| ポルシェの「リアエンジン」はレイアウト上の様々なデメリットを持っているが、911の歴史はそれを乗り越えようとしてきた歴史でもある |
リアディフューザーはスポイラーとは異なり「効率よくダウンフォースを発生できる」点が特徴である
さて、ポルシェは様々な特許を積極的に出願していることでも知られますが、今回は「エキゾーストシステムのサイレンサー(マフラー部分)をディフューザーとして機能するような形状にする」という特許を出願。
提出された文面によれば「この発明は排気システムのリアサイレンサー形状によるものであり、その下面は空力学的に形成され、エアガイド要素を装備することができる」と説明されており、そしてこれまでのサイレンサー部と置き換えるのみで簡単にその効果を発揮できそうな構造を持っています。
ポルシェはなぜ今回の特許を?
なお、ポルシェがこういった特許を出願した背景としては「911はディフューザーを装着しにくいリアアンダーを持っているから」だと思われます。
ご存知のとおり911は「リアエンジン」レイアウトを持っていますが、そのエンジンの後ろに補機類とエキゾーストシステムがぎっしり詰まっているため、リアアンダーからエアを吸い出す構造を持たせることが非常に難しいわけですね。
そして「エアを吸い出す」ことの意味としては「ダウンフォースを強化できるから」に尽き、よって多くのスポーツカーやスーパーカーではこういった構造にてフロア下のエアを抜くための構造(ディフューザー)を持っています。
しかしながら911の場合は(上述の通り)車体後部裏面までびっしりとマフラーで埋め尽くされているため(環境規制に対応するためにマフラー部分が大きくなっている)ディフューザー形状をもたせることが非常に難しく、しかしレーシングバージョンである911Rではエンジンをちょっと前に寄せることで少しスペースを空けてディフューザーを装着することに成功しています。
参考までに、ランボルギーニやマクラーレンがテールパイプの位置を上げているのは「テールパイプに邪魔されずにディフューザー面積を大きく、そしてディフューザーの角度を確保したいから」。
つまりは各スポーツカーメーカーとも、リアディフューザーを最大化するために腐心しているというのが現在の状況です。
今回の特許によって少しでもダウンフォースを獲得できるように
そして今回の特許を見ると、最もわかりやすいのはこの「横から見た図」かと思いますが、車体後部(図では右側)にゆくにつれ、マフラーの角度が「上に」向いており、これによって空気を排出しやすくする意図を持っていることがわかります。
真後ろから見るとこう。
マフラーそのものが「オメガ(Ω)」」状の構造を持っていることがわかり、これはマフラー下部を上に向けることで失われた容量を「どこかで確保せねばならないため」だと考えて良さそう(環境規制の達成を考慮するならば、マフラー容積を小さくすることはできない)。
よって今までの「枕型」からかなり複雑な形状へと移行しているものの、これによってダウンフォースを得ることができるのであればポルシェにとって「設計や製造の複雑さなどなんのその」ということなのかもしれません。
そしてその下にはパネル(フラットボトムと連続している)が装着され、これがディフューザーの役割を果たし、そしてこのパネルについてはおそらく可動式かと思われます(一部のフェラーリで採用されているような機構を持つのだと推測)。※911R以降、一部の911ではマフラーの下にエアガイドの役割を果たすパネルが装着されている
裏面から見るとこう。
この図を見ると、中央からより多くのエアを抜くことを考えているようですね。
(真ん中からエアを大きく抜くとなると)雰囲気的にはケイマンGT4 RSに近くなるのかもしれません。
こういった特許を見ると、「ポルシェは限られたスペースとパッケージングの中で最大効率を追求している」ということがよくわかりますが、ポルシェのエンジニアたちは日夜リアエンジンというハンディキャップをなんとか克服できないか、と考えているのだと思われます(そしていざ克服できたとなれば、リアエンジンの持つアドバンテージを利用してパフォーマンスを向上させることができる)。
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参照:CARBUZZ