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1979年にアストンマーティンが「史上初の200マイル(322km)を達成する市販車」として計画したブルドッグ。レストア会社が復元し当時のエンジニアの夢を果たすために記録へ挑戦

2023/06/03

1979年にアストンマーティンが「史上初の200マイル(322km)を達成する市販車」として計画したブルドッグ。レストア会社が復元し当時のエンジニアの夢を果たすために記録へ挑戦

| 当時はアストンマーティンの新オーナーによってブルドッグ計画が凍結され、記録達成も市販も実現していない |

この「200マイル」は現在のアストンマーティンのラインアップでもけして低い数字ではない

さて、ぼくが大好きなアストンマーティン「ブルドッグ」。

このクルマは40年以上前の1979年、アストンマーティンが「2つの記録」を達成したのちに市販を計画していたスーパーカーですが、結果的には記録達成も市販化もなしえずにプロジェクトそのものが潰えてしまったクルマです。

ここでざっとおさらいしておくと、このブルドックには600馬力を発生する5.3リッターV8ツインターボが搭載され、当時どの市販車もなし得なかった「時速200マイル(322km)」を成し遂げること、そして市販車初の「200マイルマシン」となることを標榜してプロジェクトが立ち上げられることに。

ヴァルキリーが発表されるまでは「アストンマーティン唯一のミドシップカー」だった

このブルドッグにはいくつかの特徴がありますが、最大のものとしては「エンジンがリアミドシップにマウントされていること」。

現在アストンマーティンはヴァルキリーを発売し、その後にヴァルハラ、そしてもうひとつのミドシップスポーツカーを発売することになりますが、このブルドッグはヴァルキリーが発表されるまでは「唯一のミドシップレイアウトを持つアストンマーティン」だったわけですね。

さらにはこの特異なスタイルにも言及する必要があり、最高速を追求するために当時としてはかなり長い4,724ミリという全長、さらには前面投影面積を最小に抑えるべく1,092ミリに抑えられた全高を持っています。

Astonmartin-Bulldog (4)

そのほか、当時はこのノーズに埋め込んでも法規を満たせるような照射能力を持つヘッドライトが存在せず、よってヘッドライト使用時にはフロントフードが下に沈み、そこからヘッドライトが登場するという特殊な構造を採用したり、空力特性を最優先したため、ドア開閉を行う際はフロントフェンダー上にある(給油口のフタみたいな)カバーを開いてその中にあるスイッチを押す必要があったり、大きなガルウイングドアを電動で開閉するため、その駆動用システムがシートの後ろに内蔵され、これがやたら場所を取っていたりという特殊性も。

Astonmartin-Bulldog (3)

実際のところ、このブルドッグは当時のテストで307km/hを記録するなど「もうチョイ」のところまで行きますが、ビクター・ガントレットがアストンマーティンを買収し、その直後にコストがかかりすぎる(そして市販車が高くなりすぎて売れないだろう)という理由でこのプロジェクトの中止命令が出てしまいます。※そのため、史上初の200マイル市販車という栄誉はフェラーリF40に渡ることになる

英国の名門レストアファクトリーがブルドッグを本来の姿に

このアストンマーティン・ブルドッグはわずか1台のみしか製作されておらず、長らく行方知れずであったのですが、2020年になると英国の名門レストアファクトリー「クラシック・モーター・カーズ」がこのブルドッグを手に入れることになり、そこで「レストアを行い、かつての目標であった200マイルを、40年越しの夢として実現する」と発表。

ただしレストアしようにもアストンマーティンにすら資料がなく、一体オリジナルはどういった構造を持っていたのかということから調査を開始することになり、その際には広く一般に「情報求む」としてブルドッグを知る人に協力を求めています。

かくして(3年が経過して)ブルドッグのレストアが完了に近づき、ようやく時速200マイルに挑戦する日が近づいているというのが直近の状況ですが、クラシックモーターカーズのマネージングディレクターであるティム・グリフィン氏は「私たちは、40年以上前の車体を扱い、クルマの完全性を維持しながら時速200マイルを可能にすることを目的としてきました。どのようなレストアでも、このような試みは、そのクルマのオリジナリティを維持しつつ、本来の性能を発揮できるようにするためのバランスを取る行為です。今回のケースでは、ブルドッグの基本的なメカニズムやエンジンには手を加えず、オリジナルの仕様を強化し、サポートすることに努めました」。

Astonmartin-Bulldog (2)

つまりは200マイル達成のために現代の技術を盛り込むのではなく、あくまでも当時のままに復元し、当時のエンジニアたちの夢をかわりに果たそうということになりそうですが、つごう7,000時間に及ぶレストアと数百時間に及ぶテストを経て、ブルドッグはついに2023年6月6日、スコットランドの旧NATO軍基地であるマクリハニッシュ飛行場にてこのチャレンジを行うことになるのだそう。※おそらくはギネスやTUVなどの公的認証機関が立ち会うものと思われる

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参照:CARBUZZ

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