| たしかにグランドセイコーは世界に誇るべき素晴らしい技術を持っているが |
ムーブメント、そして仕上げや品質、精度にこだわるあまり、時代に取り残されたかのような印象も
さて、世界に名だたる名作を世に送り出している腕時計ブランド、「グランドセイコー」。
意外なことではありますが、これまでメカニカルクロノグラフを発売したことが無いそうで、今回”初”となる機械式クロノグラフ「グランドセイコー エボリューション9 コレクション テンタグラフ(Grand Seiko Evolution 9 Collection Tentagraph / 181万5000円)」を2023年新作として発売することに。
ここでその内容を見てみましょう。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション テンタグラフはこんな腕時計
このグランドセイコー エボリューション9 コレクション テンタグラフのケースはブライトチタン、ケースはセラミック。
ダイヤルは「ブルー」ですが、これはグランドセイコースタジオ(雫石)から望む岩手山の山肌を表現したものだと紹介されています(サンレイのようにも見えるが、よく見ると繊細な紋様が刻まれている)。
搭載されるムーブメントは今回の新作で初登場となる9SC5(ベースは9SA5)で、パワーリザーブは10振動の機械式クロノグラフとしては世界最長の72時間。
ちなみに「エボリューション9」とは、グランドセイコーが”真に良い腕時計”を標榜して考え出したデザイン文法であり、腕時計の本質を捉え、陰影とその中間にある美しさを見出すという日本ならではの美意識をもって”奥深い輝き”や”品格”を表現するというもの(すでに5モデルが発売されている)。
このあたりの考え方はレクサスやマツダといった日本の自動車メーカーにも通じるところがあるようにも思います(とくに日本、そして美意識というキーワードを使用するあたり)。
そしてこのテンタグラフでは、クロノグラフという「高い視認性が求められる腕時計」の本質を捉えており、クロノグラフ針と目盛り、分針とインデックスとの距離を限界まで短縮し(つまり針が長い)、さらにはサブダイヤルを一段下げて読み取りやすくしているようですね(サブダイヤルの盤面の仕上げはメインのダイヤルと変化をつけられており、さらに視認性が高まっている)。
ちなみにデイト表示窓の位置はほかのクロノグラフではあまり見かけないポジションにあり、しかしこれは「インデックス(バー)を12個ちゃんと配置でき、しかもサブダイヤル含めすべての情報を読み取りやすい場所がここだったから」。
ケースはブラシ(サテン)とポリッシュとを巧みに使い分けており、(針やインデックスの仕上げともども)グランドセイコーらしい高い技術が感じられるもので、しかし惜しむらくはバネ棒を突くための穴がケースに設けられていたり、ブレスレットのコマを連結するシャフトを通すための穴が開いていること。
さらにはバックルも「180万円の腕時計」にしてはやや平凡にすぎ、ここもちょっと残念な部分だと思います。
たしかにグランドセイコーの技術には目をみはるものがありますが、美的感覚やデザイン性といったところではスイスのブランドに遅れを取っているというのが偽らざる心境であり、しかしこれは「機械としての精度や品質を最重要視する」という日本の工業製品全般に通じる思想がベースにあるものと思われ、とくに腕時計業界においては「ムーブメント偏重」の傾向が強すぎてブレスレットやバックルをおざなりにする傾向も。※グランドセイコーは素晴らしい技術を持っているが、それが十二分に生かされていないように感じている
これは近年の「ブレスレットやバックルまでを含めてが”腕時計である”」という流れとは大きく距離を置いたものであり、ここは評価が分かれるところかもしれませんね(近年の”デザイン性重視”の腕時計を快く思わない人も少なからずいることは理解しているし、グランドセイコーの職人も、そこにこだわるのは邪道だと捉えているのかもしれない)。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション テンタグラフを紹介する動画はこちら
合わせて読みたい、グランドセイコー関連投稿
-
【動画】本当にグランドセイコーはいい腕時計なのか!ロレックス・サブマリーナと細部を比較してみた。両者の考え方の差が明確に
| 甲乙つけることができない部分もあるが、明白に優劣が見える部分も | さて、ロレックス・サブマリーナ116655LNとグランドセイコー・スポーツSBGA229との比較動画が公開に。ロレックス・サブマ ...
続きを見る
-
【動画】ロレックスファンには厳しい現実?ロレックス、グランドセイコー、A.ランゲ&ゾーネの腕時計を200倍の顕微鏡で拡大してみたらこうなった
| ロレックスはやはり「実用時計」?細部の仕上げにまではあまり注意が払われていないようにも | さて、高級腕時計の細部を「顕微鏡で見てみる」というショッキングな動画が公開。これはユーチューバー「スイス ...
続きを見る
-
グランドセイコーより「セイコー110周年記念」限定モデル登場!漆塗りに高蒔絵、ブリリアントハードチタンケースに鎧織ストラップを備えて1,815,000円
| グランドセイコー110周年記念限定モデル「SBGW295」はその仕様を見るに「割安」だと考えていいだろう | バーインデックス、Grand Seiko文字はなんと立体の高蒔絵 さて、グランドセイコ ...
続きを見る
参照:Grandseiko