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ダイソンは撤退した電気自動車ビジネスで合計4000億円も損失を出していたようだ!そして「1台2000万円で売るはずだった」EVも公開

2020/06/15

| 最初から勝ち目のない競争だった |

さて、ダイソンは昨年に「開発していた電気自動車ビジネスをすべてキャンセルする」と発表していますが、今回は「発売するはずだった」電気自動車を公開しています。

ダイソンは(計画進行中に)いくつかのボディタイプをリリースする計画を持っていて、第一弾は画像の通り「SUV」。

このSUVは”N526”というコードネームが与えられた7シーターSUVで、ボディサイズは全長およそ5メートル、全幅2メートル、高さ1.7メートル。

サイズ的にはちょうどテスラ・モデルXに近く、未来的そしてクリーンなデザインを持っています。

やはり電気自動車をつくるのは「非常に」難しい

ジェームズ・ダイソンいわく「我々は、いかなるサプライヤーからもパーツの供給を受けず、一からクルマを開発した。様々なボディタイプへと展開が可能なプラットフォームとして開発されており、最初のモデルはエアロダイナミクスに優れ、高いグラウンドクリアランスを持つSUVになるはずだった」。

そして「最初のプロトタイプを運転した時、はじめてヘアドライヤーや掃除機の試作品を試したときと同じような感覚を受けた。私はそれを楽しんだが、すぐに改良すべきポイントを見つけたんだ」とも語っています。

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プラットフォームは”完全フラットボトム”を採用し、アルミ製バスタブシャシーにバッテリーをはめ込んでゆく形式。

もちろんこれによって低重心化そして室内空間の確保が可能となっていますが、何よりその強靭さが特筆すべき点だとしています。

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こちらはローリングシャシーですが、ジェームズ・ダイソンいわく「ミニとは逆に、大きなタイヤを採用した」。

ちなみに初代ミニはタイヤを小さくすることで室内空間を拡大したわけですが、このダイソンN526は余裕があるサイズを持っているためにタイヤを小さくする必要はなく、むしろ大きなタイヤを採用することで走行時における快適性を確保した、とも述べています。

そして前後タイヤは可能な限り四隅へと追いやられ、タイヤサイズは直径が大きく細い形状を持っていて、ちょうどBMW i3のような考え方なのかもしれません。

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ダイソンの開発による「デジタルモーター」はサブフレームを介して前後に搭載され、あわせて536馬力を発生。

0-100km/h加速は4.8秒となかなかの俊足っぷりを発揮し、最高速度は201km/h、一回の充電あたり走行可能距離は驚くべきことに約965km。

テスラ・モデルXロングレンジですら航続距離が564kmに止まるので、発売されればかなりなアドバンテージを誇っていたのかもしれません。

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シートはこんな感じ独特ですが、ジェームズ・ダイソン曰く「普通のシートを採用したくはなかった」。

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こちらはモックアップではあるものの、その奥にはボディカラーのサンプルと思われるパネル等がディスプレイされ、発売直前まで進んでいたということもわかりますね。

巨額赤字を出す前に撤退を決める

ジェームズ・ダイソンはこのプロジェクトに680億円もの私財を注ぎ込んだそうですが(英国政府も18億円を投資している)、ダイソン社自体も3400億円の投資を行なっていて、これらを勘案するに、もし発売したとしても1台あたり2000万円を超える計算になるという計算に。

そして、当然ながら「2000万円では誰も買わないだろう」と判断し、これ以上損失が拡大する前に「このプロジェクトを引き上げるべきだ」という結論に至ったようですね。

なお、ジェームズ・ダイソンは電気自動車ビジネスから手を引く際に、「電気自動車を作るのは非常に、非常にお金がかかる。バッテリーやバッテリーマネージメント、クーリングなどのコストはガソリンエンジンの比ではない。ジャガー、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツは1台の電気自動車を売るごとに大きな赤字を垂れ流しているが、それを許容できるのは、メーカー全体のCO2排出量を引き下げることができるからだ」とも語っており、しかしダイソンには赤字を出してまで電気自動車を売る理由はない、ということに。

現在欧州では自動車メーカーに対して厳しい規制が課され、メーカーごとにCO2総排出量(1台あたりのCO2排出平均)が決められていますが、正直なところこれをガソリン車のみで達成するのは非常に困難。

しかし達成できなければ巨額の罰金を支払う必要があり、よって電気自動車を作ることでこの平均値を下げよう、そして罰金を払うのであれば赤字でも電気自動車を売ったほうが(将来のことを考えても)いい、というのが既存自動車メーカーが「赤字でもEVを作り続ける」理由なのでしょうね。

それにしてもジェームズ・ダイソンともあろう人がこのプロジェクト開始前にコストを把握できなかったのはちょっと驚きで、コストの高さを把握したのちも「全て自社開発で賄おう」とたのもまたびっくり。

おそらくは「いい製品を作ろう」という妥協無き姿勢が「完全自社開発以外の選択肢」を排除したのだと思われますが、ちょっと掃除機とはワケが違ったということになりそうです。

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