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ポルシェで追突し、トラックの運転手を死亡させた医師に「懲役8年」の判決。ボクらはいつでも人を「殺せる」乗り物を運転している

2020/01/27

| 実際にあってはならないことだが、常にボクらは人を傷つける可能性があることを認識すべきだ |

2018年11月に兵庫県尼崎市にて発生した、「ポルシェがトラックに追突してトラックが横転し、そのトラックの運転手が亡くなってしまった」という悲痛な事故。
カンテレによると、今回神戸地方裁判所にてその裁判の判決が言い渡され、ポルシェを運転していた医師に懲役8年が言い渡された、とのこと。

裁判において、検察側は「時速216kmでの暴走」による危険運転を主張し、一方の弁護側では「カーナビ操作の脇見運転なので危険運転ではない」と反論。
そして裁判所(神戸地裁)としては危険運転致死罪にあたるとして今回懲役8年の実刑判決を下したことになりますが、これは昨年12月の「息子を殺害した元農水次官」の判決が懲役6年であったことを考えると、極めて重い判決だと言えそう(しかしながら、元農水次官の場合は情状酌量の余地があれど、今回の件についてはまったくその余地はなく、8年であっても”軽い”かもしれない)。

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危険運転致死罪とは

危険運転致死罪とは、危険な状態で自動車を運転し、結果として人を死に追いやった場合に課せられる刑罰を指しますが、死亡ではなく傷害の場合も含め、危険運転致死傷罪が新設されています。
その内容としては下記の通り。

長らく、自動車運転中に過失で人を死傷させた場合は、刑法の「業務上過失致死傷罪」が適用されていましたが、飲酒運転などによる悲惨な交通事故が少なからず発生したことから、被害者などを中心に従来からの刑法では罰則が軽すぎるのではないかといった厳罰化を求める声や国民の関心の高まりによって、2001年の刑法の一部改正で「危険運転致死傷罪」が新設されました。さらに、危険運転致死傷罪が適用されない過失による死傷事故の場合でも、実態に合わせた妥当な刑罰を科するため、2007年の刑法の一部改正で「自動車運転過失致死傷罪」が追加されました。
そして、運転の悪質性や危険性に見合った処罰ができるように、これらを刑法から移し、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷処罰法)が新たに成立、2014年に施行となりました。「危険運転致死傷罪」は同法第2条に規定され、以下の行為を行い人を負傷させた者は15年以下の懲役、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処することになりました。

JAF

そしてどういった行為が「危険」だと判断されるのかについては下記のように定められていて、いわゆる「あおり運転」のように、意図して誰かを攻撃したり困らせようとしなくとも、「ドライビングテクニック不足でクルマをコントロールしきれず」に事故を起こし、誰かを傷つけたり死亡させてしまった場合にも適用されるということには注意する必要があります。

1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2. その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3. その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4. 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5. 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6. 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

JAF

そしてJAFによると、2018年に危険運転致死傷罪の適用は352件、そのうち致死は24件もあり、内訳としては下記の通り。

1. 信号の殊更無視 169件(48.0%)
2. アルコールの影響 105件(29.8%)
3. 妨害目的 25件(7.1%)
4. 制御できない高速度 21件(6.0%)
5. 通行禁止道路進行 18件(5.1%)
6. 薬物の影響 12件(3.4%)
7. 無技能 2件(0.6%)

JAF

クルマはいとも簡単に人の命を奪ってしまうことができる

そしてぼくがいつも思うのは、クルマはいとも簡単に人の命を奪うことができる乗り物だということ。
その「命」とは他人のものかもしれませんし、自分のものかもしれません。

動物はおよそ「固有の速度」を持っていると言われ、それはつまり「自分の身体を使って移動できる速度」。
人間だとけっこう速く走っても時速36kmくらい、人類最速のウサイン・ボルトでは44.6km/h。
そして人間は一般に、その速度の範囲内でしかモノを判断できないようにできていて、つまり時速200km/hで走行したときに何かあってもとっさに、かつ適切に反応できないわけですね(訓練や慣れである程度はカバーできる)。

なお、一般に「鳥は頭がいい」と言われるのは、「鳥は人間を遥かに超える速度で飛行することができるため」その速度域にて対応できる脳を与えられているからだ、とぼくは考えています。

ただ人間は「適応する生き物」なので、たとえ「36km/hの脳」だとしても、高速道路をずっと時速100kmで走っているとその速度に慣れてしまい、「100km/h脳」になることも(クルマを降りればすぐもとに戻るけれど)。

それでもやはりぼくら人間は「人間の能力を超えた速度で移動する乗り物」をうまくコントロールできるほうが自然の摂理に反しているのだと考えるほうが妥当で、本来であればその能力を有していないと認識すべき。
しかしそれでも普通にクルマに乗れてしまうのは、自動車メーカーが努力して「誰にでも扱えて、事故が起きないように」クルマを改良してくれているおかげである、ということも忘れてはならないと思うわけですね。

そういった意味では、ぼくは「クルマを思い通りに操ることができる」とは毛頭考えていなくて、いつも家に無事に戻ることができた際、「今日も何もなくてよかった」とクルマを作った人々、そして何よりもクルマに対して感謝するようにしています。

VIA:カンテレ

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