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「人生はたった一度きり。だからこそ、思いっきり駆け抜ける」。ポルシェを愛した男、スティーブ・マックィーン

2020/07/18

| スティーブ・マックイーンは「お遊びの俳優ドライバー」ではなく本物のレーシングドライバーだった |

さて、カーガイにとって忘れがたい俳優といえばスティーブ・マックィーン。

劇中でも様々なクルマのステアリングを握ったほか、プライベートにおいても実際にレーシングドライバーとして活躍し、数々の成果を残しています。

とくにポルシェとゆかりの深い人物でもあり、1970年のセブリング12時間にてポルシェ908/02を駆り準優勝(1位はフェラーリのマリオ・アンドレッティだったので、2位といえど誇っていい戦績)を果たした際にはフェリー・ポルシェ(ポルシェ創業者の長男)から直接お祝いの手紙が届けられた、とも言われます。

ちなみにこのレースの二週間前には、モトクロスレースでの転倒によって足を(6箇所も)骨折しており、そのためポルシェ908/02のクラッチペダルを短くし、靴の裏にサンドペーパーを貼り滑り止め加工を施しての出場だったというので、もし怪我がなければ優勝に手が届いてたいのかもしれません。

クルマやスピードは自分だけの世界への逃避だった

そういった経緯があってか、今回ポルシェはオーナー向け機関誌「クリストフォーラス」にて、スティーブ・マックィーンにフォーカスした記事を公開していますが、その生涯はまさに波乱万丈。

貧困から抜け出すために海兵隊へと入隊したのち名誉除隊し、22歳にてアメリカの演劇学校、アクターズ・スタジオへと入門。

その後27歳で「マックイーンの絶対の危機」で主演を務め、1950年代には新車第1号であったポルシェ356Aスピードスターを購入するほどの収入を得るなど順風満帆なキャリアを築いています。

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その後356Aスピードスターはさらにパワフルな356カレラへと入れ替えられ、これに加えてレーシングカーを購入してまで数々のレースに出場することになりますが、息子のチャド・マックィーン、そして最初の妻であるニール・アダムスによると「レースは彼にとってドラッグそのものだった」「スピードと機械に夢中だった」。

またある人の話によると「クルマのコレクションは、自分だけのルールが適用される別世界への逃避だった」「ライバルを追い抜くことでしか自身のアイデンテティを保てなかった」とのことで、成功者に見えていたようで、その実は常にナンバーワンでなくてはならないというプレッシャーと戦い、一方ではその重圧から逃げる方法を探していたのかもしれません。

なお、スティーブ・マックイーン本人も「スピードを出していた方がリラックスできる」と語っており、クルマの中という閉鎖空間の中においてだけ自分を解放できる、というのはなんとなく理解できるような気もします(クルマの中には、誰も入ってくることができない)。

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映画の中には常にプロットへとクルマやバイクを盛り込んだ

スティーブ・マックィーンはハリウッドで「もっとも成功した一人」でもあったためにその発言力は非常に大きく、出演する映画には必ずクルマやバイクを登場させた、とも。

「栄光のル・マン」「ブリット」「ハンター」「華麗なる賭け」しかりですが、映画に登場させたクルマを自身で買い取ってコレクションに加えるというにもひとつの習慣であったようですね。

スティーブ・マックイーン最後の作品に登場し、彼のコレクションに加えられた1951年型シボレーが競売に

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なお、ぼくにとっての「スティーブ・マックィーンとポルシェ」というと、栄光のル・マンに登場したスレートグレーの911Tをとっさに連想しますが、同時期にはポルシェ911Sを個人的に所有していたとされ、その911Sには「夜間に警察から追跡された際、警察を欺けるよう」(ヘッドライトを点灯したまま)テールランプのみを消灯させる機能をポルシェに依頼して装備していたそうで、これもまたスティーブ・マックイーンらしいエピソードのひとつです。※正直なところ、スティーブ・マックイーンはクルマというよりもバイクに乗っているというイメージが強い

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なお、有名になったのちも「警察から追いかけられるほど」公道にてスピードを出したり、「ハーヴェイ・マッシュマン」を名乗るなど素性を偽ってレースに出場していたそうですが、これも「人生は一度きり。だから自分ははそんな人生を思いっきり駆け抜ける」「レースをする俳優なのか、 それともレーシングドライバーを演じる俳優なのか自分でも分からない」と自身で語っていたとおり、どうやってもスピードの魅力からは逃れることができなかったからなのかもしれません。

参照:Christophorus

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