| 意外と知られていないBBSの真実 |
あの有名なホイールメーカー、BBSが倒産(経営破綻)との報道。
その理由としては「大手取引先からの支払いが滞ったため」だとされているものの、詳細は現時点では不明です。
BBSは1970年にドイツで創業されていますが、2011年1月に一度倒産していて、このときはBBSのホイールを製造していたワシマイヤー株式会社(現在のBBSジャパン)の親会社である小野ホールディングスが”鋳造ホイール部門を除く”製造に関わる権利と商標権を取得しています。
さらにここで話は終わらず、小野ホールディングスがその後まもなく経営破綻してしまい、前田工鐵傘下に吸収されて現在に至っているわけですね。
BBSホイールには2種類ある
そして重要なのは、2011年の経営破綻時に「鋳造部門とそれ以外」とが分離している、ということ。
鍛造ホイール部門は2011年の経営破綻の際に日本へと法人、生産拠点ともに移されているものの、鋳造ホイール部門はそれ以前の2007年にベルギーの会社へと売却され(このときも経営破綻が原因)、さらに2015年にまた経営破綻して韓国のNice Crpo社が株式の大半を取得して再建を図っています。
つまりBBSといっても複数社あり、鋳造ホイールは韓国、鍛造ホイールについては日本の会社がそれぞれ運営しているということになるわけですね。
よって、ときどき「格安BBSホイール」を見かけることがありますが、それは鍛造ではなく、どこで生産されたのかわかならいBBSホイールだということに注意が必要です(ただしBBS製であることは間違いない)。※日本ではないの方のBBSも現在は鍛造ホイールをリリースしている模様
歴史が長いと「たもとを分かつ」ことも多い
こういった例はBBSにかかわらず自動車業界にはけっこう多く、たとえばブガッティは1881年にエットーレ・ブガッティによって創業されるものの業績悪化によって1963年にイスパノ・スイザに吸収され、そのイスパノ・スイザは1968年にサフラングループに買収されることに。
その過程で自動車の製造はやめてしまったものの、創業者一族が保有していた商標権を買い取ってロマーノ・アルティオーリ(アウトモビリ・ブガッティ)による「EB110」、そして現在の「ブガッティ・オトモビル」が誕生しています。
ただ、サフラングループ下でも「ブガッティ」は存続しており、つまり複数の「(もともとは同じだった)ブガッティ」がこの世に存在するわけですね。
もうひとつ例を挙げておくと「ロールス・ロイス」も似たような運命をたどっていて、1906年に創業され、その後1971年に経営が破綻し、1973年には自動車部門のみがヴィッカースへと売却され、さらに1998年にはBMWへと売却されています。
その一方で「自動車部門以外の」ロールスロイスは(1971年に国営化された後)1973年に再建を図り、1987年に再び民営化され、現在は航空機用エンジンや船舶・航空宇宙産業にも手を広げることに。
なお、航空機用エンジンだと現在は世界で二番目のシェアを持ち、よって飛行機に乗ると「ロールス・ロイスのエンジン」に遭遇することもしばしば。
これは、エンジンに例の「RR」ロゴがあることから「ロールスロイス製」だとわかりますが(ちょっとだけ違う)、そのロゴは自動車と同じもので、しかし会社自体は現在全く無関係、ということになりますね。※BBSの場合も会社は違えどロゴは同じ
話をBBSに戻すと、報道を見る範囲では「倒産したのは韓国のほう」のBBSであるようで、BBSジャパンは影響がない模様。
正式の破綻したと発表された場合は、おそらくBBSジャパンも「無関係」という声明を出すものと思われます(以前も同様の例があったように記憶している)。
参照: Autoevolution, Motor Illustrated, BBS Japan