| EVはパーツ点数が少なく、油脂類の交換が必要な部位が少ないためにメンテナンスコストが安いのは間違いない |
参考までに、もっとも売値が下がるクルマは日産リーフ、二番目はBMW i3
さて、米国のWe Predict社が発表した統計によると、電気自動車の(維持費含む)所有コストは長期的に見てガソリン車よりもずっと安い、とのこと。
これについては、実際に電気自動車を所有した身として「イエス」だとも言え、また同時に「ノー」だとも考えています。
ぼくの意見は後に述べるとして、まずは今回の調査結果について見てみましょう。
たしかに電気自動車はサービスコスト、そのランニングコストがかなり安い
まず、We Predict社によると、所有開始から3ヶ月の平均で123ドル、1年で306ドルのサービス費用を支払っているといいますが、これに対しガソリン車だとそれぞれ53ドルと189ドル。
さらに36ヶ月経過後だと、EVの平均サービスコストは514ドル、そしてガソリン車については749ドルという数字です。
We Predict社によれば、この差は主にメンテナンスコストの低下によるもので、ガソリン車の平均228ドルに比べ、EVのオーナーは所有開始から3年間のメンテナンスにわずか77ドルしか費やしていないとのこと。
今回の調査では、400車種、1,300万台以上の車両を対象とし、6,500万件のサービス・修理依頼に基づき、部品代トータルで77億ドル、人件費トータルでは95億ドル以上かかったという計算で、この統計にはメンテナンス、突発的な修理、保証やリコール、診断、ソフトウェアのアップデート、サービスキャンペーンなども考慮されているようですね。
加えて、メンテナンスコストがEVだと3年で77ドル、ガソリン車では228ドル(その差は151ドル)という数字に比較し、これに故障の修理対応などを入れたサービスコストはEVで514ドル、ガソリン車では749ドル(その差は235ドル)なので、ここからは「ガソリン車のほうが故障が多い、もしくは修理にかかるコストが高い」であろうことも見えてきます。
実際のところ、EVはガソリン車に比較して「一般に」40%ほどパーツが少ないと言われており、ガソリン車のようにエンジンオイルやトランスミッションオイル交換の必要がなく(ほとんどのEVはトランスミッションを持たない)、そのため(点検箇所や、要交換パーツが少ないため)ガソリン車に比較して12ヶ月点検や車検の基本費用も低く設定されており、一定期間サービス料が無料になるパッケージにおいても、EVのほうがぐっと安く設定されています。※BMW i3のサービスパネルを開け、ドライブトレーンを見たとき、ラジコンカーが大きくなっただけだったので「おもちゃやん、これ・・・」と思った記憶がある
そして今回の統計を見ると、EVのサービスコストはガソリン車に比較して(3年経過時で)38~68%くらいにとどまっていますが、これはぼくの持つイメージ、そして実際にEVを数年所有した経験とはそう大きな差はない(ぼく的にはガソリン車の60%くらい)という印象。
さらにここへ「税金」「ランニングコスト(ガソリンと電気との差額)」という要素を加味すると、EVのほうが圧倒的に維持が安いというのも間違いのないところ(走行距離をお金に換算し、ガソリン消費量に当てはめてみると、BMW i3はリッター76キロくらい走る計算だった)。
EV所有が割高だと言える理由は?
ただ、ぼくは「EVの維持において、すべてがガソリン車よりも安価にすむ」と考えているわけではなく、ひとつが「保険」。
EVは多くの場合バッテリーが密閉されているので修理や交換が難しく、よって事故を起こした際の修理費用がかなり高額となり、そのために保険会社はそのリスクを勘案して「料率を高く設定する」場合が常。
実際のところ、BMW i3はランボルギーニ・ウラカンと保険料率が同じという事実もあり、これは「(ガソリンエンジンを積む)軽自動車やコンパクトカー」に比較するとその所有者に負担となってのしかかる部分です。
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そして発火の確率はガソリン車の2倍だという統計もあり、さらに燃えだすとまず廃車となり、さらには周囲にまで被害を及ぼすため、保険会社としても「その分を見ておく必要がある」ことからも料率クラスを下げることは難しそう。
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加えてEV所有が割高だと考えるもう一つの要因が「値下がり」。
ぼくはこれまでにも多数のクルマを乗り継いでいますが、その中で最も値下がりしたのがBMW i3。
そして最近発表された統計でも「現行車で、もっとも価値を失うのは日産リーフ、2位はBMW i3」という「EVがワンツーフィニッシュ」を決めている状況がレポートされており、その下げ幅もガソリン車に比較して圧倒的に大きく、EVは「プレミアムカーであろうが、普及車であろうが」大きく価値を失うことが明らかになっています(例外はテスラ)。
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よって、いかに維持費が安くとも、買ってから売るときまでを考慮した「損失額」があまりに大きく、よほど距離を走る人でないとその損失額を正当化することはできない、とも考えているわけですね(ぼくの場合、12年くらい乗ればモトは取れる計算だったが、12年も乗ればEVのバッテリーはもう使い物にならないと思う)。
こういった事情をあわせて考えた場合、EVがお得なのかどうかは非常に微妙かもしれません。
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参照:Auto News