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ブガッティが1931年にル・マンを走った「タイプ50S」オマージュ仕様を持つシロン・スーパースポーツを公開。タイプ50Sはフランス政府への抗議のため「真っ黒」に塗られていた

ブガッティが1931年にル・マンを走った「タイプ50S」オマージュ仕様を持つシロン・スーパースポーツを公開。タイプ50Sはフランス政府への抗議のため「真っ黒」に塗られていた
Bugatti

| 当時のレーシングカーには、いずれも忘れ得ぬストーリーが存在する |

そういった「歴史の発掘」もブガッティのデザイナーの仕事の一つである

さて、ブガッティが「1931年のル・マン24時間レースに出場した」ブガッティ・タイプ50Sへのオマージュデザインを持つシロン・スーパースポーツを公開。

これは同社のパーソナリゼーションプログラム、シュール・ムジュールによって仕上げられたもので、随所にタイプ50Sへの敬意が散りばめられています。

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ブガッティ・タイプ50Sはこんなレーシングカー

そこでまずブガッティ・タイプ50Sについて触れておくと、これはタイプ46の後継モデルというポジションを持っており、「(それまでの軽量で俊敏性を重視した方向性とは異なって)ハイパワー路線」を追求したレーシングカー。

搭載されるのはスーパーチャージャーつき5リッターV8で、ブガッティ初のデュアル オーバーヘッド カムシャフトを備えます(出力は250馬力)。

ブガッティ創業者の息子、ジャン・ブガッティはこのタイプ50Sを「シャシー違い」で3台用意して1931年のル・マン24時間レースへと挑み、そしてユニークだったのはブガッティらしいフレンチブルーでも、エットーレ・ブガッティが好んだイエローでもなく「ブラック」であったこと。

ブガッティ創業者は「ブルー」ではなく「イエローとブラック」のクルマに好んで乗っていた!イエローはブルーの次にブガッティにとって重要な色だった
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これはブガッティのレーシングカーとしては極めて珍しい例ではありますが、競技に参加するブガッティへのスポンサーシップを拒否したフランス政府への”抗議”の意味を持っていたと言われます。

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これら3台はル・マン24時間レースにおいて高い競争力を発揮し、とくにストレートでは驚異的なスピードを発揮するものの、そのうち1台がタイヤトラブル、残り2台は同様のトラブルを避けるため、意図的にリタイヤを選ぶこととなったそうですが、そのうちの1台であるカーナンバー「5(シャシーナンバー50177)」が今回のシロン・スーパースポーツのモチーフとなっているわけですね。

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なお、今回このタイプ57Sがモチーフに選ばれたのは、ブガッティのシュール・ムジュールのデザイナー、ヤッシャ・ストラウブ氏の顧客に対する提案からであったといい、顧客が「黒いシロン・スーパースポーツが欲しい」と話をしたところに、同氏が「それならば」とこのタイプ50Sの話を持ち出したのだそう。

その顧客がタイプ50Sのストーリーを知っていたかどうかは定かではありませんが、それでもブガッティのデザイナーは「そのストーリーを、顧客に熱く語れる」だけの知識そして情熱を持っていなければならず、ブガッティのスタッフは非常に高い探究心、なによりブガッティに対する愛情と情熱を持ち合わせていなければ務まらない、ということもわかる一幕だと思います。

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このブガッティ・シロン・スーパースポーツはこんな仕様を持っている

そこでこのシロン・スーパースポーツを見てみると、カーナンバー「5」がフロントのホースシューグリル、そしてボディサイドに反映されており、さらにフロントグリルに用いられるメッシュは通常の「ひし形」ではなく、当時のタイプ50S同様の「正方形メッシュ」。

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リアウイング裏面にはル・マン24時間レースの舞台となるサルト・サーキットのシルエット、「Le Mans 1931」の文字。

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そして興味深いのは、タイプ50Sのファイヤーウォールに施された「ペルレ」と呼ばれる金属表面加工に着目し・・・。

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シロン・スーパースポーツのエンジンカバーにも同様の加工を施したこと。

このあたりもデザイナーの情熱と愛情なくしては実現できなかったディティールなのかもしれません。

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なお、このペルレの再現についてはとんでもない苦労があったようで、ブガッティいわく「それぞれの円形パターンは正確に同じく重なり合う必要があり、デザインのあらゆる側面が完全に比例し、極度の暑さや日常の使用環境に耐えるだけではなく、数十年、数世代にわたって耐えられるように再現されている必要がある」。

一見すると「さりげなく」見えるほかのディティールと同様、実際には完璧な仕上がりを保証するための複雑なプロセスを経て再現されたものだと説明されており、さらにブガッティはこのペルレをセンターコンソールや・・・。

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ニーレストにも再現し、「1931」の文字を加えています。

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そしてドア内張りには「ル・マン24時間を再現した」グラフィックが手作業にて再現されて、運転席と助手席のヘッドレストには「Le Mans 1931」が手縫いによって施されることに。

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この素晴らしいブガッティ・シロンについて、ヤッシャ・ストラウブ氏は以下のようにコメントしています。

タイプ50Sの系譜は、1930年代初頭にエットーレとジャンのブガッティ親子による、強力で大排気量というブガッティに対する先駆的なビジョンを確立するのに役立ちました。タイプ50S、特にシャーシナンバー50177は、私たちの歴史の中核部分です。 このレーシングレジェンドに敬意を表したいという熱意を持ったお客様がいることは、本当に光栄なことです。 彼と私は、何ヶ月にもわたって、本物のオマージュを作成する方法について何時間も話し合い、タイプ50Sのストーリーと一致していることを確認しながら、ブガッティ ブランドの比類のない基準を満たすことを確認するため、あらゆる細部にこだわりました。

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一方、ブガッティのマネージング・ディレクター、ヘンドリック・マリノフスキー氏は以下のように述べています。

アトランティック、ロイヤル、タイプ35ほどの評判はないかもしれませんが、タイプ50Sの重要性を認識してくださったお客様とこの車に対する興奮を共有することができたのは幸運なことです。ヤッシャ・ストラウブ率いるシュール・ムジュール・チームは再び、顧客の情熱に加え、専門家の洞察力など職人のスキルを駆使し、非常に個人的な共創プロジェクトを実現しました。 それは単なる現代のデザインへのオマージュではなく、ほぼ1世紀前に始まった物語の継続でに他なりません。

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ブガッティ・シロン・スーパースポーツ「タイプ50オマージュ」を紹介する動画はこちら

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参照:Bugatti

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