さて、ランボルギーニ・ウラカンLP610-4が納車されて2ヶ月ほど経過しているので、もう一度ウラカンを見なおしてみます。
やはり納車されてしばらく時間が経過したほうが冷静に見ることができますね。
まずはハンドリングですが、これは「軽快」という言葉に尽きると思います。
ウラカンのレビューは数多くあげられていますが、ぼくは清水草一氏のレビューがもっとも的確だと認識していて(ガヤルドでもそうだった。高回転時の変速に関して触れていたのはおそらく清水氏のみ)、氏は「ピュッピュ曲がる」とウラカンのハンドリングを表現しています。
これ以上ウラカンのハンドリングに関して適切な表現は無いと考えていて、とにかく「ピュッピュ曲がる」のがウラカン。
どうピュッピュなのかというと、たとえばミニバンの後ろについて走行していて道路の先がよく見えないような場合。
ミニバンがイキナリ車線変更したらその先に落下物があったというようなケースで、突然不測の事態に遭遇するような場合ですね。
このようなときにウラカンはステアリングを切ると「ピュッ」と曲がるわけです。ピュュッと。
何の予備動作もなく、ステアリングを切った分かそれ以上「ピュッ」と”飛ぶように”曲がるのですね。
それは猛牛というよりは敏捷な猫科の動物のようで、カーブを描いて曲がるというよりは、直線からいきなり方向転換するようなイメージで、それは通常の車の動きや人の動きからは想像できない挙動です。
たとえば右折しようとしたときは、直線(A)からハンドルを切ってカーブ(B)→また直線(C)という流れですが、ウラカンの場合はこの途中の「カーブ」が省略されていきなりA地点からC地点にワープするのに近い、といえば分かるでしょうか。
こういった挙動が出来るのは、ぼくが運転した中ではほかにフェラーリ458スペチアーレとアルファロメオ4Cだけ。
なお、これはステアリングの「ロック・トゥ・ロック」が関係していると思われ、ウラカンは2回転(LDS装備の場合のみかもしれない。一部では3回転とも言われる)。フェラーリ458も2回転ですね(アルファロメオ4Cは2.75回転)。
通常の車は3回転超辺りで、ハンドリングマシンと認識されるポルシェ・ケイマン/ボクスターGTSでも3回転です。
つまりウラカン、458は以上にクイックということで、これに軽い操作性が加わると「ピュッピュ」曲がるという感覚になるのだと考えています。
おそらくですが、ポルシェはドライバーの操作とフィードバック、つまりインプットとアウトプットとを「人の感覚」で結びつけることで運転する楽しみを表現していると考えられ、よってステアリングを切ってから反応をドライバーに伝えるだけの「余裕」を見ており、それが「三回転の理由」なのだと思います。
そしてランボルギーニ・ウラカンやフェラーリ458はスピードを考えると「フィードバックを楽しむ」暇はないと考えられ、そこは「省略」して「結果」にワープしているのかもしれません。
日本車で明らかにロック・トゥ・ロックを意識したのはS2000が最初だと思いますが、そのS2000でもロック・トゥ・ロックが2.4回転。
なおS200のVGS仕様だと1.4回転と超クイックになりますが、実際に運転するとステアリングホイールを持ち変える必要がないほど曲がります。
これはあまりに一般車と異なる感覚であり、それを認識していない人が乗ると危険、ということで国交省の指導かなにかがあってS2000のVGS仕様のステアリングホイールはフラットボトムになっている(円ではなくD字形状とすることで、その車が通常ではないと理解させる)と聞いたことがあります。
ちなみに新型シビック・タイプRは2.25回転、フェラーリF12ベルリネッタは2回転、ポルシェ911ターボ(991)は2.6回転、アウディR8は3回転(これがランボルギーニとの差異)、ロータス・エキシージは2.8回転、スバルWRX STIが2.5回転、S660は2.2回転。
こうやって見るとホンダはかなりクイックな設定になっており(さすがにVGSを国内で最初に導入しただけある)、それでもフェラーリ458とランボルギーニ・ウラカンの「2回転」の尋常ではない数値が際立ちます。
そしてアウディ、ポルシェの数値が意外と大きいのが興味深いですね。
ポルシェにおいては993時代は2.5回転近辺と意外とクイックで、996以降に3回転近辺になり、997/987世代で可変レシオを投入することで3回転から3回転弱に移っているようです。
当然ながらロック・トゥ・ロックをクイックにすればよく曲がるというわけではなく、それについて来れるだけのグリップも必要なのは言うまでもありません。
なおウラカンのステアリングは軽いのでついついラフに操作してしまいがちで、ここは気をつけて丁寧に操作しないと、と心がけるようにしています。