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腕時計3大雲上ブランド中でも最高峰のパテック・フィリップ。アクアノート購入を考える

2017/01/03

何を思ったか、パテック・フィリップ・アクアノート(5167A-001)の購入を検討中。
ぼくはアンチ・パテック・フィリップというか、アンチとまでゆかないほどパテック・フィリップに対しては無関心だったわけですね。
そして、パテック・フィリップはその歴史や価格(とにかく高い)、希少性が先行してそのイメージを作り上げ、実態以上に賞賛されているだけだろう、と。

「そんな風に考えていた時期が、俺にもありました」

ということですが、そのような理由から、今までに何度か「パテック・フィリップについてどう思うか」と聞かれたとしても、「価格に見合わない」という返答をしていたわけです(パテック・フィリップをよく知らないのに。現在は反省し翻意)。
加えて、腕時計好きが皆「究極はパテックフィリップ」と揃って言うので、反体制的なぼくは「みんなでパテパテ言いやがって」とやっかみ半分に考えていたのかもしれません。

例えばこの「ノーチラス」ですが、ステンレススティールにもかかわらず、そして何の変哲もないデザインにもかかわらず、市場価格は400万円弱くらい。
それでも人気が非常に高いので入手困難であり、一時期はプレミアムがついて販売されていたほど(パテック・フィリップの腕時計はどれもプレミアが付きやすく、投資用として考えられる場合も多い)。

こういった例を見ていたので、「実際の価値を超えた価格で取引される腕時計ブランド」という印象があり(実際にパテック・フィリップはかつて自社が市場に送り出したアンティークを異常な高値で買い戻すことでその市場価値を構成している、という事実もある)、そこがぼくをパテックフィリップから遠ざけていた要因でもあります。

なおノーチラスは1972年の発表ですが、この時計のデザイナーは「ジェラルド・ジェンタ」。
つまりオーデマピゲ・ロイヤルオーク(これも1972年の発売)と同じデザイナーということになります。
なお、これもぼくのお気に入りであるカルティエ・パシャ、ブルガリ・ブルガリもまた、ジェラルド・ジェンタのデザイン。
ジェラルド・ジェンタは素材やムーブメントで時計を選ぶのではなく「デザインで時計を選ぶ」という方法を市場に定着させたと言ってもよく、1972年を境に腕時計のデザイン(そして考え方)は大きく変わった、とも言われます。
※同一デザイナーのためパテック・フィリップのアクアノート/ノーチラス、オーデマ・ピゲ・ロイヤルオーク・オフショアは「八角形」という共通のデザインモチーフを持ち、文字盤だとアクアノート/ロイヤルオークは共通のワッフル(APだと”タペストリー”)状デザインとなっている

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そんなわけでアクアノートですが、先日、ふとしたことからアクアノートを間近に見る機会があり(こちらも人気すぎてなかなか店頭には出てこないので、あまり見る機会に恵まれなかった)、よく見るとその美しさに心を奪われてしまったのですね。

どんなところに惹かれたかというと、まず文字盤と針とのクリアランスの小ささ。
文字盤自体はブロック状の立体的なもの(ワッフル仕様)ですが、その文字盤の上に針が描かれているんじゃないかというほど文字盤に接近して針が取り付けられており、当然これは相当に高い精度を持たねばできない芸当。
かつ、その針の「薄さ」も特筆もので、これらが相まって、「まるでスマートウォッチ(の画面に文字盤と針が映し出されている)」のような印象を受け、それにいたく感銘を受けた、ということになります(これはちょっと画像ではわからない)。
実物を見るとひと目でそれは人間離れした技術で作り上げられている、ということがわかる腕時計ということですね。

ケースを裏返すとスケルトンになっており、そこで目に入るのがゴールド(21金)のローター。
巻き上げには遠心力を利用することになりますが、その遠心力を発生させるため、わざわざ重量のあるゴールドを使用しているとのこと。
これは「放熱性に優れる」という理由だけで(外からは見えない)エンジンルームの内側を金張りにしたマクラーレンF1のような贅沢極まりない素材選択であり、はたまた「外から見ると極めて普通」の仕上がりなのに、リフトアップして裏面を覗くとそこではじめて「異常にお金がかかっている」ことがわかるポルシェのようだ、と感じたわけです。

つまりパテック・フィリップの多くの腕時計はステンレス製ですが、「ケース素材やデザインは普通」なのに「中身にやたらとお金がかかっている」というところにその美学を見出した、ということになりますね。

なおバックルはこんな感じ。
サイズ調整にあたりラバーブレスレットは「切断」することになりますが、その不可逆的なカタストロフィもいいですね。
カットするともう「後戻りはできない」ことになりますが、それは逆に「自分専用」になった、ということも意味します。

バックルに刻印されるのは有名な、百合を組み合わせた「カラトラバ十字」ですが、20世紀初めからパテック・フィリップはそのブランドを表す紋章として用いてきた、とされています。
ただ不思議なのは、パテック・フィリップはこれを文字盤に使用したことは(ぼくの知る限りですが)無い、ということ。
ロレックス、そして同じ三大雲上ブランドの一角を成すヴァシュロン・コンスタンタンについては文字盤にそれぞれ誇らしげに「王冠」「十字」が輝いていますが、パテックフィリップの場合はこういったバックル、時にはケースバック、そしてリューズにこのカラトラバ十字が現れるのみ。

なおバックルの内側はこうなっています。
複雑怪奇な構造ですが、現行モデルからの採用となっているようですね。

今回具体的にパテックフィリップの購入を考え始めたきっかけは「価格」にあります。
一時は高騰し入手が難しかったアクアノートですが、最近は価格も落ち着き(さすがにプレミアムまでは払いたくない)、店頭でも見かける機会がチラホラ。

これはぼくが思うに「(パテックフィリップが)中国で売れなくなったであろう」ことに関係しているのかもしれません。
パテックフィリップは「中国への長期的なコミットメントの証として、世界初のメゾン・ パテック フィリップを上海に開館」と公式にプレス発表していて、上海のフラッグシップストアの他にもかなりの店舗があり、それは日本では信じられないほどの数(中国限定のノーチラス、ワールドタイムも発売)。
実際に統計では「中国人の富裕層について、ジュエリーはカルティエ、時計はパテックフィリップ、車はロールスロイスかベントレー、ファッションはアルマーニ、化粧品はシャネル、アクセサリーはエルメスを好む」という結果が出ており、しかしここ1〜2年ほどで何のブランドも販売は減少傾向、と報じられています。

実際にロールスロイスでは2015年、中国市場での販売について「前年比で50%(つまり半分)」を記録しており、しかし日本市場はいかなる場合も落ち込みがなく安定的に成長していることから「日本市場再注目」戦略に転換してディーラー網を倍に増やす計画を導入。

同じ腕時計業界だと、現在オーデマピゲの直営店は銀座の一店舗のみですが、APは12月に大阪にも直営店をオープン予定(しかしまだオフィシャルサイト上には記載がなく、開店が遅れているのかも)。
これについては、「中国の需要が伸び悩み、日本市場は今後有望と判断」とされていますね。
なお、これまでオーデマピゲが日本市場に注力してこなかったのは「中国でよく売れるので、日本へ回すだけの腕時計がなかったから」とされており、しかし今回手のひらを返して日本注力ということになりますが、このあたり欧州企業の利益追求姿勢(超ドライ)が明確に現れることに(しかも欧州企業はモロにそういったことを言う)。

なお、ぼくはヴァシュロン・コンスタンタンについてもこれまでぼくがパテックフィリップに対して抱いていたのと同じ「価格に見合うデザインを持っていない」という印象を持っており、しかしパテックフィリップにて翻意した経緯を考えると、今後ヴァシュロン・コンスタンタンに対しても同様に意見を翻し、「買ってみようか」と考える時が来るのかもしれません(ヴェシュロン・コンスタンタンはデザイン的に大きな特徴や魅力が感じられず、それはないか)。

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