困難なレベルにあるものだということになりますね。
テスラ・モデルXは普通に走ればどの車よりも快適で、もしもの時もどの車よりも安全で、そしていざ加速しようとなるとどの車よりも速い、という「よくよく考えれば異常な」車。
快適性、静粛性、積載性、加速性能、維持費等、およそ車に求められるものを「最高レベル」で、かつほとんどの要素を「併せ持っている」のがテスラ・モデルXということになりますが、ちょっとこんなクルマは他にない、という感じです(そして他メーカーからも当分は出てこない)。
なお、テスラ・モデルXは「ほとんどドライバーが何もしなくていい」クルマ。
テスラは自動運転(オートパイロット)を推進していることでもわかるとおり、ドライバーの労力を極力減らそうとしています(運転だけではなくメンテナンスにおいても。オンラインアップデートはその最たる例)。
そしてテクノロジー満載のクルマではあるものの、そのテクノロジーは人を驚かせたり技術力をひけらかすためのものではなく、「人に安らぎを与え、より快適に移動できるように」使用されていて、よってドライバーが行うことが最小限になっているわけですね。
乗降の際の自動ドア、より簡素化された始動や停止、スマートフォンによる操作、室内からだと直感的にできるタッチ式液晶パネルによる操作など。
ほかのクルマに比べてドライバーやオーナーの負担が格段に低いクルマがテスラ・モデルXであり、ほかの自動車メーカーが今後EVを出してこようとも、こう行った考え方、そして技術の使い方はまず真似できそうにない、と思います。