| ただし実際にイメージしたのは戦車ではなく「航空機の翼の断面」 |
ブガッティに「タンク」と呼ばれるクルマがあることは知っていたが、まさかこれほどまでに「タンク」だったとは
ブガッティが1923年に製造されたタイプ32「タンク」の画像、そしてそれにまつわるストーリーを公開。
もともと単なる「タイプ32」として製造されたものの、その得意なルックスから「タンク(戦車)」なるニックネームを頂戴し、現代ではそれが(フェラーリ”デイトナ”のように)通称名としてよく知られるようになってしまった例ですが、当時のブガッティとしては戦車を意識したわけではなく、むしろイメージしたのは「航空機の翼」。
たしかに横から見ると文字通りの「翼断面」を持っており、これは当時(ブガッティの創業者である)エットーレ・ブガッティが「レーシングカーの性能を向上させるためには、高度なエアロダイナミクスがますます重要な役割を果たす」という信念を持っていたためだと言われます。
これほどエットーレ・ブガッティの鬼才ぶりを示すクルマは他にない
ブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティは「他と比べられるようなクルマであれば、それはブガッティとは呼べない」というモットーを持っており、常に時代に先んじるクルマを作ってきたことで知られますが、このタイプ32タンクほどそれを顕著に表した例はないと思われ、この大きなタイヤ、短いホイールベース、狭いトレッド、そして何より文字通り「飛行機の翼を輪切りにした」かのようなルックスは当時のモータースポーツ界に大きな波紋を投げかけたと言われます。
ただ、その外観ばかりに目を奪われていてはこのタイプ32タンクの本質を見としかねず、実際のところ、メカニズム的にも非常に先進的な内容を持っていたといい、数々の革新的なエンジニアリング・ソリューション、技術にこそ、このタイプ32タンクの真髄があるもよう。
たとえばアンダースラング・シャシーや(当時画期的であった)フロント油圧ブレーキが採用され、3速リバース・トランスアクスル・トランスミッションといった機械的な特徴を持ち、搭載されるエンジンは2リッター8気筒(90馬力)。
当時はプロトタイプ1台とトゥール・グランプリに参加した4台の合計5台のタイプ32”タンク”が製造され、レースにおいては22.83kmというトゥール・サーキット(公道)を35周し、総走行距離800km弱を走ったという記録が残ります。
この4台のうち、最も活躍したのはフランス人ドライバーのアーネスト・フリデリッチが駆る車体で、平均時速112km/h強、7時間22.4秒で完走し、3位入賞を果たすことに。
残念ながらブガッティ・タイプ32「タンク」がレースを走ったのは一度のみ
なお、3位という輝かしい戦績を残しつつもタイプ32タンクがグランプリを走ったのはトゥールの一度のみ。
というのもブガッティは早々にタイプ35の開発を行い、こちらではアルミホイールなどさらなる新しいアイデアを取り込んで1926年のグランプリ世界選手権で優勝するなど、さらなる成果をあげたためだとされています。
ただ、モータースポーツにおけるキャリアは短かったものの、タイプ32タンクはブガッティへと貴重な経験をもたらし、学んだ教訓の多くが別のモデルに生きることとなっていて、特に、空力効率が極めて重要で決定的な役割を果たすというエットーレ・ブガッティの信念は、もう一台の「タンク」と呼ばれた57Gへと引き継がれされ、こちらは1936年のフランスGPで優勝を果たしたほか、1937年のル・マン24時間レースでも勝利を収め、エットーレ・ブガッティのビジョンが正しかったことを証明することに。
このタイプ32タンクは多くのモータースポーツファンにとって一目でそれとわかる、ブガッティを象徴する革新的なモデルでもあり、実車はフランスのミュルーズにある国立自動車博物館に保管され、今でもその姿を見ることができる、とのこと。
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参照:Bugatti