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| なぜ今「物理ボタン」なのか? |
特にスポーツカーにおいては直感的に操作できる物理ボタンが重要である
近年、テスラをはじめとする多くの自動車メーカーが車内の操作系を物理ボタンからタッチパネルへと置き換えていますが、これによって温度調整やオーディオ操作など、以前は手元のダイヤルやスイッチで行っていた操作が、今では大きなインフォテインメントスクリーンへと集約されつつあります。
しかし、ここにきてその潮流にブレーキがかかり始めており、特に運転中の直感的な操作が重視される、そして運転以外の操作に注意を奪われるべきではないスポーツカーにおいては、「やはり物理ボタンが必要だ」という声が日増しに強くなっているというのが「今日このごろ」。
アルピーヌA110次期型は「操作性重視」でタッチレス化に待った
すでにいくつかの自動車メーカーが「物理スイッチへの回帰」を発表していますが、今回それらに続くのはフランスのスポーツカーブランド「アルピーヌ」。
アルピーヌは次期A110において、ドライビング中でも直感的に操作できる「物理ボタン」の採用を優先する方針を明言しており、同社のデザイン責任者であるアントニー・ヴィラン氏は次のように語っています。
「運転に集中すべきスポーツカーでは、操作は本能的であるべき。ドライバーが“走り”に没入できるようにするため、あえて物理スイッチを残す判断をしました」
この方針は今後アルピーヌ全体のラインアップにも波及する見込みだといい、よってすでに発表済みの「A390」「A290」に採用されるインテリアは”短命”におわることとなるのかもしれません。
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フェラーリも「タッチ式ステアリング」から転換
同様の動きはフェラーリでも見られており、近年のフェラーリは、ステアリングホイール上にタッチセンサー式スイッチを搭載する方針を採っていたものの、多くのユーザーからの不満を受け、最新モデル「アマルフィ」では従来の物理ボタンに回帰するという決定を下しています。
しかもこの新ステアリングは、ローマなど既存モデルへの「レトロフィット(後付け)」にも対応するとアナウンスされ、これは明確に「使いにくい」という市場の声に応えた対応であり、フェラーリとしても異例の柔軟さを見せた格好となっているわけですね。
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ヒュンダイやフォルクスワーゲンも追随
さらには韓国のヒョンデも物理ボタン回帰の姿勢を打ち出していて、同社のグローバルデザイン責任者であるサンヤップ・リー氏は、以下のように語っています。
「物理スイッチのほうが、視線を奪わず安全。より直感的に操作できる」
ただしヒョンデ内でも意見は分かれており、欧州技術部門の一部は「将来はタッチ主導になる」との立場を貫いているものの、ユーザー志向の観点からはリー氏の見解が主流になりそうです。
同じくフォルクスワーゲンもまた、ID.シリーズやゴルフ8で導入したタッチ操作に対する批判を受け、物理ボタンやボリュームノブを復活させると発表し、実際にID.2allコンセプトでは従来のダイヤル類が確認されており、新型ティグアンなど量産モデルにも採用予定だと見られます。
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一方でマツダはこれらとは反対に「タッチ式に移行する」という方向性を明確にしており、この「スイッチに対する考え方」は今後自動車業界内において様々な議論を巻き起こすことになるのかもしれません。
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アナログ回帰の背景にある「ドライバー重視」の哲学
各メーカーが一斉に「ボタンやノブ」を再評価し始めた背景には、共通して「ドライバー体験の質向上」が背景にあるとされ、たとえば、運転中に目を離さずに温度や音量を調整できる物理スイッチは、現実的かつ安全な選択肢です(タッチ式だと複数のアクションが必要で、かつタッチすべき場所を探したりする必要があり、注意をここに奪われる時間が長い)。
実際のところ、ぼく自身も「エアコンの調整は物理ボタンがいい」「オーディオの音量調整はノブを回す方が便利」と感じており、今回の動きは個人的にも歓迎すべき方向です。
まとめ:「未来的」よりも「使いやすさ」
スマートフォン的なUIが車内に溢れかえったこの10年。
しかし、次第に「未来的」であることよりも「使いやすさ」「安全性」が重視されるようになっており、これは「新しい製品や技術が登場すると、こぞってメーカーがそれを取り入れ、差別化のために複雑化させるが、ある時点で消費者がそれについてこれなくなり、結局はシンプルな仕様へと戻る」というお決まりの傾向。
そして「シンプルな方向へと回帰する」先陣を切ったのはフェラーリ、ヒョンデ、VW、そしてアルピーヌといったことになりますが(面白いことに、ロールス・ロイスはそもそも最初からこの”タッチディスプレイ化”の競争に参加していない)、各自動車メーカーが物理ボタンへと再評価の流れを見せている今、他ブランドの動向も注目したいところですね。
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