| 理論上は納得できるが、EVオーナーとしては「最初はそんな話はなかったのに」急にそんなことを言われても困りそう |
ただし政府としては失われた税収を取り戻す必要があり、世界中でこの流れが加速するのは間違いない
さて、EUでは「2035年にエンジン車の新車販売禁止」を掲げていたところその決定が覆ることとなっていますが、その他の国や地域でもEVに対して逆風が吹いており、今回は「EVに対する課税強化」というニュース。
米テキサス州の上院と下院は、道路を利用するEVドライバーに課税する方法を模索していると報じられており、現在テキサス州はガソリンに対する課税を行っていますが、この税金は既存のインフラを維持したり、新しい道路を建設したりするために使用されているわけですね。
これは基本的な「ユーザーペイズ」システムということになり、しかしEVオーナーは(ガソリン車オーナーと尾同じように)道路を使用しているにもかかわらずこういった税金を支払っておらず、これが「不公平だ」として問題となっているもよう。
現時点での課税方法は「登録料」
ヒューストン・クロニクル紙によると、テキサス州当局はEVオーナーに対して年間200ドルの登録料を請求することを検討中だとされ、しかしEVオーナーに支払いを求める方法を検討する州はテキサス州が初めてではない、とされています。
たとえばEVフレンドリーなカリフォルニアでさえ電気自動車の所有者に道路改良費としてのコストを課しており、これは当初は年間100ドルだったものの、消費者物価指数の上昇(つまりインフレ)によって費用が調整されて現在は108ドルに。
アーカンソー州はさらに厳しく、BEVに200ドル、プラグインハイブリッドに100ドル、通常のハイブリッドでも50ドル徴収しているそうですが、プラグインハイブリッド車とハイブリッド車のオーナーはこれに加えてガソリン税も支払っているわけですね。
逆に多くの国や地域では、EV普及のため、EV所有車に対する税金などの優遇措置を打ち出していて、しかしEVは車体重量が重いために道路などインフラへの負担も大きいということは間違いなく、にもかかわらずEVオーナーがインフラ整備のための負担を強いられていないという状況はガソリン車オーナーにとってある意味不利益であり、これが昨今話題となる「アイシング」に繋がっているのかもしれません(米国では、この不平等がクローズアップされ広く報道されているのかも)。
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なお、日本だとガソリンへの課税から得られる税収は年間2兆円だと言われるので、EVが普及しガソリンの消費量が減った後に失われるこの税収を「補う」方法を政府が考えねばならず、早晩なんらかの負担をEVユーザーに強いる可能性もありそうです。
まだまだ先の時代とはなりそうですが、EVが過半数になってしまうと政府はそのぶんEVオーナーに対する課税をさらに強化する可能性もあり、EVを購入するメリットそのものが消失してしまう時代が来るのかもしれません。
問題はEVに対する「課税方法」
なお、今回のテキサスのケースだと「年間いくら」という課税方法となっており、つまり「年間通じ、ほとんど乗らない人でも、毎日長距離を走る人であっても同じ料金」。
一方ガソリンへの課税は使用したら(走ったら)そのぶんだけという方法となるので大きく差があり、つまりこれは「アンフェア(ガソリン車オーナーに対しても、そしてEVオーナーに対しても)」。
よって、これを公平にする方法としては「道路を使用したぶんの支払いを求める」ということになりますが、これについては算出が非常に難しく、たとえばワシントン州はEVドライバーに対し、その走行履歴を取得して走行距離に応じた課金を提案していますが、走行距離(移動時間)を記録するとなると、スピード違反の可能性や旅行先など、必ずしも政府に知られたくないことも記録されることになるためにそうとうな反発があるもよう。
これについてはまだまだ議論がなされることになりそうですが、こういった法整備が整わないままにEV普及を進めると、のちの法改正によってEVオーナーに対する不利益が後々生じることもあり(最初は存在しなかった負担が後に急に発生して”話が違う”となる)、やはりEVの普及は無理やりにではなく「自然に」行ったほうがいいのかもしれませんね。
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参照:Houston Chronicle